Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

ブルース・ミラー駐日オーストラリア大使 エネルギー総合推進委員会での講演「オーストラリアの資源・エネルギー政策と日豪関係の今後について」

 2013年02月27日
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ただ今ご紹介に預かりました、駐日オーストラリア大使のブルース・ミラーです。本日は宜しくお願い申し上げます。

本日はご依頼を受けました、オーストラリアの資源・エネルギー政策と日豪関係の今後についてお話させて頂きます。

 

資源分野における日豪関係の歴史

日本とオーストラリアの関係を振り返りますと、そのかなりの部分は、資源・エネルギー分野に根ざしたものでした。これはわが国の歴史上、他に類をみないことであり、この分野は50年以上にわたって、両国のビジネス関係を大きく支えてきました。そのきっかけとなったのは、1957年に締結された日豪通商条約で、これにより日本に最恵国待遇が供与されたのが始まりです。

日本による長期的な展望に立った投資により、1960年代の後半には、鉄鉱石産業が西オーストラリア州で栄えるようになりました。現在、鉄鉱石はわが国最大の輸出産業となっており、2011年度の輸出額はおよそ620億豪ドルになっています。輸出額でこれに続くのが石炭で、同年には470億豪ドルを記録しました。日本はわが国最大の石炭輸出市場であり、輸出全体のおよそ4割を占めるに至っています。

オーストラリアによる鉄鉱石や石炭といった天然資源の日本への供給が、1960年代の日本における工業化を大いに手助けする形で、経済発展が進みました。1968年に、日本はわが国最大の輸出市場となり、その地位はその後40年間にわたって維持されました。現在でも日本はわが国にとって、世界第2の市場です。

1970年代半ばからの10年間で、日豪貿易の規模は4倍に拡大しましたが、その多くは天然資源やエネルギー商品が占めていました。またここ10年間でわが国の対日輸出は倍増し、2001年に240億豪ドルであった輸出額は、2011年に500億豪ドルに達しています。食品や教育、観光など、貿易の多様化が進む中、エネルギーや資源、関連サービス分野は依然、日豪貿易に大きな比重を占めています。

オーストラリアは自由貿易市場なので、将来を断言することはできませんが、日本の投資規模やLNGなどの長期契約の状況から考えて、今後も日本への資源・エネルギー輸出は堅調に推移すると見込まれます。実際、日本の対豪投資の規模は現在1,230億豪ドル程ですが、資源部門はそのうちの多くを占めています。日本はアメリカ、イギリスに次ぐ世界第3位の対豪投資国で、アジアでは群を抜いて最大の投資国となっています。

 

政府の資源・エネルギー部門への関与

オーストラリアは幸い大量の天然資源に恵まれていますが、わが国がこの分野で成功したのは、規制障壁を最低限に抑えて海外投資を受け入れ、自由貿易を推進する輸出政策を採用したためです。例えばオーストラリアには、各資源・エネルギー品目における輸出制限が存在しません。(唯一例外にあたるのはウランですが、これは核関連の保障措置の一環として輸出許可が必要なためです。)政府はこれらの価格問題に関与せず、こうした決定を売り手と買い手の判断に任せています。

 

エネルギー白書

日本とは状況が異なるものの、オーストラリアもまたエネルギー関連の課題に直面しています。両国が関わる国際エネルギー市場においては、シェールガスの出現やクリーン・エネルギーへの転換など、急速な変化が現在起きています。

オーストラリアの国内エネルギー市場やエネルギー資源の将来の方向性を示すために、政府は昨年「オーストラリアにおけるエネルギーの進化」と題した白書を発表しました。

白書では、今後10年間、及びそれ以降のエネルギー開発とクリーンエネルギー転換を進めていく上での、4つの優先分野を以下のとおり定めています。

エネルギー市場改革を含む、消費者のための市場環境の改善
クリーンエネルギー転換の加速化
天然ガスをはじめとする、重要なエネルギー資源の開発
エネルギー政策枠組みにおける弾力性の強化
これらの詳細な説明はこの場では控えますが、ここでオーストラリアのエネルギー政策のこうした優先事項が日本に与える影響について、少しご説明したいと思います。

 

