Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

オーストラリアと日本、世界の主要経済フォーラム:G20におけるオーストラリアの展望

2014年09月26日


野上理事長、ご紹介どうも有り難うございます。

本日はお招き頂き、心より御礼申し上げます。このたび皆様の前で、このようにお話する機会を頂戴し、大変嬉しく思います。

日本国際問題研究所は、外交政策に精通された方々による真摯な議論を通じて、日本外交の行方に影響力を持たれております。

そして、G20と平行して開催され、学術的見地から助言を行うシンク20(T20)にも積極的にご参加下さっています。

野上理事長は最近お書きになった文章の中で、G20の各国首脳に対し、世界経済の問題に対処する上で‘強く、公平な態度を取る’よう求めておられます。

非常に賢明なお言葉ではないかと思います。

本日は国際問題にご関心の高い皆様に、G20についてご説明させて頂きます。

G20は世界の主要経済フォーラムとして、認識されています。

本日特にお伝えしたいことのひとつに、国際的枠組みとしてのG20の戦略的重要性があります。

こうした重要性につきましては、麻生副総理兼財務大臣も深くご理解されております。

今週の始め、麻生副総理はオーストラリアのケアンズでのG20財務大臣・中央銀行総裁会議から戻られ、2008年のリーマン・ショック後、G20が財務大臣会合から首脳会合に格上げされた戦略的意味合いについて、お話されました。

当時、G8の枠組みだけでは世界金融危機には十分対処できず、中国、インド、韓国、ブラジル、そしてオーストラリアなどの国々の関与が、不可欠であることが明確になりました。

G20は、21世紀の世界経済勢力図をより一層反映させた枠組みです。

これについては、また後ほどご説明申し上げます。

G20が2008年から2009年にかけて、大きな役割を果たしたのは疑いのない事実ですが、これは単に危機に対応するためだけの枠組みではありません。
当時の差し迫った事態を乗り越え、G20は現在、緊急時だけでなく平時においても重要な役目を果たす組織として、長期的な景気の回復や成長といった課題に取り組んでいます。

11月15−16日に開催されますブリスベン・サミットに向けての、これからの二ヶ月間は、G20にとってひとつの試練となるでしょう。

世界金融危機への対応において手腕を発揮した、このフォーラムが、持続的な世界成長の基盤を築く上でも力を示せるのかが、試されると思います。

このためオーストラリアと日本は、G20の長期的成功に向け、とりわけ力を注ぐべきであると思います。

本日はこのような視点から、オーストラリアは2014年のG20議長国として、どのようなアプローチを取っているのか、皆様にご紹介申し上げます。

また11月のブリスベン・サミットが目指す成果についても、簡単にご説明いたします。

なぜオーストラリアと日本は、最も重要な国際的枠組みのひとつとして、G20と真剣に関わる必要があるのか、皆様にお伝えできればと考えています。

一連の国際経済、金融、貿易政策に関する問題に対し、首脳レベルで幅広く議論や決定を行え、また米国や中国を始め、ドイツやインド、インドネシア、サウジアラビア、ブラジル、韓国といった主要国が参加している組織は他に見当たりません。

ここで本題であるG20についてお話する前に、日豪関係の現状について少し触れておきたいと思います。

日豪関係は力強く、両国は多くの課題で共通の立場を取っているため、G20のような国際的枠組みにおいても、様々な協力が可能となってきたからです。
オーストラリアと日本は共通の価値観を有しており、国際貿易や投資を円滑に行う上での国際ルールの重要性や、民主主義実現の大切さをよく理解しています。

同様に、地域の安定や自由で透明性の高い市場の実現に、戦略的関心を分かち合っています。

 

日豪関係の現状

両国は長年にわたって、実りある豊かな関係を構築してきました。

私はこれまで37年以上にわたり、何らかの形で日本と関わってきており、オーストラリア政府職員としての29年も含まれていますが、この間にも両国間の関係は深まって参りました。

この関係は、緊密さと信頼感によって支えられています。

2014年は、両国にとって忘れられない年になりました。

4月にオーストラリアのアボット首相が日本を公式訪問し、安倍総理との間で日豪経済連携協定(EPA)が大筋合意されました。

またアボット首相はこの時、日本の国家安全保障会議の特別会合に、初の外国首脳として招かれました。

そしてこれに応え、安倍総理は7月に、小泉元総理以来となるオーストラリア公式訪問を実現されました。

安倍総理は訪問の際、オーストラリアの連邦上院・下院議員を前に議会演説を行いました。

この歴史に残る演説は、わが国で大きな拍手を持って称えられました。
他にも両国の間では、第5回日豪外務・防衛閣僚協議(2+2)が成功裏に行われた他、防衛・安全保障分野で大きな進展が生まれています。

