Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

ヘイハースト大使 東京ロータリークラブ講演

2023年8月30日

 

ロータリークラブの皆様、初めまして。

オーストラリア大使のジャスティン・ヘイハーストと申します。

まずは東京ロータリークラブの筑紫勝麿会長、およびグレッグ・ストーリー氏に、本日のお招きを感謝いたします。

この場にいることを光栄に思います。皆さまのご出席に感謝申し上げます。

本日はオーストラリア政府の日本国内、および日本とのアジェンダについてご説明します。

私たちの関与、また日本におけるわが国との協力の機運は、かつてないほど高まっています。

このパートナーシップは両国のみならず、地域の安定にも大切です。また経済や技術の交流を支えるルールや制度の確立にも欠かせません。

両国には、より強力で深く、総合的な協力を通じた機会が存在します。防衛や外交、エネルギー転換、先進技術、データなどの分野でです。

同時に、日豪の国益に対するリスクが近年高まっています。不確かな戦略的、経済的見通しの高まりと同様にです。

別の席でも述べましたが、オーストラリアから見ると、国際秩序は大きく形を変えつつあり、インド太平洋地域の安定は、もはや当然視出来なくなっています。

長年にわたってこうした安定を支えてきたのは、米国の比類なき力であり、市場経済統合の流れであり、グローバル化が安全を高めてきたという広範な認識でした。

しかし、これらに変化が起きています。

私たちの世界を、以前のように見ることはもはや困難です。新しい考え方や、協力による影響力の行使が求められます。

こうした最大の変化の要因は、中国の国力や比重、影響力の増大です。これは現在も進行中です。

日豪の戦略家は、中国がいかにこうした力を活用するのかという点を長く懸念してきました。国際法を基盤としない、海洋権益拡大の主張が一例です。

財界トップも、中国経済が弱体化し、不安定になった際の影響について考えずにはいられません。

というのも、中国の行動は全般に及ぶ影響、特に混乱を引き起こす形で、世界の経済やエネルギー転換、コモディティ市場、力の均衡に影響を及ぼすからです。

私たちの環境はいまや競争が激しくなっています。日豪のような民主主義国家は互いに、また他国と協力し、地域や世界秩序において、中国やその最も緊密なパートナーであるロシアが望むのとは違う形のビジョンを推進しています。

この競争は力や価値観、ルール、データ、サプライチェーン、技術など、国や経済を結びつける要素をめぐる争いです。

こうした背景の中、政府は国際社会へのアプローチを選択しています。

適応するか、リスクを回避するか、身を潜めるか、行動するかです。

オーストラリアは強い志と行動主義を持って、時局に対応することにしました。

主体的行動という概念は、オーストラリアの外交政策の根本を成しています。ペニー・ウォン外務大臣はこう述べています。

「私たちは単に、大国に自らの運命を決めさせるわけにはいかない。

大国がルールを軽視する時に、受け身でいることはできない。

私たちは単に、大国という主役が活躍する舞台における、世界の地政学という壮大なドラマの脇役ではない。

いかに国力や影響力、ネットワーク、能力を活用し、壊滅的な争いを避けるべきかを自らに問うかどうかは、それぞれの国にかかっている。」

この野心的で積極的な力やネットワーク、影響力の活用という点については、似た表現が日本にもあてはまります。

例えば、今年のG7議長国としての表現もそうですし、韓国との二国間、また三カ国の関与においても見られます。

もちろん地政学において、中国以外の問題は多く存在します。

大規模なウクライナの侵略やロシアによる核使用の脅しは、ふたつの最悪な流れですが、ほかにも北朝鮮の違法で脅迫的な、日本などの隣国に対する振る舞いが存在します。

力は正しいという考え方を、なし崩し的にスタンダードにしてしまう、例えば海洋領域の分野などでですが、こうしたやり方では、
安定や苦労して勝ち取ってきた国際法の原則が損なわれます。

軍事的脅迫や経済的威圧、偽情報は、権威主義国家の国政術における主要な手段であり続けています。

いわゆる偽情報について言えば、日本は福島原発処理水の放出をめぐって標的にされています。

わが国は日本が取ったプロセスに全幅の信頼を置いており、これは原子力をめぐる国際原子力機関IAEAの専門家も支持しています。

私たちは、福島や他の県による震災からの復興において団結しています。

こうした手段を活用する傾向に対し、わが国やパートナー国は対応する必要がありました。わが国の特別な戦略的パートナーである日本もそうです。

また、日米豪印の枠組みであるクアッドの目的と機運は高まっています。重要な成果が、健康安全保障や新興技術、海洋領域での認識において、今年5月広島での首脳会談で達成されました。

