オゾン層について
オゾン層は地上15〜30km付近を中心に存在する層で、太陽から放射される紫外線を吸収する働きがありますが、それが薄くなったり、そこに穴が開いたりすることで、人体に有害な紫外線が直接人間の体に吸収されることになります。
オーストラリア大陸上空では紫外線を吸収する大気圏のオゾン層が薄いため、国内では、オゾン層を守るための積極的な対策が早くから打ち出されてきました。
オーストラリアは、1987年に、オゾン層を破壊するフロンガス(CHC)の使用を禁止する国際的な条約モントリオール・プロトコールに早々と調印し、国内でのフロンの使用をかなり以前から禁止しています。また、国内では1989年オゾン保護法(Ozone Protection Act 1989)という法令に基づき、オゾン層を守るための対策を生み出しています。
年間を通して晴天の日が多く、紫外線が強いオーストラリアへ旅行する際は肌を守るように心がけましょう。
スリップ・スロップ・スラップ・ラップ
オーストラリアでは紫外線による健康被害予防に向け、1980年代に「サン・スマート(Sun Smart)」プログラムが導入されました。中でも、特に力を入れているのが子どもへの紫外線予防指導で、『スリップ・スロップ・スラップ・ラップ(Slip, Slop, Slap, Wrap)』というスローガンを合言葉に具体的で徹底した対策がとられています。
『スリップ・スロップ・スラップ・ラップ(Slip, Slop, Slap, Wrap)』とは、紫外線予防のために取るべき行動を示す言葉で、次のような意味があり、子どもたちが屋外へ出る時に守るべきスローガンになっています。
長そでのシャツを着よう! (Slip on a long sleeved shirt!)
日焼け止めを塗ろう! (Slop on some sunblock!)
帽子をかぶろう! (Slap on a hat that will shade your neck!)
サングラスをかけよう! (Wrap on some sunglasses!)
子どもの時に大量の紫外線を浴びることが将来的な健康被害リスクを高めるため、紫外線から子どもたちを守ろうということで、このスローガンが誕生しました。
オーストラリアの紫外線対策は世界で最も歴史が古く、紫外線の害を予防しようという考えは国民の間に広く浸透しています。特に、子どもが日中長時間過ごす学校では、分かりやすく、きめ細かい指導が行なわれています。
例えば、『ノーハット・ノープレイ(No Hat, No Play)』ということで、帽子をかぶらない子どもが校庭で遊ぶことを禁じている学校が少なくありません。しかも、戸外活動授業でさえ禁止してしまうという徹底ぶりです。日光の当たる身体部分にはすべて日焼け止めを塗ることを義務づけ、各クラスには日焼け止めが常備されています。
子どもは先生や大人を見習い、真似をする中で学ぶことが多いため、学校では先生が、家では親が良い手本を示し、紫外線対策であるサン・スマート・プログラムを実践しています。
紫外線
紫外線は白内障の原因になる等、目にとっても有害なため、サングラスの着用を義務づけたり、サングラスの購入に対して補助をしている学校もあります。地域の施設でも日よけを作る努力がなされています。
オーストラリアの紫外線予防策は徹底されており、子ども用プールの上にはテント、公園の遊び場の上には目の細かい網で作られたおおい、野外ステージには屋根、そして、商店街の舗道上には商店の軒先が大きく張り出している、といった具合です。
特に、オーストラリアで夏季にあたる11月から2月の紫外線は、年間で最も強く、その強さは赤道直下の国と並ぶ程です。 紫外線レベルは、午前10時から午後3時にピークに達し、この5時間で一日の紫外線の60%を受けることになります。 紫外線の強弱は気温と比例するものではないため、涼しいからといって紫外線が弱いわけではありません。
肌を守ろう
強い紫外線から身体を保護する日焼け止め、化粧品はもちろん、衣類、サングラス、帽子等は、紫外線による皮膚ガンの予防を推進するキャンサー・カウンシル・オーストラリア(オーストラリア癌評議会)のショップ等で購入できます。
