Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

ウォン外務大臣 太平洋諸島フォーラム事務局での演説

フィジーにて

ペニー・ウォン外務大臣

2022年5月26日

 

オーストラリアによる太平洋地域への関与の新たな時代に向けて

 

Bula Vinaka! Vinaka vaka levu.

とりわけオーストラリア新政権の一員として、ここ太平洋地域に戻ってきたことに大きな喜びを感じます。

親切で、賢明なヘンリー・プナ太平洋諸島フォーラム事務局長、並びに事務局スタッフの皆様へ。

太平洋地域機関評議会代表、並びにフィジー政府高官の皆様、外交機関、及び仲間である太平洋諸島や報道関係者の皆様、その他のご列席の皆様へ。

本日は外務大臣就任から4日目であり、事務局長がおっしゃったように、今回は私にとって初の公式訪問となります。そしてこの地に頻繁に来られるよう、また、現在の世界が提示する課題や機会に対処するにあたって協働できるよう願っております。

中でも特に、太平洋地域の卓越した組織であり、太平洋地域主義の要である、この太平洋諸島フォーラムの場に居ることを大変光栄に思います。本フォーラムは50年以上にわたり、この地域ならではの方法で、私たちをひとつにしてきました。太平洋諸国は本フォーラムを通じて、国際舞台において自らの利益を擁護すると共に、気候のような課題における国際的議論を主導してきたわけです。

わが国は、本フォーラムの創設メンバーであり、本機関への参加を貴重なものと捉えています。私が就任から4日目にここに来たのも、オーストラリア新政権を代表して、この太平洋ファミリーの一員である点をいかに重視しているのか、この太平洋地域で直に伝えたかったためです。

そして太平洋地域の兄弟、姉妹である皆様に、感謝の意をお伝えします。

私たちが共有するブルー・パシフィックと、その驚くべき生物多様性への管理に謝意を表します。

いくつかの地球最古の文化や、多くの言語の守り手である点に感謝いたします。

私たちは太平洋地域に家族のような深いつながりを感じ、同じ家族としてこの地域とつながりたいと強く願っています。

私たちには、長年の絆が存在します。このつながりは危機によって醸成され、平和や繁栄の時期にも維持されました。

こうした絆は、音楽や文化、スポーツ、学界など、オーストラリアで活躍する太平洋諸国の人々による力強い貢献において明らかです。

また実に数多くの季節労働者の方々が、わが国の遠隔地に貢献を果たしており、貴重な技能を習得しながら、重要な産業を支えてくれています。

こうした絆の深さを如実に示す例のひとつとして、太平洋諸国の兄弟や姉妹の方々が、ブラックサマーと呼ばれた森林火災や、より最近の壊滅的な洪水被害において、いかにオーストラリアを助けてくれたのかという点が挙げられます。

これは私たちのふるまいが、家族と変わりないことを示しています。

良い時も悪い時も、私たちはお互いを助け合います。

今週私がここへ来たのも、オーストラリア新政権、特にアルバニージー首相に代わって、皆様に対するコミットメントを明確にしたかったためです。それは、私たちの太平洋ファミリーをより強固にするために、皆様と協働するということです。

私たちは耳を傾けます。

私たちは、皆様の意見を聞きます。共有する課題にどう立ち向かい、共有する願いをいかに共に実現させるのかについての考えを傾聴します。

私はオーストラリアの初代気候担当大臣として、排出量を削減し、経済を抜本的に変える真摯な行動を起こすという、共有された重要性を認識しています。

太平洋地域の安全と経済において、これほど肝要な点はありません。

気候変動は抽象的な脅威ではなく、存続に関わる脅威であるのを理解しています。

2018年に出された、太平洋諸島フォーラムの地域安全保障に関するボエ宣言にある一節は、ここで繰り返す価値のある内容です。

“気候変動は太平洋地域の人々の暮らしや安全、幸福において、群を抜いて最大の脅威であり続けると、我々は断言する。”