またハイレベルの閣僚訪問が、両方向で数多く実現しています。

オーストラリアでも日本でも、世界経済の重心が、中国やインドを始めとするアジア諸国に移行している現状に注目が集まっています。

しかしながら、これはゼロサム・ゲームが起きているという意味ではありません。

これらの国々の台頭によって、オーストラリア企業の間で日本への関心が薄まっている、あるいは日本企業がオーストラリアに魅力を感じなくなっている訳でもありません。

日豪関係は実質的で、具体的な関与に基づいたもので、絶えず成長を続けています。

日豪経済連携協定(EPA)は高い成果を目指すという点で、日本がこれまで締結してきた貿易協定の中でも群を抜いた存在です。

これは特に、農業分野に関してあてはまります。

新たな貿易協定を目指す場合、必ずどこかから反対の声が挙がるものですが、日豪EPAには、政策担当者や国民の間に幅広い支持があります。

両国で国内手続きが完了し、この協定が2015年始めには発効するよう願っています。
また日豪関係においては、安全保障や防衛がその中枢に位置するようになってきています。

こうした分野を、さらに強化していきたいと思います。

これはある意味で、当然の成り行きともいえます。

両国は価値観や戦略的関心を共有しており、防衛力において補完性が見られる他、共に米国と同盟関係を結んでいます。

安倍総理のオーストラリア訪問の時、両国首脳は防衛装備品、及び技術の移転に関する協定に署名しました。

両首脳はまた、訓練や演習の強化といった実務的な防衛協力や、人道的支援、災害救助、海洋安全保障、平和維持活動における協力を強化することでも合意しました。

日本は何十年もの間、平和と安定に重要な貢献を果たしているとオーストラリアは認識しており、日本がこうした分野で、さらなる貢献を行おうと努力するのをわが国は歓迎します。

安倍総理による日本の安全保障、防衛政策の変更は、積極的平和主義に基づくことを、オーストラリア政府は理解して、歓迎しています。

それでは両国はどのようにして、これほど多くのことを成し遂げてきたのでしょうか?

まず最も基本的な部分ですが、そのためには善意と信頼が欠かせませんでした。

この善意と信頼の気持ちが湧きあがり、形づくられるには、長い時間を必要とします。

例えば、遠く離れたピルバラ地域に投資を行うにあたって、日本とオーストラリアの企業は、お互いへの強い信頼感を育む必要がありました。

そして1960年代、この地に鉄鉱石産業が生まれました。

オーストラリアはそれ以来、およそ26億トンもの鉄鉱石を日本に輸出しています。

これは現在ある日本の全ての鉄道網で使われている量の、300倍以上にあたります。

次に大きかったのは、国際社会において、日豪両国を互いに近づけるような、より大きな力が作用したという事実です。

世界経済の比重や資源需要の変化に伴い、日豪両国の間には協力の機運が高まりました。

こうした傾向は今後も続くと思われます。

またG20の構成に目を向けますと、この枠組みは世界経済における、新興国やアジアへの重心の移行を反映しています。

G20には北アメリカやヨーロッパの経済大国や、いわゆるBRICS諸国、ブラジルとロシア、インド、中国、南アフリカ、さらにはトルコ、インドネシア、メキシコといった国々が参加しています。

当然ながら、アジアの国々は数多くG20に加わっています。

だからこそG20は、オーストラリアや日本にとって、協力を行いやすい枠組みといえます。

もうひとつの点としては、オーストラリアと日本の政府が多くの課題で、基本的に共通した見方を取っていることが挙げられます。

例えば経済の分野では、両国は成長のために民間部門を活用することの重要性について、意見が一致しています。

安倍総理は、日本の経済や政府のあり方を抜本的に変える可能性のある改革に着手しておられます。

オーストラリア政府は同様に、わが国はビジネスに対して開かれていると宣言しており、ビジネス環境の改善と海外投資の誘致を目指して、構造改革を行っています。

またアボット首相と安倍総理の間にある、強い個人的つながりも見逃せません。

もちろん、両国の長きにわたる友好関係は、共通の価値観や関心に根ざしており、一人の指導者や一政党の次元にとどまるものでないのは明らかです。

しかし一方で、こうした緊密な個人的つながりは、両国関係の機運を高めてくれます。

 