ガスを中心としたエネルギー資源の開発

最初に申し上げたいのは、オーストラリアのエネルギー資源開発は日本にとって明らかにプラスになるという点です。日本はわが国のLNGのおよそ70パーセントを購入する最大の顧客であり、今後5年間に生産が始まるLNGプロジェクトの開発から、恩恵を得られることは間違いありません。

この中には海上での在来型ガス田開発計画が含まれますが、他にもクイーンズランド州では、これまでにはなかった新しい方法での天然ガスの開発プロジェクトが3つ進行中です。炭層ガス産業は15年前には殆ど存在していませんでしたが、現在は非常に盛んです。またわが国にはクイーンズランドをはじめ各州に、従来の技術では採取の難しかった、形態や場所にガスや石油が存在していると考えられます。この点は、日本のようなエネルギー輸入国にとって好ましい状況であるといえます。

アメリカや他の国と同様オーストラリアでも、こうした、いわゆる非在来型天然ガスの開発には地域住民の関心が高く、懸念の声も上がっています。オーストラリア政府はこれに対し、州政府と協力して、炭層ガス産業の規制枠組みを全国的に統一する作業を進めています。また政府は、炭鉱や炭層ガスの開発計画による地下水や環境への直接的、累積的影響について理解を深めようと努めています。

連邦政府はわが国のエネルギー資源開発において、とりわけ州政府との間に重複した規制がある点を認識しています。このため連邦政府は、州や準州政府、その他の関係者と共に、環境規制の一元化を図るための作業を進めています。また資源の開発にあたって、例えば農業、及びその他の土地利用を排除するのではなく、これらと共存できる土地利用を促進するための努力を行っています。

 

クリーンエネルギー転換の加速化

すでにご存知かもしれませんが、わが国は日本と同様クリーンエネルギーの役割を最大限に拡大したいと考えています。このため2020年までに発電に占める再生可能エネルギーの割合を20パーセントにする目標を掲げるなど、幾つかの措置を通じて再生可能エネルギーの普及に努めています。日本からの投資は、太陽光発電や風力発電を中心に、再生可能エネルギーの割合を高める上で大きな支えになっています。

クリーンエネルギーへの転換を推し進めるにあたっては、他にも昨年7月1日に導入された炭素価格制度の存在があります。さらに、政府はクリーンエネルギーやクリーンテクノロジーの支援に、170億豪ドルを投じています。これにはクリーンエネルギー融資公社に対する100億豪ドル、オーストラリア再生可能エネルギー庁(ARENA)への32億豪ドルの拠出が含まれます。

この他にも16.8億豪ドルが、二酸化炭素回収貯留(CCS)への支援に充てられています。これにはカライド酸素燃焼プロジェクトのような、日本とわが国との共同プロジェクトへの支援も含まれています。両国はまたGCCSIという機関を通じて、CCSに関する共同作業を行っています。石炭火力のみならず、天然ガス火力部門から排出される二酸化炭素の回収貯留が普及すれば、炭素排出の制約が進む社会で、低コストの火力発電が将来可能になります。

 

消費者のための、より良いエネルギー市場のために−電力・ガス

次にわが国がこれまでも、また今後も手がけていく電力市場の改革に触れてみたいと思います。日本もまた、電力市場のさらなる規制緩和を検討しておられますので、わが国のこれまでの改革がもたらしたプラス面についてご説明します。

オーストラリア政府は、電力・ガス市場の規制緩和を20年近く行っており、現在も努力を継続しています。改革の中心は、オープンで透明性のある市場の確立です。これにより、競争的な価格形成や効率的な資源の配分、イノベーションが可能となります。

オーストラリアには、世界最長の電力系統が存在します。その距離は5,000キロ以上で、東海岸から南オーストラリア州まで伸びています。政府は、電力・ガス市場をさらに全国的に統合するための努力を続けています。統一された規制が全国に適用されれば、市場の垣根が低くなり、競争やイノベーションが促され、消費者の選択肢が増えます。

