Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26) オーストラリア首相ステートメント

2021年11月1日

スコット・モリソン首相

 

首相:この場に会するにあたり、事態を楽観的に捉えられるのには理由がある。

私たちは一年半前、100年に一度のパンデミックという深い闇を凝視していた。必要なワクチンが開発されてないだけでなく、コロナウイルス用のワクチン自体が存在していなかった。

だが現状はどうだろうか。何十億もの人々がワクチン接種を行い、世界は新型コロナウイルスで失われたものを取り戻しつつある。

気候変動への対処についても、同様の形で困難を乗り切ることであろう。

率直に申し上げて、この対応にあたるのは、主にこの一室に集まった方々ではない。私たちの科学者や技術者、起業家、実業家、投資家といった、排出量実質ゼロへの道筋を実際に示す人々である。

だがこうした人々を促すのは、各国政府のリーダーである私たちの責任である。

技術はとりわけ長期的に見て、脱炭素経済に対する答えとなるであろう。そしてそれは途上国を始めとする私たちの国民の生活や、より良い暮らしを求める機会を否定しない形で実現されるであろう。

技術コストの引き下げとその大規模な採用の実現こそ、このCOP26会議でわが国がコミットしている、2050年までの排出量実質ゼロの目標を達成するためのオーストラリアのやり方(the Australian Way)の中枢に位置するものである。

とりわけ途上国経済をはじめ、至る場所において成功するためには、よりクリーンな技術による解決は、既存の技術を打ち負かさなくてはならない。

この点は北大西洋の先進国経済においてだけでなく、インド太平洋地域の途上国経済でも、そうなる必要がある。

エネルギー費用の上昇は、最も経済的余裕のない人々にまさに影響を及ぼす。

低排出技術の台頭やその広範な採用を推し進めることこそ、わが国の排出量実質ゼロ計画の中心である。

オーストラリアはこのような考えから、クリーンな水素や低コストの太陽エネルギー、低炭素鉄鋼及びアルミニウム、エネルギー貯蔵技術、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術、土壌炭素貯留の目標コストを設定している。

わが国は、何もない所から始めている訳ではない。世界における商業用太陽電池の90パーセントは、オーストラリアの技術を使っている。

オーストラリアは、世界一の屋上ソーラーパネル設置率を誇っている。

再生可能エネルギー設備の設置は、世界と比べて8倍、ヨーロッパの最も進んだ国々と比べても3倍早い。

オーストラリアはすでに2005年比で温室効果ガス排出量を20パーセント以上、排出原単位では54パーセント削減しており、他の国々よりも先行している。一方この期間に経済は45パーセント成長し、経済の伸びは排出量の削減と相反しない点を実証している。

このCOP26会議におけるオーストラリアのNDC(国が決定する貢献)によると、わが国の排出量は2030年までに35パーセント減少する見込みで、これはわが国のパリ協定へのコミットメントを大きく上回る。つまりオーストラリアは、自らのコミットメントを達成し、これを超えることになる。またこのCOP26会議において、太平洋諸国や東南アジアのパートナー国のための当初の気候資金の拠出額を20億豪ドルへと倍増している。

わが国は将来を見据え、国内外で技術面でのパートナーシップを締結している。海外の相手はシンガポールやドイツ、英国、日本、韓国、インドネシアなどであり、さらにインドとの間でも締結に近づいている。

オーストラリアは今後10年間で、200億豪ドル以上を投資して転換を推進し、民間投資が総額800億豪ドルに達するよう誘導していく。

また、信頼できる国際的なカーボン・オフセットの構築に力を入れている。このために、緊密な友好国やインド太平洋の近隣諸国と協働している。

舞台はすでに整っており、気候変動に対処する機運は、世界的に高まっている。排出量実質ゼロの目標を宣言した国々は、世界GDP  の80パーセント以上を占めている。オーストラリアの場合、輸出先の90パーセントが、実質ゼロ目標にコミットメントを行った国々である。

わが国の研究者や科学者、起業家、投資家、さらに最も重要な点として、国民も用意ができている。オーストラリアのやり方(the Australian Way)とは、こうした人々に賭けることであり、この方法は勝算が高いと信じている。