G20について

それでは、オーストラリアがどうしてG20をこれほど根本的に重要な国際的枠組みとして捉えているのか、見ていきたいと思います。

ブレトンウッズ体制の発足後に誕生した、グローバル・ガバナンスの枠組みの中で、このG20はおそらく最も重要なものです。

わが国がG20の議長国を務めるのは、ちょうどG20や国際社会が大きな変化を迎える時期にあたります。

今年、G20がアジア太平洋地域で開催されるのは、現在の国際的経済情況を考える上で理に適っています。

アジアとの経済関係は、オーストラリアや日本だけでなく、多くの国々にとって重要性を増しているためです。

オーストラリア主要貿易相手国10カ国のうち8カ国が、また日本の貿易相手国10カ国のうち7カ国が、アジア太平洋地域に位置しています。

ちなみにオーストラリアは、日本にとって世界第4位の貿易相手国となっています。

より広い意味で、アジアとの貿易・投資関係は、全てのG20諸国・地域にとって欠かせないものです。

世界のGDPに占めるアジアの割合は増える一方ですが、これは中国やインドの台頭だけでなく、近年著しい東南アジア諸国の躍進に依るものでもあります。

この数十年間で、世界貿易の趨勢は大きく変化しました。

グローバル・バリューチェーンを通じて、経済はより深くつながり合うようになりました。

すでに世界貿易の70パーセント以上は、中間財やサービス、資本財が占めています。

先進国ではサービス分野が拡大の一途を辿っており、新興国では中産階級が形成されています。

これまで世界全体では貧困層が大半を占めていましたが、今ではインドや中国を中心に、中産階級が主流となりつつあります。

アジア太平洋地域に占める中産階級人口は2009年には5億人程度でしたが、2030年には30億人を超えると予想されます。

世界経済の勢力図が変容を遂げる中、戦略的影響は国際関係を変質させ、多くの課題を新たにもたらします。

G20が重要性を帯びるのは、こうした背景があるためです。

G20には世界の主要経済国が全ての地域から集まっており、世界経済の現状を反映した形となっています。

G20の参加国は世界全体において、GDPの85パーセント以上、貿易の75パーセント、人口の65パーセント以上、一方でまた、貧困層の半数以上をも占めています。

G20の顔ぶれは今日の世界経済勢力図を映し出しており、世界に大きな影響を及ぼす決定は、同じ考えを持つ一部の国々だけで行えないことがわかります。

G20は、国際経済を正しく機能させる役目を果たします。

具体的には、経済システムを全体的に統括するような国際基準やルールの確立を促します。

こうした、効力ある国際的規則の確立は、オーストラリアと日本の両方にとって明らかに重要です。

経済の繁栄を支える国際貿易や投資を円滑に行うためには、国際的規則に則る必要があります。

実際、わが国の輸出入総額は、GDPのおよそ3分の1に相当します。

このため、オーストラリアはしばしば、血管が体の外にあるような生き物に例えられます。

もちろん日本もわが国同様、貿易立国です。

日本の場合、輸出入の合計はGDPの3割弱となっています。

2013年には投資収益収支が16兆円以上を記録し、貿易赤字があったにも関わらず、経常収支で黒字を達成しました。

しかしこれほど多くを貿易に頼っていても、オーストラリアや日本、あるいは米国やEUでさえも、自分たちだけで世界の経済秩序を形成することはできません。

現代では、そのようなことはどの国にも不可能です。

G20は今の時代が必要とする枠組みである、といえるのはこのためです。

多くの他の枠組みと異なり、G20には自らの議題に取り組む上で、ふさわしい国々がすべて集まっています。

例えば、国際金融ルールについて話し合うのに欠かせないすべての国々が、G20には参加しています。

加えてG20の取り組み、及びその国際的枠組みとしての存在感は、より広範な国際関係にとってきわめて重要になってきます。

G20全般に関して、オーストラリアの首相に直接報告を行うオーストラリアのシェルパ、ヘザー・スミス氏は、G20における最も重要で持続的な役割は、国家間に協力と信頼の習慣を築くことであると述べています。

 