規制緩和のプロセスは簡単ではありませんでしたが、こうした改革のおかげで、オーストラリアには世界で最も競争力のある電力市場が形成されています。

しかし一方で、日本と同じように、オーストラリアでも電気料金値上げの問題が起きています。これには、主に3つの要因があります。人口の増大、日本向けを始めとしたエネルギー輸出の拡大、炭素排出量削減の必要性の3つです。この4年の間に、電気の小売価格は平均しておよそ40パーセント上昇しました。政府はこのため、規制の効率化を図ろうとしています。また価格引き下げに欠かせないもうひとつの点は、非効率的なピーク需要を減らすような価格体系を認めるというものです。そうすれば、年にわずか数日しか使用されない発電設備を建設せずに済みます。これにより消費者は、スマートメーターを活用して意思決定を行うなど、柔軟な時間帯別の価格が選択できるようになります。

オーストラリア政府は、例えば、価格を一時的に抑えるための政府介入といった短期的措置は魅力的ではあるものの、消費者の長期的利益にはならないと考えています。こうした介入は投資や競争を停滞させ、サービスの質の低下を招きます。またそれ以上に、こうした措置が解除され、電気料金が実際のコストに近づいた時に、消費者により大きなショックを与えることになります。

電力市場と同様、オーストラリアの国内ガス市場もまた、大きな転換期を迎えています。海外からの需要の増大により、ガスの需給は逼迫しています。これは特に、炭層ガスやLNGの開発が進む東海岸において顕著です。十分な埋蔵量があるため、少なくとも2035年までの予測需要や、国内への供給には問題ありませんが、需要の増加はすでに価格圧力を生み、供給力に影響を及ぼしています。

政府はこの問題に関しても、オープンで効率化された市場こそが最善の解決策であり、こうした市場を通じて価格は調整され、新たな供給を開拓するためのインセンティブが生み出されると考えています。価格や供給を縛る‘リザーブポリシー’のような政府介入は、供給を促進せず、むしろこれを妨げる可能性が高いと思われます。アメリカではシェールガス・ブームが起きる以前、ガスは高価なものでした。そこに大規模な新規投資が促され、ガスが増産されることで現在の低価格がもたらされた点にひとつの実証があります。

 

液体燃料確保の問題

大半の資源に関して、わが国には豊富な埋蔵量が存在しています。しかしこれはあまり語られていませんが、わが国にも埋蔵量が少なく、輸入に頼らざるを得ない資源があります。それは石油です。アジアで新しい巨大なオイル・リファイナリーの建設が進み、経済的圧力が強まる中で、日本と同様にオーストラリアでもオイル・リファイナリーの再編が行われています。

オーストラリアには現在、こうした設備が7つほどありますが、そのうちのふたつは来年の閉鎖が決まっており、国内の精製能力は30パーセント近く低下する見込みです。2014年以降は、自国のニーズのほぼ半分しか、国内で精製できなくなると思われます。

政府は、国内における液体燃料のセキュリティーを注視しています。オーストラリアでは、原油や他の精製用原料の80パーセント以上を輸入に頼る一方で、国内で生産された石油やコンデンセートのおよそ80パーセントをアジアに輸出しています。こうした良質の資源は、アジアでさらに高付加価値製品に姿を変えるため、ここから最大の利益を得ることができます。ここでも政府は、保護的措置ではなく、機能性や透明性の高い、オープンな市場こそがエネルギー安全保障を確保する上での鍵であると捉えています。

 

LNG価格

ここで「エネルギー白書」からは離れて、日本で現在大きな話題となっている、LNGの価格問題に少し触れたいと思います。

ご存知だと思いますが、マーティン・ファーガソン資源・エネルギー大臣は昨年9月、東京でLNG産消会議に出席した際、価格の決定は市場に任せるべきであるとのオーストラリア政府見解を述べました。これによって投資は促され、供給は増加すると共に、市場はより競争的になり価格は低下します。

日本政府による石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や国際協力銀行(JBIC)の資金協力があれば、供給が拡大し、潤沢なガスが市場に出てくるようになります。

オーストラリア政府は先ほど申し上げたような形で、投資やプロジェクト開発に立ちはだかる障壁を撤廃すべく努めています。政府は、わが国が幾つかの理由でコストの高い環境にある点を強く認識しており、現在可能な部分でコストを下げる努力を行っています。

例えば、資源部門における熟練労働力不足の問題です。これは仕事の現場が、人口の大部分が集中する南東部から遠く離れているのも一因です。政府機関のひとつである‘スキルズ・オーストラリア’は、国内全体で新たな採掘プロジェクトに必要な建設、作業の全てを行うためには、2016年までの5年間に、新たに8万9千名の労働力が必要になると述べています。

