Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

ブルース・ミラー駐日オーストラリア大使 開成中等教育学校講演「発展する日本・北海道とオーストラリアの関係」

7 March 2016

 

1.  挨拶

みなさん、こんにちは。そして、先生、ご紹介いただき、ありがとうございます。

オーストラリア大使のブルース・ミラーです。

今日は皆さんの前で、私の生まれ育った国、オーストラリアの話をさせてもらいます。

日本とオーストラリアの関係はとても良好で、互いに多くの人々が旅行や留学、働きに来ています。北海道とも独自の関係を築いていますが、それはまた後ほど説明したいと思います。今日はまず、これまでの私について、お話しします。そして大使館や領事館の役割を紹介した後で、オーストラリアについて皆さんに知って欲しい5つの話をします。

最後にオーストラリアと日本そして北海道との関係についてお話しします。

 

2. 初来日から現在まで

はじめに私のこれまでの経緯を簡単にご説明したいと思います。

私が日本と関わり始めて、もう40年近く経ちます。その内、日本には合計で14年間以上、滞在しています。

日本に関心を持つようになったのは、11歳の頃、父から、「もし外国語を学びたいなら、アジアの言葉を選びなさい」と言われたことがきっかけでした。

それから少しずつ日本についての勉強を進めていきました。

高校生のとき、初めて日本を訪れました。

日本は、人や文化、環境を含めて、とても魅力的でした。

オーストラリアに戻り、高校を卒業して、シドニー大学に行きました。

そこでは、法律も勉強しながら、日本語と日本文学、そして日本史を学びました。

そして1982年から一年間、兵庫県にある関西学院大学で学びました。

そのとき、とても好きになった文学作家がいて、それは「坊ちゃん」や「我輩は猫である」を書いた夏目漱石と、「舞姫」を書いた森鴎外でした。

お気に入りの文学作品に囲まれて、幸せな毎日でした。

一転して、大学卒業後に目指した道は、外交でした。

幸いにも外務貿易省では、日本留学の経験を生かすことができて、これまで日本には3回の赴任する機会を頂きました。

このたびの日本勤務では、駐日オーストラリア大使という立場にありますが、次のテーマとして、この大使という役割、そして大使館と総領事館についてお話しします。

 

3. 大使、大使館・総領事館の役割

大使、正式には特命全権大使という役職は、国を代表する、重要で責任の重い立場です。

日本にある大使館と全総領事館を含めて、日本にあるオーストラリアの政府機関全体を代表しています。

大使館、そして札幌にある領事館というのは、オーストラリア政府を代表する機関です。

外務貿易省は、世界各国に大使館という在外公館、つまり海外に役所を置いています。

その大使館は、相手国の首都に置かれ、日本であれば、日本政府と外交を行います。その中で大使館員の活動分野は、非常に幅広いです。

相手国政府と行うべき全ての政策について話し合いをします。

また、在日大使館であれば、日本での出来事をオーストラリア本国に報告したり、オーストラリアから訪問した首相などに同行してサポートします。

そして、非常事態のときはもちろん、通常の時も日本にいるオーストラリア人に対する保護や援助を行います。

さらには日本とオーストラリアの会社をつなぐ仕事や、文化などを伝える広報文化活動も行っています。

また、日本には日豪協会という民間の交流組織もあります。

現在、大使館には36名以上の外交官と、日本で採用した職員が90名以上働いています。

日本のように関係の深い国には、大使館の他に特に重要な地域に総領事館、または領事館という事務所が置かれています。

大阪と福岡に総領事館、そして札幌に領事館があります。

大使館と総領事館は緊密に連絡を取り合っています。

大使館と同じく、総領事館は、その地域にある県庁や市役所、会社に学校、人々と関係を持っているほ

  かに、その地域にいるオーストラリア国民の保護に努めています。

北海道には領事館がありますが、理由はたくさんあります。

最近の大きな流れをあげると、大幅に増えたオーストラリア人観光客の保護と、地元交流を支援すること、そして、北海道でのビジネスチャンスの獲得です。

詳しくは後ほどお話したいと思います。

大使の仕事についてお話すると、東京で政府国会議員や企業幹部と関係を作ることが1つ挙げられます。

また、日本全国に散らばるオーストラリア人の生活状況なども、こうした総領事館を通じて、把握するようにしています。

また、日本政府が主催する大きなイベントには、政府代表として出席をしたり、挨拶をしたりします。

たとえば、東日本大震災関連行事や、年頭において、天皇陛下が新年のご挨拶をされますが、私も他の国の大使とともに皇居へ向かい、オーストラリア国民を代表して、謹んで新年の慶びを申し上げます。