転換期にあるG20

G20首脳会合は世界金融危機、日本で言うリーマン・ショックを機に、開催されるようになりました。

会議の成功は、世界を大きく変えるほどでした。

2008年の状況は1929年以上に悲惨でしたが、世界は新たな大恐慌を経験せずにすみました。

いくつかの経済大国において金融部門が崩壊した2008年、G20の首脳は初めてワシントンに集まりました。

会合は翌2009年にも、ロンドンとピッツバーグで開かれました。

参加国の首脳は危機が広がるのを防ぎ、経済の脆弱性を抑えるために、大胆な行動を取りました。

G20は危機を封じ込め、より深刻な事態の発生を食い止めたのです。

保護主義を擁護する政治的圧力が首をもたげた時も、G20の参加国は市場を開放し続けると共に、新たな保護主義的措置は設けないと宣言しました。

そして一連の改革を行い、国際金融体制の実質的強化に努めました。

これにより、主要先進国や主要新興国、またオーストラリアのような中堅国家といった、様々な顔ぶれが集まるG20が、他の国際機関には真似できない程の効果を発揮することが実証されました。

世界の経済問題を扱うのにふさわしい場として、高い評価を受けたのです。

その後のサミットにおいても、G20はこの枠組みでないと対処できないような主要な経済的課題に、一貫して取り組みました。

2010年、トロントでは、各国首脳は世界経済の回復を実現させるため、財政再建や構造改革の必要性に目を向けました。

同年、ソウルではG20開発アジェンダがまとめられ、経済成長を推進するG20の営みが、先進国、途上国の双方に利益となることが確認されました。

またカンヌでは、金融規制の強化と透明性の向上に焦点が当てられました。

2012年、ロスカボスでは、貿易・投資に対する保護主義的措置に抵抗し、これを食い止める決意を一層強化することで合意しました。

昨年のサンクトペテルブルグ会合においては、いくつかの成果の中に、各国の財務大臣は、ブリスベン・サミットで発表するための包括的成長戦略を策定するよう、要請を受けました。

また今年の2月のシドニー会合で、オーストラリアは2018年までに世界の経済成長率を、現在の予想よりもさらに2パーセント以上、上乗せする目標を打ち出しました。

G20は世界金融危機への対応において、自らの価値を証明しましたが、現在は持続的な経済成長を世界的に実現させるべく力を入れています。

つまり目先の危機管理よりも、中長期的な課題に目を据えている訳です。

G20が成功するには、優先事項に対して効果的な行動が取れるよう、協議の中身を絞っていくことが必要になります。

また金融危機以外の時でも、いざという時のためにG20として政治的意思を構築していく努力が大切になります。

また同時に、現在やっていることの価値が幅広く理解されるよう、人々にしっかりと伝えていく必要があります。

 

2014年のG20優先事項、進展と予想される課題について

オーストラリアはG20議長国として、人々の暮らしが実際に良くなるような経済政策の実現に向けて、参加国の首脳に影響力を発揮してほしいと考えています。

オーストラリアは本年のG20において、重要議題の数を絞り込みました。

つまりは、国際社会の問題を全て、G20の議題にしたくなる気持ちを抑え込んできた訳です。

わが国のトニー・アボット首相も、余りに多くの問題を取り上げると、どの課題にも焦点が当てられなくなると語っています。
世界には、対処しなくてはならない数多くの問題がありますが、他の国際会合の場に任せた方がよいものも多々あります。

G20は決して、国連と同じではありません。

かえって強く持続的な経済成長の実現に的を絞ることで、直接的、あるいは間接的にほとんど全ての国際社会の課題に貢献できるのも事実です。

もし世界の経済大国が力を合わせて、より高い成長率の達成に取り組めば、あらゆる国が恩恵を得られます。

オーストラリアはとりわけ、民間主導の成長や雇用を生み出すための環境作りに焦点を絞ってきました。

アボット首相は、ブリスベン・サミットを、ただの話し合いだけの場には決して終らせないと宣言しています。

サミットの成果については、世界中の人々や企業に直接関係あるような内容を、3ページ程の共同声明として簡潔にまとめたいと、私たちは考えています。

G20の重要性と、その違いをもたらす力について、ぜひ皆様にご理解いただきたいと思います。

 