こうした労働力不足を解消するため、政府は産業界、訓練機関、他の関係者とパートナーシップを組み、天然資源部門労働力戦略を展開しています。

この戦略は、以下の7分野における31の行動目標を打ち出しています。

  • 労働力計画と情報の共有
  • 技能者向けの訓練
  • 新卒者向けの訓練
  • 入国管理措置
  • 就業促進
  • 教育部門と産業界の連携
  • 手頃な住宅の確保とインフラの整備

政府は先住民や女性をはじめとする地元の人々に、資源部門における職業訓練や機会を提供することで、こうした仕事に就けるための支援を行っています。この他、遠くに住む労働者を資源プロジェクトの現場に飛行機で招き、短期的に就業させるといった取り組みも行っています。

しかし、それでもピーク時の労働力需要に必ずしも追いつくわけではない点を、政府は認識しています。このため政府は、資源部門で高い技能を持つ外国人労働者の受け入れを促進する2つの措置を導入しました。ひとつは、外国人の長期就労を可能とする‘サブクラス457ビザ’申請の優先的処理です。もうひとつは、資源部門で特定のプロジェクトを対象に、海外就労者の入国を期間中認める企業別入国管理協定(EMA)と呼ばれる制度です。この制度は、設備投資の規模が20億豪ドル以上で、ピーク時の労働力が1,500名を超えるプロジェクトに適用されます。下請け業者もまた、EMAに基づいた一定形式の労働協定に署名すれば、この制度に参加することができます。

求人にあたっては、まず国内の労働者を対象に募集が行われますが、足りない場合にはEMAを通じて、海外から人材を集めることが可能です。一方企業の側は、労働者に十分な訓練を提供することで、将来必要とされる技能に貢献するよう求められます。EMAは昨年5月、西オーストラリア州の鉄鉱石プロジェクトにおいて、初めて利用が認められました。

しかしこうした努力の一方で、豪ドル高や、多くの資源開発を遠隔地で行わなくてはならないという距離の問題、また技術的課題などにより、政府はある程度の高コスト体質は今後も変わらないだろうと見ています。

将来の技術発展により、こうしたコストの幾つかは低減するでしょう。また技術の進展によって新たな鉱床が開かれて、資源の開発が進んだり、すでに存在が確認されている資源が、経済的に開発される場合もあるでしょう。非在来型ガス・石油における採掘技術の開発は、アメリカに劇的な変化をもたらし、世界のエネルギー市場に大きな影響を与えています。

こうした発展は、LNGの洋上液化の技術にも見られます。世界初の洋上天然ガス液化プロジェクト、FLNGによる生産は、オーストラリアで2016年頃より開始される予定です。勿論日本はINPEXを通じて、FLNGに参加しています。もしFLNGが成功し、価格競争力を獲得できれば、この技術はオーストラリアのみならず、どの国においても適用可能となります。

 

日豪経済連携協定(EPA/FTA)

ここで日豪経済関係に関する、もうひとつの点に触れておきたいと思います。ご存知のように、両国は2007年に日豪経済連携協定(EPA/FTA)交渉を開始しました。両国間に存在する経済の補完性を十分に活用し、その可能性の範囲を拡大する上で、こうした協定の存在は欠かせません。

この協定が締結されれば、貿易や投資における障壁は低減し、モノやサービスの貿易、投資は拡大するでしょう。包括的で質の高いEPA/FTAは、日豪経済のさらなる統合を推し進めます。両国政府が共同で行った実現可能性調査では、日豪EPA/FTAが締結されれば、今後20年間で日本に2兆3千億円を超える経済効果がもたらされると予測しています。

日豪EPA/FTAは、日本が将来にわたってエネルギーや鉱物資源を確保する上で手助けとなります。両国が自由で公平な資源・エネルギー貿易に力を入れ、投資環境を自由化することにより、この分野における日本のさらなる関与が期待できます。

また、日豪EPA/FTAに資源・エネルギーに関する章が含まれる可能性がある点からも、この分野がいかに両国の経済関係に重要な役割を果たしているのかがわかります。EPA/FTAが締結されれば、この分野で両国間に新たな協議のメカニズムが生まれます。

