Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

言葉の壁を乗り越えて

2023年9月18日

日本の航空自衛隊機F-35A「ライトニングII」数機がオーストラリアへと飛び、歴史的な訪豪を実現しました。その際、日豪関係の緊密化に貢献したのが、少数の言語担当官です。

エマ・コバヤカワ少尉はティンダル空軍基地に置かれた第452飛行隊の管制部門に配属されていますが、今年8月に航空自衛隊が同基地を60人規模の要員で訪問しました。

今般の航空自衛隊機F-35Aの訪豪は、日豪円滑化協定が適用された最初の事例であり、同機の国外展開は史上初です。日豪双方の言語担当チームの貢献もあり、大きな成功を収めました。

コバヤカワ少尉は「言語業務には、食事や移動手段の手配、宿泊関連の対応から、会議時や基地見学中、または医師診察時の言語サポートまで、さまざまな内容が含まれます」と語っています。

同氏は「言語担当官の仕事のためには、多岐の分野にわたる語彙の修得が必要です。航空機整備や衛星通信システムについて議論する会議で通訳を行うことがあります。多様な分野の軍事用語を学ぶのは大変なこともありますが、言語担当官であることで、空軍内や自衛隊の人々と新しく知り合うことができますので、すばらしい機会となっています」とも述べています。

豪軍は、英語以外の言語を母語として育った隊員から、大人になってから言語を学んだ隊員まで、背景の異なる言語担当官の力を借りています。

航空自衛隊によるティンダル空軍基地訪問の支援に従事する前、日本の名古屋で育ったコバヤカワ少尉は、家族と一緒に15歳でオーストラリアに移住しました。

「高校の社会生活と学業の両面で、ここオーストラリアに慣れるのは大変でした。ただ、幸運なことに、家族、友人、先生たちに恵まれました。新しい環境になじめるように、助けてもらったのです」と、コバヤカワ少尉は振り返ります。

「文化面では、オーストラリアのユーモアになれるのに、なかなか骨が折れました。とても独特ですし、ジョークを理解するための背景情報がなければ、理解に困ることがあります」

小さい頃から航空機に強い興味をもったコバヤカワ少尉は、高校で国防業務体験プログラムに参加し、空軍でのキャリアに進もうと思うようになりました。

コバヤカワ少尉は、航空交通管制の職務のかたわら、言語業務に従事したことで、多種多彩な業務を経験できて嬉しかったと語りました。一方、両業務の間でバランスをとるという難題にも楽しみながら取り組みました。

「軍の国際業務にこれまで数回携わり、言語サポート業務を効率的に進める言語担当官の能力に影響する、数多の要因を理解できるようになりました」

言語担当官による支援は、言語を翻訳することにとどまりません。各国代表者間のコミュニケーションを理解する能力を提供すること、そして、文化的に敏感であることが優れた言語サポートなのです。

「ボディランゲージ、アイコンタクト、声のトーン、タイミング、伝統、ユーモア表現の重要性を理解することも、効果的に職務を遂行する上で重要な要素となります」と、コバヤカワ少尉は語りました。

著者:レーチェル・ブレイク空軍大尉

写真:オーストラリア政府国防省