オーストラリアは記録的なレベルの支援や関与を、太平洋島嶼国に行っています。気候変動などの分野がこれに入ります。

ほかにインドやインドネシア、東南アジアの国々とのパートナーシップを強化しています。

日本とは、安全保障協力に関する日豪共同宣言を出しています。これについては、後ほどご説明します。

オーストラリアは日本や、NATO非加盟国とともに、ウクライナがロシアの違法な侵略に対抗できるよう支援しています。

こうした一貫し、結束した対応、戦争がもたらした危険への対応は、パートナーシップが持つ力を伝えてくれます。

こうした行動に加え、わが国はかつてない規模の防衛力の増強に取り組み、原子力潜水艦の配備に向け、米国や英国との協力を行っています。

これは、それ相応の責任ある形での軍事力の拡大であり、わが国の海洋権益の範囲や複雑性を示すものです。背景には、安全保障環境の悪化があります。

オーストラリアはまた、長距離攻撃能力や弾薬生産能力を高め、北部軍事基地の機能向上を図っています。

これらのひとつ、ティンダル空軍基地は自衛隊の航空機および要員を受け入れました。そしてわが国の空軍と本日日本に戻り、武士道ガーディアンの共同訓練を行います。

これらの活動は、新しい日豪円滑化協定の下で行われます。日本にとって、この類の協定は初となります。

わが国の防衛戦略と防衛力に関する決定においては、抑止力が鍵です。いかなる国に対しても、他国の支配に武力や威圧を使えないと感じさせることが大切です。

外務大臣の言葉を借りれば、どの国も争いのメリットがリスクを上回ると、結論づけないようにしなくてはなりません。

こうした目的が、戦略的均衡を目指す政策に組み込まれています。そこでは、外交による戦略的な保証は、軍事的抑止力に裏打ちされます。

東京で昨年、リチャード・マールス副首相はこう語りました。

「日本同様、わが国は軍事力を戦略的道具として奨励しているわけではない。わが国が重視するのは主に外交であり、経済の開放性であり、ルールの遵守である。地域のパートナー、太平洋や東南アジア、北東アジア、クアッド諸国との協働である。」

これはわが国のアプローチの重要な点です。防衛力は国政術のひとつに過ぎません。日本も同様かと思います。

ここで日本の岸田首相の言葉を、繰り返させてください。「外交は防衛力に支えられる必要がある。」

日本はモデルであり、地域のリーダーです。これはその独自の法的環境、歴史的状況を考慮に入れてもです。

日本はかつてない規模の防衛費増強や、自由で開かれたインド太平洋政策のためのシステムや準備に関連した改革に取り組んでいます。この政策は国際法や連結性へのサポートに主眼を置いています。

この戦略において、透明性のある開発のための融資は、防衛力と同じくらい重要です。

つまりはこれらの両方が必要なわけです。ひとつは開発を実現し、機会を提供します。もうひとつは身を守り、争いや侵略を阻止します。

日本による現在の戦略的環境への対応は、抑止力や防衛的準備の必要性を示しています。また経済や技術の面で、合意されたルールを土台とした秩序の下、競争していく必要性が高まっていることを教えてくれます。

日豪にとってパワーバランスや原則の確保は、互いの国益になります。なぜなら原則によって力が行使されれば、私たちは開かれた
地域の秩序を生み出すことができ、そこでは中国は目を引く存在ではあっても、支配的な存在とはならないからです。

貿易や海洋領域、環境、軍事的関与、いずれの分野であれ、ルールが明確で、相互の話し合いで決まり、絶えずルールが遵守される
世界を作るためにです。

この目的に向け、日豪は外交政策のパートナーシップを組んでいます。何かを作り、共に構築し、つながるためにです。

こうした戦略的文脈の下、ここで私が考える日豪パートナーシップの3つの柱を打ち出したいと思います。

ひとつめは戦略的な調整です。これはお話したとおりです。

2022年の安全保障協力における日豪共同宣言では、開かれた安全な海洋領域や国際ルール、侵略の抑止へのコミットメントが謳われています。その実現のために、こう書かれています。

「両国は緊急事態に関して相互に協議する。これはお互いの主権や地域の安全保障上の利益に影響を及ぼす事態を指す。そして両国は対応措置を検討する。」

その意図は、システムや政策のよりよい統合、相互運用性の強化にあります。これには共同演習や、共同での能力強化の機会の追求が含まれます。

それぞれの目標は、統合された努力の強化なしには実現できません。

この第一の柱には、戦略的調整や抑止力、相互運用性が含まれます。

両国のリソースを共通する目的のために集め、蓄えるということです。

こうした日豪のアプローチは、他の領域でも見ることができます。

例えば、米国とのそれぞれの同盟関係

インド、韓国とのパートナーシップ

平和で安全な台湾海峡への支援

インド太平洋に関するASEANアウトルックへのサポート

開発と安全への対応をめぐる太平洋島嶼国に向けた協力などです。

ふたつめの柱は、重要な貿易や投資、ネットゼロをめぐるパートナーシップです。

この柱にはエネルギーや食料だけでなく、日本の製造業や富の創造に不可欠な原材料、銅やニッケル、亜鉛、アルミニウム、砂糖、
小麦が含まれます。

ほかにも医療機器やサービス、防衛産業における機会、また研究協力強化の大きな可能性が含まれます。

ハーバートスミス・フリーヒルズ2022年投資レポートによると、日本は引き続き米国に次いで、対豪直接投資の累計で世界第2位の1338億豪ドルを記録しています。また、対豪直接投資とポートフォリオ投資の合計で2587億豪ドル、世界第4位となっています。