 

アジアの世紀におけるオーストラリア白書

これよりオーストラリアのアジア、とりわけ日本との関係について見ていきたいと思います。ジュリア・ギラード首相は昨年10月、「アジアの世紀におけるオーストラリア」と題した白書を発表しました。白書の目的は、アジア地域における機会に目を向け、わが国がこうした機会を最大限活用できる立場に身を置くことにあります。これにより、オーストラリアがより繁栄した回復力に富む国、地域に完全に統合し、世界に開かれた国になるよう白書は目指しています。

日本との緊密な関係は、アジア全域でまさにこういう関係を構築したいというお手本のようなものです。

この「アジアの世紀」白書には、わが国が2025年までに達成したい一連の目標が掲げられており、アジアで多種多様な変化が起きる中、わが国を成功に導く道筋が記されています。

とりわけここでは、経済の強化や能力の醸成、成長を遂げるアジア市場とのつながり、持続的安全体制の確立、関係の強化・拡大といった5つの分野が包括的に検証されています。

またこの5分野の実現のために、国内でどういった特定の政策が実行に移されるべきなのかを、教育や訓練、インフラ、税制、科学・技術関連のイノベーションといった分野を中心に定めています。

アジアの世紀における教育・訓練分野の目標のひとつとしては、オーストラリア人学生のアジアに関する知識、言語能力の強化が挙げられます。全ての学生が、高校卒業までアジア言語を学ぶ機会を提供されると白書は述べており、日本語は4つの優先言語の中に入っています。わが国の学校や大学において、日本語はすでに最も広く学習されている外国語となっています。

白書はまた大学レベルでも、1万人以上のオーストラリア人学生が日本や他のアジア諸国へ留学できるよう、新たな支援措置を打ち出しています。オーストラリア企業に関しては、主要上場企業200社や連邦政府機関において役員・最高幹部の3分の1を、アジアの経験・知識を持つ人材にする目標を掲げており、そのためのプログラムについても言及しています。

イノベーションに関しては、優れた、力強いビジネスを構築するべく、この分野で世界のトップ10に入るのを目標としています。日本とオーストラリアは、科学や研究の分野で共に優れた業績を誇ります。わが国の大学は今後も、日本の教育機関と共同作業を行い、協力関係を深めていくでしょう。

インフラ面では、既存の整備計画を拡張し、長期的な全国インフラ整備戦略を策定すべく、連邦政府は州や準州政府、民間部門と行動を共にしています。こうした取り組みは、新たなプロジェクトへの民間の投資・関与を拡大し、プロジェクトの早期完了に向けた検討材料を提供します。

白書ではまた、他の域内諸国との関係を強化し、地域の安全を高めると共に、モノや資本、人々や考えが自由に行き交うようになる上で、オーストラリアはより多くのことができると述べています。わが国は現在、東アジア首脳会議やAPEC、G20といったフォーラムを通じ、日本を含む幾つかの国と行動を共にしています。こうした活動により、他国との間でもパートナーシップの基盤が構築されます。また、外交上のネットワークや自由貿易協定を通じて2国間イニシアチブを実行する上でも、こうした努力は欠かせません。

 

戦略的パートナーシップの重要性

最後に、日豪関係にとってもうひとつの重要な柱である戦略的パートナーシップについて述べてみたいと思います。

両国は共にアメリカの同盟国であり、民主主義や法による支配、自由経済主義といった共通の価値観を分かち合っています。またアジア太平洋地域の繁栄と安定、世界の平和を確保すべく、不断の努力を続けています。

世界の勢力均衡が地域における地政学的、戦略的環境を変えつつある中、日本とオーストラリアは地域の安定の維持、強化に向けて力を合わせていく必要があります。この点から両国間の戦略的パートナーシップの重要性は、かつてない程高まっています。

 

終わりに

日本とオーストラリアは資源・エネルギーのみならず、他の分野においても補完的な特別の関係を50年以上にわたり構築してきました。両国は今後も機会を最大限に活用するために、長年培われてきたパートナーシップの強化に努めるでしょう。両国のこうした努力が、将来のさらなる繁栄と未来の前進につながるものと確信しています。

ご清聴、有難うございました。