Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

リチャード・コート大使 オーストラリアと日本: 現代的パートナーの始まり

リチャード・コート大使

 

2017年07月06日

 

最近のローウィー国際政策研究所による調査が明らかにした結果のひとつに、86パーセントのオーストラリア国民が、日本を世界で責任を持って行動する国として信頼すると答えている事実があります。この信頼の度合いはドイツと並んでおり、最も高かった英国(90パーセント)に次ぐ数字です。

歴史的な日豪通商協定の署名から60周年にあたる今日、立ち止まって振り返ると、この結果は実に意義深いものといえます。

本協定は終戦からわずか12年後、メンジス元首相により署名されました。当時は賛否を巻き起こしましたが、今の日豪関係への信頼度やその活力を見ると、それゆえにいっそう優れた内容であったことが理解できます。

実際、両国が今日のような強い信頼関係を育み、お互いの経済を発展させる上で、本協定が果たした役割はいくら強調しても足りないぐらいでしょう。

日豪通商協定は、先見の明を持つ両国の男女に対し、戦後の最中に新しい機会を見出す道を提供しました。本協定の後、オーストラリア産鉄鉱石の輸出は解禁され、ピルバラ鉱山で採掘された資源が、日本の製鉄会社に供給される契機を生み出しました。これにより、オーストラリアは日本にとって、信頼できる主要な鉱物資源・エネルギーの供給先となったのです。

一方、オーストラリアにとっても、本協定は真の変化をもたらすものでした。オーストラリアが輸出した資源のいくつかは、自動車や電化製品といった消費財となり、初めて国民に手の届く値段で逆輸入されるようになったためです。

しかし、安い商品や新産業にとどまらず、本協定はオーストラリア経済の歴史にとって転換点となるものでした。日豪通商協定はオーストラリアがアジアで最初に結んだ貿易協定であり、伝統的な輸出産業に対し、競争やエネルギーを吹き込む結果となりました。

また本協定は同時に、オーストラリアに日本からの投資の波が押し寄せるきっかけを作りました。日本は現在、世界第2位の対豪投資国(直接投資累計額ベース)となっており、現代的な貿易・投資関係は、2014年に締結された日豪経済連携協定(EPA)によって支えられています。

こうした貿易・投資分野における交流の歴史は、政治や国民間の交流、あるいは戦略的な防衛分野における信頼関係に、良い形で波及しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スティーブン・チョーボー貿易・観光・投資大臣、日本最大手の旅行会社JTBのスタッフと共に(2017年) 提供:外務貿易省

 

今年はまた、安全保障協力に関する日豪共同宣言の署名から十周年にあたります。2018年には、オーストラリア空軍が初めて航空自衛隊と共に、日本の上空で活動する機会があるよう願っています。

このように、日豪関係は絶えず前向きの軌道を描くように進んでいますが、それゆえに、お互いが現在の関係に安住してしまう危険性をはらんでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

豪日交流基金の支援によるホームステイを通じ、ゴールドコーストでのライフセービング活動に参加した東日本大震災被災地・南三陸町の生徒たち(2012年) 提供:豪日交流基金

 

メンジス元首相は、かつてこのように語りました。「人生の良い要素は、確かな憎しみによってより、無関心によって失われることの方が多い。」

私たちはしたがって、ただ環境の変化に適応していくだけでなく、60年前のように新しい機会を積極的に見出していく責任があります。

 

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