皆様はこの点を、長いこと言い続けています。太平洋地域の首脳たちは、十年以上前、私が気候担当大臣を務めていた時もこのように説明していました。

皆様の姿勢は明白で、一貫しています。そして世界的議論を主導してきました。

オーストラリアは過去の政権において、気候変動に対する行動の責任を怠ってきました。

太平洋ファミリーによる行動の要請を、無視してきたのです。

存続に関わる脅威に適応しようと奮闘する、太平洋諸国への敬意を欠いていました。

太平洋島嶼国における海面の上昇であれ、オーストラリアにおける悲惨な森林火災や壊滅的な洪水被害であれ、気候変動は太平洋ファミリーのいる全域で発生しています。

皆様の声は私たちに届いていると、お伝えしたいのです。

先週末の選挙が示したように、オーストラリア国民は気候変動における行動の大切さを理解しています。

気候変動がもたらす危機が、オーストラリア国民の主な懸念のひとつとして、大きく浮かび上がりました。

オーストラリアでは、気候危機に真の行動を取ることへの支持が大きく高まっています。

新政権は、その実現に強くコミットしています。

アルバニージ—政権は、2030年までに炭素排出量を43パーセント削減し、2050年までに排出量実質ゼロを達成する公約の下、選ばれました。

私たちは、これを言うだけではありません。この内容を法制化し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に、新たな国が決定する貢献(NDC)を間もなく提出します。

私たちは低炭素経済への移行にコミットし、よりクリーンで廉価なエネルギーを目指します。

私たちの計画では、オーストラリアの全国エネルギー市場における再生可能エネルギーの割合を、2030年までに82パーセントに高めます。

これは再生可能エネルギーを増やし、雇用を創出すると共に、排出量を削減する計画です。

私たちは、国内における気候変動をめぐる戦いを終結させます。

このオーストラリア政府は、これまでと違います。

この危機への対応において、太平洋ファミリーと協力し合います。

私たちは国民のため、次世代のため、これまでにない程、力を合わせる必要があるのを認識しています。

このような理由から、私たちは太平洋諸国や東ティモールで、気候関連のインフラ及びエネルギー事業を支援するためのオーストラリア太平洋気候インフラ・パートナーシップを発表しました。