 

4. オーストラリアの基本情報 

さて、オーストラリアの話に戻りましょう。

オーストラリアの国の正式名称は、オーストラリア連邦です。

日本は島国ですが、オーストラリアは大陸本土と様々な島から構成されています。

面積は日本の20倍もありますが、人口は5分の1です。

日本は1億2,000万人ですが、オーストラリアの人口先日やっと2,400万人に達しました。

首都はキャンベラです。

日本では都道府県で分かれていますが、オーストラリアは州で分かれています。

全部で6つの州および準州と、特別地域などから成り立っています。

大きな都市は、キャンベラの他に、シドニー、メルボルン、ブリスベン、アデレード、パースなどがあります。

 

また、オーストラリアの地形はとても多様です。

中央部は砂漠の場所が多く、南西や南東地域は森林が豊かです。

北東地域には熱帯雨林があります。

また、オーストラリアはビーチ大国としても有名で、一万以上あります。

一方、キャンベラとメルボルンの間はスキーを楽しむことができる雪の地域です。

 

さて、オーストラリアの動物として、カンガルーやコアラが有名です。

カンガルーは6,000万頭もいます。

羊も多く、その数は7,550万頭です。

国章という国を象徴する紋章にも動物が描かれています。

カンガルーと、ダチョウに似たエミューという鳥です。

どちらも後ろには歩けず、前にしか歩けない動物です。

そのため、「前に進む」国を表す象徴として、国章の中に組み込まれました。

 

オーストラリアは、とても住みやすい国です。

国連が発表している国民生活の豊かさランキング、「人間開発指数」では、オーストラリアはノルウェーに次いで、世界で二番目に豊かだと評価されました。

他に『エコノミスト』というイギリスの経済誌では、メルボルンが、5年連続世界で最も住みやすい都市と評価を受けました。

世界トップ10の都市の中には、一位のメルボルンに加えて、アデレードやシドニー、パースも入っています。

こんなオーストラリアですが、特に、今回皆さんにご紹介したい5つをお話しします。

 

5. 今、オーストラリアの注目すべき5つの理由

スポーツ

一つ目はスポーツです。

オーストラリアではスポーツが大変盛んです。

特に人気のあるスポーツは、ラグビーやサッカー、そしてネットボールという球技です。

ネットボールというスポーツは、バスケットボールに似ていますが、ドリブルはできません。

パスでボールをまわし、シュートするスポーツです。

ラグビーも人気があります。昨年のワールドカップでは日本でも大いに盛り上がりましたね。

おかげさまで、そのワールドカップでは、決勝まで進むことができました。

残念ながらニュージーランドに負けてしまいましたが、過去2回の優勝経験があるほど強いチームなのが自慢です。

ワールドカップでは五郎丸さんが大活躍されましたが、彼は今、「スーパーラグビー」というラグビー

の国際リーグ戦に挑(いど)む、「レッズ」というオーストラリア・チームで頑張っています。

オーストラリアには他にも、野球の原型と言われているクリケットや、テニス、ゴルフや水泳、フィールドホッケーなども人気があります。

こうして見ると、昨年オーストラリアはスポーツに沸(わ)いた年でした。

1月に開催したサッカーのAFCカップには本田圭佑選手などの日本チームが出場し、全豪オープンテニスでは、錦織 圭さんも大変活躍しました。

また、クリケットやネットボールといったスポーツのワールドカップも行われました。

他にもヨットレースやF1グランプリも行われました。

このように、オーストラリアはスポーツ大国です。

 