衣類
- ゆったりめの軽い服装で、できるだけ腕、脚、首をおおうものが良い。
- Tシャツは首が隠れないので、ポロシャツの方が望ましい。
- 生地は、綿、麻等の風通しが良いものを選ぶ。ポリエステル・綿の混紡や綿100%の衣服は紫外線被害を95%防ぐという結果が出ている。
- 洋服が濡れていたり、あせたり、古い場合には予防効果が弱まる。
- 薄い色より濃い色の衣服の方が紫外線を吸収しないため、より良い。
オーストラリアの衣服には、紫外線保護指数UPF(Ultraviolet Protection Factor)基準が設けられ、衣服のラベルにUPF指数が表示されているものもある。UPFの数値は、衣服が太陽の紫外線を遮断する効果を数値化したもので、UPF15以上が良いとされる。UPFは最高50+まであり、水着はUPF50+がおすすめ。
帽子
- 顔、首、鼻、耳、頭皮を紫外線から守るものを着用する。
- 屋外では、8〜10cm(小さい子どもなら6cm)程度のつばのある帽子をかぶること。ただし、帽子のみだと部分的にしかおおうことができないため、日焼け止めも必ず使用する。野球帽やサンバイザー、つばの浅い帽子は顔や首をおおうことができないため、あまり好ましくない。日にかざしても日が透けないものが良い。
- スポーツをする場合やよく動き回る子どもには、つばが邪魔になるので横と後ろのおおい部分が長くなっているタイプの帽子(legionnaire's hat)が良い。
- 帽子は上からの紫外線予防には役立つが、反射からは守ることが出来ないため、サングラスの着用や顔・首に日焼け止めを塗ることを忘れないようにする。
サングラス
- 紫外線は、日焼けの他、目の痛み、白内障、盲目等のダメージを与える場合もある。
- オーストラリア国内で販売されるサングラスは厳しい消費者規定(AS 1067)をクリアし、95%以上紫外線をブロックするものでなければならない。
- サングラスと帽子を両方着用することにより、目に届く紫外線を98%カットすることができる。
- 普段メガネをかける人は、紫外線防止フィルムをメガネにつけるか、度付きサングラスの利用が望ましい。
日焼け止め
- 最低SPF15、できれば30のものを使用する。SPF(Sun Protection Factor)は、人体に悪影響を及ぼすUVB(紫外線B派)防御効果度を表わし、オーストラリアでは最大数値が30と制限されているが、日本では上限が設定されていない。SPFの設定数値は各国独自のものであり、SPFが高い国の製品が必ずしも紫外線カット効果が高いとは限らない。
- 日焼け止めクリームは赤ちゃんであっても、適切な衣類等でおおわれていない部分に塗ってあげること。その際には刺激のない子ども用の製品を選ぶ。
- 原則として多めに塗ること。肌にすり込むのではなく、皮膚に薄い膜ができるくらい残すのがポイント。まばらではなく、きっちりすき間なく塗る。
- 浸透する時間を考え、屋外に出る最低20分前に塗るようにする。
- 2時間毎に塗り直す。また、泳いだり運動したりした場合にも、すぐに塗り直す。
- 子どもが朝学校に行く前に保護者が塗ってやる。また子どもが自分で塗る場合はきちんと塗れたかどうか確認すること。
- 学校でも塗り直しができるよう、日焼け止めクリームを持たせることが望ましい。
関連リンク
- Cancer Council Australia – Sun Smart (オーストラリア癌評議会サン・スマート・プログラムについて)
- New South Wales Education and Communities - Sun Safety (ニューサウスウェールズ州公立学校における日焼け防止対策について)
- National UV Index Forecast Map (オーストラリア気象庁紫外線指数予報)
指数は1〜2『低い』、3〜5『適度』、6〜7『高い』、8〜10『非常に高い』、11以上『極度に高い』の5つに分けられます。