私たちが気候変動において、国際リーダーの地位を取り戻そうと努めるのはこのためです。

私たちは、オーストラリア気候変動大使の役職を復活させます。

また、今後の気候変動枠組条約締約国会議を、太平洋島嶼国と共同で開催する案を提示しました。

本案について、域内で将来話し合うのを楽しみにしています。

兄弟、姉妹の皆様−私たちの地域は数十年間、これ程までに厄介な一連の状況に直面したことはありません。

気候と新型コロナウィルス、戦略的競争という3つの課題が、新しい形で私たちに挑戦を挑むでしょう。

太平洋ファミリーのどの国の安全も、地域全体の安全にかかっているのを、私たちは理解しています。

現在、将来の地域の利益を守るべく、こうした課題に向き合うにあたって、私たちには集団的責任があります。

こうした課題に対して共に舵取りを行うために、こうした世代の太平洋地域の首脳と協働し、彼らの声を聞くことに力を注ぎます。

オーストラリアは今後も、太平洋ファミリーにとって大切な開発面でのパートナーであり続けるでしょう。

私たちはひも付きの支援を行わない、持続不可能な財政的負担を課さないパートナーです。

太平洋地域の優先事項や体制を侵食しないパートナーです。

その代わり、私たちは透明性を信じます。

真のパートナーシップを信じます。

太平洋地域の優先事項や地域の体制を尊重します。

私たちは、成長や持続的な開発を支援します。

太平洋地域の長期的安定と安全に貢献します。

オーストラリアに暮らす太平洋地域の労働者にとっての機会を拡大し、彼らの労働条件を改善します。

私たちは、防衛・海洋協力を深めます。

質の高い、気候変動に対して強靭なインフラを提供します。

私たちは今後4年間で、太平洋地域へのオーストラリアの国際開発援助を5.25億豪ドル増額し、新型コロナからの復興に皆様と共に取り組みます。

復興や経済の発展において、太平洋地域の女性には、果たすべき大きな役割があると認識しています。

私たちが女性の参加への障壁を取り払い、国民の生活において皆が平等になる時、社会も経済も地域社会も、より機能します。

太平洋島嶼国が今後も、新型コロナという課題からの復興の道筋を描く中、女性は地位や社会参加、教育、安全の面を含め、こうした回復の重要な役割を担うでしょう。

私たちは常に、太平洋ファミリーと連携した取り組みを行おうとするでしょう。

こうした連携の一環として、地域の人々に対し、オーストラリアの真の姿を伝えていきます。

現代のオーストラリアには、未だ活用されていない広大な力が存在します。

世界は多文化で構成されており、私たちも同様です。

オーストラリア国民の先祖をたどると、少なくとも270もの異なる出自に辿り着きます。

オーストラリア国民の半数近くは海外で生まれたか、あるいは少なくても片方の親が海外で生まれています。

私たちはこのため、世界の隅々にまで届く力を有しており、どこででも“私たちには共通の土壌がある”と言えるわけです。

私は外務大臣として、オーストラリアの全体の姿や現代の多様性、先住民の人々の豊かな遺産を伝えていきます。

誇らしいことに、オーストラリアには、地球に現存する最も古い文化が存在します。

2017年に出された「心からのウルル声明」は、先住民の人々から全オーストラリア国民に、和解への道筋で次の段階に進むことを提案する寛容な申し出でした。

アルバニージ—政権は、Voice(先住民の議会発言権を認めるための憲法改正)、Treaty(条約の制定)、Truth(真実追求のための委員会設置)を含む、ウルル声明の完全な履行にコミットしています。

私たちは現政権において、議会での発言権を先住民の人々に与えることを憲法に記載するための行動を起こします。

これは、ケビン・ラッド元首相のかつての功績を土台としています。元首相は2008年の労働党政権時、盗まれた世代の人々についに公式に謝罪しました。

私の外務大臣職においても、外交政策に先住民政策を組み入れます。

外務貿易省にできる新しい部署を率いる、初代オーストラリア先住民大使を任命します。

他の様々な分野においても、私たちは国内外において、先住民の人々の役割や地位の強化に取り組みます。

オーストラリアの放送番組やメディア・コンテンツの充実を通じて、地域において私たちの声が共有され、現代のオーストラリアの姿が反映されるよう、より一層の努力を行います。

また太平洋全域で、メディア・トレーニングや能力育成への支援を高めます。

太平洋諸島の人々は数世代にわたり、オーストラリア文化の発展や形成に関わってきました。

私たちは、太平洋出身の人々がオーストラリアにもたらした貢献を歓迎しています。

こうしたつながりを、引き続き発展させる方法に目を向けたいと思います。

オーストラリアはより多くのことを、これまでと違った形で行っていきます。

オーストラリアに働きに来る太平洋諸島の人々が公平に、より良い条件で働けるようにします。

こうした働き手が、家族を連れて来れるようにします。

また毎年3,000名の太平洋出身の人々に、永住権への道筋を提供できるよう、太平洋エンゲージメント・ビザを創設します。

しかしつまるところ、太平洋ファミリーとの関係は、一連の措置のようなものではありません。金額や覚書に置き換えるのは不可能です。

遥かにそれ以上のものです。

私たちの地理的条件や近さが、変わることはありません。私たちの将来が、互いにつながっている事実についても同様です。

ここフィジ—における、寛大なホストの皆様にお伝えします。Vinaka – 次世代を代表して、気候分野でリーダーシップを発揮していただき、感謝申し上げます。

私たちは今後も共に、両国間のブバレ・パートナーシップの強化に努めます。

また実に多くのオーストラリア国民が、第二の故郷と捉えているフィジーにようやく戻れることを嬉しく思います。

太平洋諸島フォーラム・チームの皆様へ。Vinaka – 本日お招きいただき、有難うございます。このフォーラムは、太平洋ファミリーがその全ての力と多様性において、ひとつの声で世界に語りかけるために集まる場所です。

太平洋地域の団結は、より強い地域を生み出します。

数週間後のフォーラム開催を期待しています。アルバニージ—首相も首脳会議に耳を傾け、前向きの貢献を果たすのを楽しみにしています。

私は本日この機会を通じ、太平洋ファミリーの強化において、応分の役割を果たすことに力を入れていく点を強調したいと強く願っていました。

その中心にあるのが、気候変動における行動です。

そしてお伝えしたように、私たちはルールや主権が尊重される安定、繁栄した地域の構築という共通の利益を実現させるために、私たちの関係のあらゆる要素を活用していくつもりです。

太平洋ファミリーの仲間として、私たちの安全と繁栄は共になし得るか、もしくは実現不可能のいずれかです。

他のファミリーと同様、私たちは傾聴し、お互いの懸念を理解し、協調して行動を起こす時に成功を収めるでしょう。

有難うございました。