経済

スポーツのほかに、オーストラリアの誇るべきものの1つに、強い経済があります。

この7、8年、世界の経済は数々の大きな出来事に振り回されました。

リーマンショックと呼ばれる金融業界の大事件や、ヨーロッパの金融不安などで、仕事の見つからない人々が増えました。

しかし、オーストラリアは長い間の経済改革と優秀な労働力のおかげで、どれほど厳しい状況でも成長し続けられるようになりました。

たとえば、外国から優秀な人材を積極的に受け入れることで、安定した経済成長を目指しました。

また、開放的な貿易を追求することで、オーストラリアは強い競争力を保ってきました。

その成果もあって、24年間の経済成長が続いています。

また、経済危機に耐えられる「打たれ強い」国として、5年連続でトップ5に入っています。

最近では、世界ランキングで、世界の中でも最も革新性に富んだ国だと評価を受けました。

国際的にも評価されているオーストラリアは、先進国の中でも順調に、そして安定して経済が成長しています。

 

多様性

経済にも関連していますが、3つ目のポイントは、オーストラリアの国際性豊かな環境です。

オーストラリアには、様々な国から人々が移住してきています。

今では国民の内、4人に1人は他の国で生まれた人々です。

つまり、外国で生まれて、その後オーストラリア国籍を取った人々が非常に多くいます。

イギリスやニュージーランド、インドの英語圏に加えて、中国やイタリア、ベトナムからたくさんの人々が移住してきています。

また、オーストラリアの歴史は、6万年以上前から暮らしているアボリジニなどの先住民から始まります。

そこに、イギリスや西ヨーロッパから移民が入り、現在はアジア、東ヨーロッパ、そして中東などから人々が集まっています。

我が国の国民は全世界の人々から成り立っています。

それでも「オーストラリア人」という、共通のアイデンティティを持ち、平和に暮らしています。

平和に暮らす背景には、共通の価値観を意識的に持っていることが挙げられます。

みなさんは、日ごろあまり意識していないかもしれませんが、オーストラリアでは、民主主義や自由、法による支配、人権、平和的共存といった価値観を、とても大切にしています。

それは、自由や人権を尊重しながら、みんなで話し合って決めた法律を守り、平和に暮らしていく、という意識です。

そして、オーストラリアでは、様々な人々の間で互いを尊重する社会を作るために、その手助けとなる制度を整えています。

例えば、シドニーのあるNew South Wales州では、’NSW Multicultural’という公的機関があり、100言語以上の翻訳サービスを提供していたり、多様性の観点から州政府に政策提言をしたりしています。

また、様々なコミュニティの代表者を集めて、異文化間で対話を促すことも行っています。

教育の面でも、移民の社会参加を支援する、

マイノリティのソーシャル・インクルージョンというプログラムで、実際に仕事の技術能力向上を手伝う教育機関が充実しています。

このように、オーストラリアには、様々な国の人々が話し合いを続けながらお互いに理解し、オーストラリアという国を一緒に創り上げています。

 

教育制度

オーストラリアの4つ目のポイントは、質の高い教育制度です。

特に大学のレベルは高く、政府が教育の質を厳格に管理しています。

そのため、大学の間で学生の質が極端に異なることはありません。

また、今では190カ国から約52万人の学生が留学しています。

世界的にみて留学生の割合は最も高く、大学生の4人に1人が留学生という、世界一 国際的な環境です。

特にアジアや太平洋地域の国々から優秀な留学生が集まっています。

そして、全留学生の内、約90%近くがオーストラリアの教育に満足したと答えています。

 それも5年連続で同様の結果です。

オーストラリアに来た留学生は、オーストラリア人の学生とも仲良くなりますが、アジアからの優秀な学生は、学生同士のネットワーク作りに特に重要な役割を持っています。

なぜなら、学生時代に育まれた友人関係が、将来、仕事の上でも、国際的なネットワークを形成するからです。

つまりオーストラリアに留学するということは、英語やその他の発展した学問について学びを深めるだけではなく、将来的に、仕事にも役に立つネットワークを作ることができるのです。

 

親日国

皆さんに知っていただきたい最後のことは、オーストラリアが親日的という点です。

移民の国なので、世界中の外国語が日常よく使われますが、外国語教育の中で、最も人気のある言語は、日本語です。

学生は日本に興味を持って日本語を選択して、勉強しているのです。

ですから当然、日本を訪問するオーストラリア人も増えています。

親日家であるとともに、日本の友人をたくさん持ち、日本の滞在期間が長くなるにつれ、知日家にもなります。

彼らの中には、周りのオーストラリア人に、もっと日本を知ってもらいたいと行動を起こし、住んでいる町を、日本の町と姉妹都市にした人々も多くいます。

現在では、その姉妹都市の数は100以上にもなります。

中には、50年以上も続く姉妹都市もあります。

こうした草の根の交流をもとに、オーストラリアと日本はとても良い関係を築いてきました。

さきほど、オーストラリアは住みやすい国として評価されていること、そして経済が成長し続けていることをお伝えしました。

そこには様々な理由があります。

しかし、日本とオーストラリアの関係、日豪関係が強く影響していることをお伝えしたいと思います。

 