今年の議題

今年のG20においてオーストラリアは、まず第一の点として、民間部門の活用による、力強い経済成長と雇用成果の向上に力を注いできました。

この点では、アベノミクスと多くの共通点があります。

日本が経済政策などで、海外からの理解や支持を得る際に、G20は重要な舞台となり得ます。

日本政府は実際、G20を通じてアベノミクスを上手く説明し、多くの国に好意的に受け入れられました。

次に第二の点として、将来の危機に耐えられるような、より強靭な世界経済の実現に取り組んできました。

そして、もうひとつの点として、オーストラリアは国際機関が21世紀の経済にふさわしい役割を果たせるよう、その強化に力を入れてきました。

ここではひとつめの、雇用と成長に最も欠かせない要素を中心にご説明します。

世界経済が今だ危機から立ち直りつつある過程の中で、わが国はG20の議長国を務めます。

世界経済の伸びは、依然低迷したままです。

国際通貨基金(IMF)では最近何度かにわたって、GDP予想の下方修正を行っています。

人々が景気の先行きに自信を取り戻せるよう、G20は積極的な行動を起こす必要があります。

それでは次に、G20が今年実現を目指す成果について、見ていきたいと思います。

 

成長戦略

まず、成長戦略についてお話し申し上げます。先ほど申し上げたように、2月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議では、今後5年間でG20全体のGDPを現在の予想よりも、さらに2パーセント以上引き上げる目標が示されました。

これは額にして2兆ドル以上であり、実現すれば何百万という数の新規雇用が世界経済にもたらされます。

こうした目標の設定はG20にとって初めてで、私たちが高い成果を追求する努力を後押ししてくれます。

また政治的な意味で、G20に説明責任を与えてくれます。

先週末に開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議で、ジョー・ホッキー財務大臣は、目標に向け、9割を達成するめどがついたと発表しました。

また各国の財務大臣は、2パーセントの目標を達成するという決意を、再度確認しました。

この目標を、民間投資や雇用・就業率の拡大、競争力の強化、規制緩和や貿易自由化といった一連の措置を通じて、実現していくつもりです。
近年、成長を支えるための、金融政策への際立った依存が見られます。

日銀を始め、多くの中央銀行が需要を刺激し、民間部門の貸出を促すため異例の金融政策に踏み切っています。

しかし金融政策だけでは、その効果にも限りがあります。

民間主導の成長を実現させるには、経済・構造改革が協調的に行われる必要があります。

加えて、日本は自らの構造改革の経験を他のG20参加国に伝えることで、指導的役割を発揮できると思います。

 

インフラへの投資

この他にもG20の参加国・地域は、全世界で2030年迄に、70兆米ドル相当のインフラ構築を行う必要があるとされる問題に取り組んでいます。

これには自国のみの場合と、他国との協調的活動の両方が含まれます。

この目標を実現させる最も良い方法は、民間投資への障壁撤廃であり、国際開発金融機関が提供する資金のより良い活用でしょう。

G20が優先すべきことのひとつに、途上国のインフラ構築に向けた資金調達方法の検討があります。

こうした資金調達が上手く行われれば、国内外投資家の利益になると共に、国内経済に構造的変化を生み出すことができます。

G20はこのために、民間投資を呼び込める条件が整うよう、低所得国への支援を行うべきです。

 

雇用

現在は多くの国々が、高齢化社会や労働人口の減少、若者の高い失業率といった問題を抱えています。

これらは全て、日本にも直接当てはまると思われます。

G20の労働・雇用大臣は今月始めにメルボルンで会合を開き、2025年までに男女の就業率格差を25パーセント縮めるよう、各国首脳に対して勧告することで合意しました。

この勧告が実現すれば、合計で1億人以上の女性が、新たに労働市場に参入することになります。。

この、世界でも最も関心の高い目標に日本が野心的に取り組むことは、他国にとって優れた見本となります。

男女の賃金格差が縮まり、女性の仕事がパートタイムに限定されなければ、女性は経済の成長に大きく貢献すると共に、そこから恩恵を得ることができます。

 

貿易

世界の貿易体制は、より一層複雑さを増しています。

WTOが定めるルールや分野別協定の他にも、400以上に上る二国間、地域間の自由貿易協定(FTA)があります。

まずは、こうした複雑な環境への理解を深めなくてはなりません。

そうすれば、企業はビジネスが行いやすくなります。
貿易の拡大は成長につながり、さらなる成長は雇用につながります。

G20では、成長を促す手段としてのグローバル・バリューチェーンの重要性を議論しています。

この7月にシドニーで、日本から経済産業大臣や農林水産大臣がご出席の下、G20貿易大臣会合が開催されました。

この時は、民間主導の成長実現のために何が重要であるかという声を、大臣が直接企業側からくみ取る貴重な場となりました。

昨年12月にバリで開催されたWTO閣僚会議では、主要な成果として貿易円滑化協定の採択案が打ち出されました。

G20貿易大臣会合でも、締結に向けた努力がなされましたが、残念ながら、目標としていた7月31日の期限前には成立しませんでした。

バリ合意の実施に向けて、G20の各国が力を合わせるよう、オーストラリアは期待しています。

実行力のあるWTOの存在は、世界経済には不可欠です。G20はもちろんWTOの役目を果たせません。

 

