Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

日豪友好協力基本条約署名40周年を祝して ターンブル首相講演

TK13

2016年11月2日

 

ターンブル首相は10月14日、キャンベラで開催された日豪友好協力基本条約署名40周年式典で講演し、この条約以降、日豪関係がいかに両国に繁栄と安定をもたらしたのかを強調しました。

国会議事堂グレートホール

キャンベラ

マレー・マクレーン前駐日大使、草賀純男駐豪特命全権大使、ご祝辞と大変温かなご歓迎、ご祝辞における言葉遣いに感謝申し上げます。両大使は非常に豊かで深い日豪関係の全容について、また、長年にわたってこの関係を推進してきた日豪交流基金の役割についてお話下さいました。

日豪関係は完全に超党派の支持を得ており、今夜はこの場に野党代表代理として、キャンベラを選挙区とするゲイ・ブロドゥトマン連邦議員がいらしています。この記念すべき機会にあたって、この場に立ち会えることを嬉しく思います。

本日は多くの名高い方々や、日豪の財界を代表する皆様がお集まり下さっています。長年にわたり著名な投資家、ビジネスマンとしてご活躍されてきたジョン・ガンデル氏や、同じような経歴をお持ちの日本の皆様などです。つまりは、多くの皆様がこの強固な関係の構築に力を入れてこられたわけです。先程のお話にもありましたが、この関係は、こうした歳月の間に築かれた人的交流の下に成り立っています。

まず始めに、40年という歴史を若干振り返ってみたいと思います。

日豪友好協力基本条約は当初から、時代の先を行く存在でした。オーストラリアが他国と署名を行った最初の友好条約であり、特別な政治的先見の明を示すものでした。本条約をめぐり、両国の間で、また両国内の選挙区において、長きにわたる交渉が行われました。

1976年6月、当時のマルコム・フレイザー首相が、三木武夫首相との間で条約署名を行うために日本を訪れたことは、お互いへの信頼を示す優れた行為でした。これはまた、戦後における、重要な日豪貿易関係の台頭を示すものでもありました。オーストラリアは日本が必要とする原材料の40−50パーセントを提供する一方、重工業が発達した日本は、オーストラリアにとって重要な製造品の供給国になりました。比類のない、エキサイティングな時代だったのです。

私たちがこの40年間謳歌している、また本日お越しの皆さんが築いてきた、この豊かで持続的な関係なしには、両国は今日の姿になっていなかったといっても言い過ぎではありません。

日本はこの数十年間、オーストラリアにとり最大輸出市場のひとつになっています。ピルバラ地方の鉄鉱石、クイーンズランド州の石炭は、日本の近代化や工業化を支えました。その代わり、オーストラリアが購入した日本製の自動車やコンピューター、消費財は、オーストラリア国民の所得上昇と繁栄の増進を示す象徴でした。人的、文化的交流における日本との強いつながりが弱まる気配は全くありません。

日本語はオーストラリアの学校や大学で、引き続き最も学ばれている言語となっています。こうした現象は、650以上に及ぶ姉妹校提携により、さらに強化されています。

世界経済の重心が私たちの地域へと引き続き移行する中、日本とのつながりはより強くなる一方です。

こうした誇るべき両国共有の歴史があるとはいえ、過去40年の出来事を祝福するにあたっては、この関係を新鮮な目で捉え直す必要があります。私たちのビジョンは、歴史的な貿易関係に拘束されるべきではありません。機会というのは、運命として存在するのではありません。何もせずにいて、与えられるものではありません。

私たちが生きるこの素晴らしい時代を上手く活用するために、日本とオーストラリアは出来る限りのことをする必要があるのは、繰り返し強調して良い点です。この時代における、経済や技術面での変化の速度や規模は、その多くが日本の技術やイノベーションがもたらしたものです。

こうした変化の速度と規模は、これまでの人類の歴史に全く前例がありません。オーストラリア国民や日本の皆様、そして人類の歴史にとって、最もエキサイティングな時代であり、課題は多いにせよ、大きな機会に満ちています。

ちょうど先月東アジア首脳会議の際、ラオスのビエンチャンで安倍首相とお会いしました。そして、特別の戦略的パートナーシップを再確認すると共に、地域の平和と安定確保におけるその重要性を強調しました。

両国は法の支配や国際秩序の継続的維持に、深くコミットしています。国際秩序による安定は、私たちの地域がこの40年間謳歌してきた繁栄の土台を成してきました。

この40年における著しい発展により、何十億という人々が貧困から脱却しましたが、こうした進展は安定の維持や相対的な平和、相対的な調和、法の支配なしには実現しなかったでしょう。

私たちもこのため、これらの要素にコミットしており、地域における法の支配やこうした国際秩序の維持を、可能な限り最大限推進するパートナーであり続けます。

日本とのつながりがこれまで繁栄をもたらしたのと同様、これからも有望であると思える理由のひとつに日豪経済連携協定(EPA)があります。

日豪EPAは日本がこれまで署名した中で、最も自由化が進んだ二国間貿易協定です。この協定は、今お話した法の支配や、私たちの地域や世界においてこの並外れた経済成長の推進役となった、自由貿易の強化にコミットしています。

現在は、保護主義を求めるポピュリスト的な論調が存在しています。貿易を阻害し、私たちの周りで進む技術的変化を邪魔するために、経済的な障壁や実際の壁を急いで作ろうとする動きがあります。

安倍首相と私、及びおそらく両国の国民は、私たちはさらなる自由化、さらなる貿易から特別の利益を得られることを理解しています。同時に、保護主義という誘惑の言葉はより良い成果をもたらすどころか、私たちを再び貧困に導くことを理解しています。私たちはこの点を承知しており、以前実際に目撃しているため、二度と同じ経験をしたくないと考えています。

安倍首相と私はこのような理由から、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉継続に注力している点を強調してきました。

TPPに関して、安倍首相と私はワシントンにいる友人に、米国連邦議会がTPPを批准するよう、出来る限りの要請を行ってきました。米国が、いや実際には米国大統領、及び連邦議会議員が、最も明確な形で地域への継続的コミットメントを示す行いこそ、TPPの批准です。

安倍首相が二年前、オーストラリア連邦議会でこれらの合意について言及した際、首相はわが国と日本に対し、上を向き、大きな楽観主義と共に将来を見据えるよう呼びかけました。首相は思いやりと両国間の信頼について話され、“オーストラリアと日本は、どこまでも共に歩んで行こうではありませんか”と語りかけました。

両国はこれまで長い間、共に歩んできました。そして私も、ここにおられる多くの皆様も、最良の日々が私たちの前に横たわっていることを確信しています。

日豪友好協力基本条約を通じて、より深い友情への道を切り開いた、かつての指導者の方々の先見の明と賢明さに敬意を表します。

皆様と同様、両国が共に進む道がもたらす、エキサイティングな新しい方向性に出会うこと、これを構築していくことを楽しみにしています。

皆様、今宵は楽しいひと時をお過ごし下さい。また後程、偉大なピアニストである辻井伸行氏の素晴らしい演奏をお楽しみ下さい。

有難うございました。本日の機会をお祝い申し上げます。