6. 日本と仲の深い関係

オーストラリアと日本は第二次世界大戦後、1951年に国交が正常化しました。

1957年には日豪通商協定という約束が交わされ、お互いに貿易が活発になりました。

この協定によって、オーストラリアからは、石炭、天然ガス、鉄鉱石、日本からは工業製品の輸出がされて、両国は日本の高度成長とともに発展していきました。

その結果、40年以上にわたって、日本はオーストラリアにとって最大の輸出市場となりました。

そして今年始めには、貿易を益々促進させる日豪経済連携協定、日豪EPAという大きな取り決めが始まりました。

現在もオーストラリアは最大のエネルギー供給国として、日本のインフラを支えています。

さらに、日本の農産物の輸入先としても、オーストラリアは第4位です。

みなさんもご存知の「オージービーフ」である牛肉、大麦、ナチュラル・チーズについては、オーストラリアが一番の供給国となっています。

現在、日本はオーストラリアにとって、世界第2の貿易相手国です。

そして、資源から農業、製造業、サービス業に至るまで、ほぼ全ての分野でビジネスが結ばれています。

日本とオーストラリアの首脳外交も大変さかんです。

昨年末のターンブル首相が来日した時も、安倍首相から温かく迎えられました。

 

日本とオーストラリアの友好関係はアジア地域を中心として、世界の平和と安定にも貢献しています。

3年前に起きたフィリピンでの台風災害のときは、自衛隊とオーストラリア軍が協力して支援を行いました。

また、アジア太平洋地域などで貿易や投資を促進したり、紛争を解決したりするためのグループや話し合いの場を一緒に作っています。

 

7. 人気のある北海道

北海道ブランドは日本やアジアの人々に大変な人気ですが、オーストラリア人にとっても、一度は行ってみたい場所です。

訪問者数はこの12年で10倍となり、今では35,000人以上のオーストラリア人が北海道の魅力に接しています。

ご存知の通り、オーストラリアは南半球にあって、季節が逆です。

真夏の12月から2月にかけて、オーストラリアのスキーヤーやスノーボーダー達は、比較的近い北半球に北米や日本を目指します。

その中でもニセコの人気は長年の多くの人々の努力によって作られてきました。

北海道で仕事に携わる人たちも多くいます。

最近、オーストラリア人の建築デザイナーがニセコのホテルを手がけ、それは世界一のスキー・ブティックホテルに選ばれました。

英語の先生として働く人たちもいます。

日本の学校で英語を教えるJETというプログラムがあります。

このプログラムの派遣先として、北海道は最も派遣されるオーストラリア人の数が多い場所です。

北海道は、確実にオーストラリア人の心をつかんでいます。

経済上の結びつきでも非常に重要です。

例えば、オーストラリアから日本に輸出されるラム肉の内、70%は北海道で消費されています。

一方で、北海道の食材がオーストラリアでは人気です。

例えば、ホタテはオーストラリアでも大人気で、最高級レストランでも北海道産のホタテが調理されています。

 

8. 最後に

いろいろとご紹介をしてきましたが、オーストラリアはスポーツ大国であり、経済も順調に成長しています。

そして、様々な文化が溶け込んだ移民の国です。

多種多様な人々に施す教育も、しっかりしています。

加えて、日本語が人気のように、オーストラリアは親日家が多い国です。

その背景には、日本と手を取り合いながら発展してきた歴史がありました。

そして、一緒にアジアなど世界にも貢献してきました。

これから日本とオーストラリアは益々関係を深くしていきます。

貿易も増え、経済交流も盛んになります。

そうした流れの中、安全で質の高い教育を受けられるオーストラリアへ、留学や語学研修など、検討していただけると、将来の役になることと強く思います。

まずは皆さんの関心が、海外に向かってくれることを願っています。

長い間、ご清聴をありがとうございました。