税制

G20は強靭な経済の実現に注力しており、各国政府が必要な資源を自ら利用できるよう、国際税制基盤の強化に努めています。

グローバル化とデジタル経済の進展により、国際租税制度は今や形骸化すると共に、ますます強い圧力に晒されています。

G20では企業形態の変化に、国際租税制度を適応させるための取り組みを行っています。

生産活動が行われ、価値が創出される場所で利益は課税されるのが、基本的な原則のはずです。

税制の透明性を高め、整合性を守ると共に、不条理な課税逃れに立ち向かうことで、国際租税制度は機能し、各国は民間投資がもたらす利益を享受できるようになります。

G20の各財務大臣は2014年2月の会合で、税制当局間の情報共有を深めるべく、自動的に情報交換を行うための新たな当該基準を受け入れました。

こうした措置は国家予算を助け、国際制度を悪用した税源侵食や利益移転への‘抜け穴をふさぎ’ます。

これは現在、いくつかの多国籍企業が、利益が生み出された国での納税を回避しているためです。
これこそG20各国が力を合わせることで、個別に行える以上の成果を、全ての参加国・地域にもたらすことができるという典型例です。

G20の参加国・地域は、新たな危機の発生を食い止めるための金融規制改革においても、大きな進展を遂げました。

金融機関の強靭性の向上、‘大きすぎて潰せない’金融機関問題の終結、シャドー・バンク部門に関連したリスクへの取り組み、デリバティブ市場の安全性向上などがそうです。

こういう課題はG20にとって、重要な取り組みです。

あらゆる国々が、最終的にその恩恵を受けられるからというだけでなく、規律ある金融制度は新興国の金融市場にとって味方となるためです。

 

国際機関の強化

先ほど申し上げましたが、G20は世界経済の現状に見合った形での、国際機関の強化・改革に力を入れてきました。

新興国は世界経済における重要性の拡大に伴い、国際機関において、より高い発言力を持つべきです。

このため米国議会に対し、IMFのガバナンスを現代化する改革を行う法律を制定するよう、呼びかけています。


エネルギー

G20は今年、様々な国際エネルギー機関の改革について議論を開始しました。

エネルギー安全保障は当然ながら、日本にとって非常に大切です。

シェールガスや他の新しいエネルギー資源は、世界のエネルギー市場を大きく変えています。

さらに新興国からのエネルギー需要の増大は、エネルギー貿易の重心を、アジア太平洋地域へと移行させています。

このような現実が、各種国際エネルギー機関の組織構成に反映されなくてはなりません。

エネルギー市場においては、より高い透明性や強靭性、効率性が欠かせないためです。

オーストラリアと日本は、エネルギー分野において長年のパートナーであり、今年はG20エネルギー安全保障ワーキンググループで、エネルギー効率の推進を中心とした協力活動を行っています。

これにより、温室効果ガス排出の削減とエネルギー安全保障の強化が期待されます。

 

最後に

G20の活動は、絶えず広く理解されている訳ではありませんが、世界経済の発展に必要なのは明らかです。

G20はまだ新しい枠組みであるため、国際体制に完全に組み込まれていないのは事実ですが、本日は、オーストラリアと日本が、G20の持続的成功に共通の強い関心を有していることを、皆様にご説明してまいりました。

G20は全体として、経済危機への対応、経済成長の実現を行うための主要な政策を実行する上で、影響力を行使できる枠組みです。


21世紀のグローバル経済において、国際的枠組みとしてのG20の成功は、オーストラリアや日本、全ての国々の長期的な経済の繁栄にとって、欠かせないものです。

世界経済を動かす上で、G20はなくてはならない存在です。

2014年、オーストラリアは議長国として、G20が最も成果を生み出すことができる、経済成長や雇用といった主要課題に取り組んできました。

ブリスベン・サミットの開幕に向けて、今後も日本や他の国々と緊密に協力していけるよう期待しています。

ご清聴有難うございました。