日豪の往復貿易額は、わが国の2021−22年度で1173億豪ドルに達しました。これにより、日本はわが国にとって世界第2位の貿易相手国となっています。

また、わが国の輸出先として日本は世界第2位であり、その額は929億豪ドルを記録しています。

これは、前年度より75パーセントの往復貿易の伸びに相当します。

エネルギー安全保障は日本にとって大事ですが、両国のパートナーシップは脱炭素やクリーンエネルギーといった、戦略的な内容に
進化していく必要があります。これは、両国のネットゼロ宣言を踏まえてのことです。

気候変動・エネルギー担当大臣クリス・ボーエンは、7月にこう述べています。

「日本の従来のエネルギー大手企業には、わが国の再生可能エネルギーに投資する機会が存在する。

わが国には、日光が足りない、風が足りないということはない。

だが、常により多くの資本を求めている。

国内企業、多国籍企業からの再生可能エネルギーへの投資を歓迎する。

再エネ専門の企業、および化石燃料を扱い、多様化や再エネへの転換を図っている企業からの投資を歓迎する。

日本からのガス投資は、わが国のガス産業の育成を助け、日本のエネルギー安全保障に貢献した。

同様に、日豪のパートナーシップや再エネへの投資は、両国のエネルギー分野でのニーズを満たし、排出量目標の実現を支える。」

中断の時期を乗り越え、エネルギーの移行を進める行為は、両政府の戦略的信頼に支えられていくでしょう。

これはまた、日本のエネルギー安全保障を助ける、わが国の持続的なコミットメントに支えられています。もちろんエネルギーミックス、日本が輸入し、消費する品目も変わっていくと思われます。

ガスの需要は確かに続くでしょうが、水素や他のクリーンエネルギー技術が出てくるでしょう。

エネルギー転換には無論、戦略的な側面があります。

日豪はともに、エネルギーの移行をアジアやそれ以外の地域でサポートしています。

私たちはほかにも、重要鉱物供給のための可能な市場の確立に取り組んでいます。バッテリー製造などの技術をサポートするためです。

スライドからわかるように、オーストラリアには豊富な資源や採掘・加工の専門知識があります。

日本には資本と技術、需要があります。

こうした要素を組み合わせ、強靱なサプライチェーンを確立し、経済や安全面での要請に応える必要があります。

日豪パートナーシップの経済的側面は結局のところ、十分に機能する市場と資本の移動性にかかっています。

両国ともに、ルールを基盤とした貿易を強く支持しています。

しかし一方、安全面でのリスクや歪みに対処する必要があります。もし私たちが重要技術や原材料を単独のサプライヤーに、また輸出について単独の市場に過度に頼れば、こうしたリスクや歪みが生じます。

第二の柱は、日豪の深い経済関係、とりわけエネルギーであり、他部門での機会の拡大と多様化と言うことができます。

この柱における両国の取り組みは、何を一緒に行うのかのみにとどまりません。

同時に、安定し、法に基づいた、健全な制度を持った経済環境を持てるかにかかっています。こうした環境があってのみ、貿易や
投資、イノベーションに自信を持って取り組むことが可能になります。

私たちが注目する第3の柱は、両国間のつながりです。これには両国のロータリークラブによる交流も含まれます。

過去の業績をたたえる以上に、私たちは、両国民や社会がお互いをより深く知り、理解できるための取り組みを行っています。

オーストラリア政府は第2,第3の柱をひとつにする試みのひとつとして、2025年大阪万博に参加します。

さらに新しい措置に目を向け、両国民が旅行や留学、研究、仕事による行き来から、より容易に恩恵を得られるようにしていくべきです。

これらは多岐にわたる、野心的なアジェンダです。

両国はより多く、より早く、かつてないほど協力し、この点を実践しています。

私たちが個人、または協力して行っている活動は必要なものですが、私たちは同時に、これらが不安定な時代のものである点を認識しています。

この点はわが国にとっては、中国とのコミュニケーションの経路をオープンに保とうとしつつ、抑止力や強靱性を確立することを意味します。

岸田首相が、安定した建設的な関係を中国との間で目指しているのと同様、わが国も協力が可能な分野で、中国との対話を目指しています。しかし必要な場面では見解の相違をいとわず、国益に沿って行動します。

こうした姿勢は、オーストラリアがいかに目的や決意を持って、現在の状況に対応してきたのかを示すものでしょう。

また、いかに日本とのパートナーシップが、わが国に不可欠となったのかを示しています。

ウォン外務大臣は、日豪パートナーシップをこう形容しています。

「協力の拡大・強化に関し、防衛やインテリジェンス、エネルギー転換、気候変動、人道支援、災害対応、健康安全保障、海上安全保障、経済安全保障の分野で、両国をコミットさせるものである。」

言い換えると、使えるあらゆる手段を通じて、目的の実現にコミットさせるということです。

最近の歴史を見ると、日豪はパートナーシップの構築により、経済的、戦略的補完性を享受しています。

両国は協力し、自らの、またインド太平洋地域の国益に叶う成果を上げています。

ありがとうございました。