メディア・アートを取り巻く環境がこれほどエキサイティングである国は、他にないでしょう。というのもこれはデジタル技術の創造的可能性を実現し、これまで別々に存在していたアートの形態を新たな形でひとつにまとめたからです。
オーストラリアのメディア・アーティストは様々なアートの形態をひとつにしただけでなく、産業や科学技術との豊かなコラボレーションを実現しています。また新しい技術の魅惑的な側面とその危険性、あいまいさについて特にアイデンティティーや監視、環境の視点から声高に発言しています。
ハイブリット・アート(マルチ・プラットフォームとも呼ばれる)とは、異なるアートの形態を組み合わせたもので、インスタレーションやパフォーマンスにおいて最もよく見られます。ハイブリット・アートは必ずしもデジタル技術を前提とするわけではなく、デジタル技術によってマルチメディア的要素が促進されるという程度にすぎません。
最も面白いオーストラリアのハイブリッド・アート作品の中には、その可能性をさらに試し、押し広げようとするものもあります。'メディア・アート'という言葉はしたがってデジタル・アートとハイブリット・アートを含む他、実にさまざまな範囲の作品や形態、経験を網羅します。これらに共通する、また'ニュー'という言葉を現在進行形にする要素とは、アーティスト及び観客両方における冒険の精神や可能性の広がりなのです。
オーストラリアは、パトリシア・ピッチニーニ、SymbioticA、ジェフリー・ショ−、トロイ・イノセント、ステラークなど、メディア・アート分野で、多くの一流アーティ ストを生んでいます。
近年日本に紹介されたオーストラリアのメディアアートには以下のものがあります。
2014年 タリン・ギル&ピラー・マタ・デュポンが2014年恵比寿映像祭「TRUE COLORS」に出品
レニ・リーフェンシュタールによるベルリン・オリンピックの記録映画『オリンピア』を参照点に、統率されたチアリーディングを中心に描いた「エヴァー・ハイヤー」と、誇張された肉体美を集めた「ギムナジウム」の2作 品を展示しました。
http://www.yebizo.com/jp/14/archive/#pg_ex13

Tarryn Gill and Pilar Mata Dupont, Ever Higher, 2011, Film Still, Duration 11:03mins, Image courtesy of the Artists and Goddard de Fiddes Gallery
2014年 ICC「オープン・スペース 2014」展 オーストラリア出身メディア・アーティスト ジェフリー・ショーが参加
出品作「レジブル・シティ」1988-91年はメディア・アート黎明期に制作され、インタラクティヴ・アートの代表作としてよく知られています。スク リーンに映しだされたマンハッタン、アムステルダム、カールスルーエの街を自転車で自由に移動することができ、鑑賞者が自転車をこぐと、建物の代わりに配置された文字が次々に並置され、また混ぜ合わされていくものです。
http://www.ntticc.or.jp/Press/2014/5/0509_02_j.html

ジェフリー・ショー 《レジブル・シティ》 1988-91 ZKM コレクション © Jeffrey SHAW
2013年 アンジェリカ・メシティがあいちトリエンナーレ2013に参加
「あいちトリエンナーレ2013では、名古屋市を流れる堀川沿いのまちなかにて、オーストラリア・シドニー出身の若手アーティスト、アンジェリカ・メシティのビデオインスタレーション作品が展開されました。

2011年 スーザン・ノリーが ヨコハマトリエンナーレ2011に参加
ヨコハマトリエンナーレ2011にオーストラリアからは、絵画からそのキャリアをスタートさせ、現在は映像作品で注目を浴びるスーザン・ノリーが 参加しました。シドニーを拠点に活動を続ける彼女が出品した「TRANSIT」(2011)は、平和利用としての宇宙開発を進めてきた日本の宇宙産業 と自然との対比に着目した作品です。種子島でのロケット発射と桜島の噴火の映像を組み合わせ、人間の英知と、その英知をもってしても超越できない自然の力という、極めて今日的なテーマを探求した作品です。
2010年 豪日メディアアートミーティングが開催
Australian Centre for the Moving Imageの協力により、3名のオーストラリアのアーティストと日本のメディアアートの関係者がワークショップやシンポジウムを通じて交流しました。
2009年 ステラークとTissue Culture and Art Project ( SymbioticA) が森美術館の「医学と芸術」展に出品
本展に、オーストラリアから、自らを実験台として最先端のテクノロジーと身体の融合に挑戦し続けるパフォーマンス・アーティストのステラーク、そして組織培養技術をそのままアート表現として利用し、賛否両 論の大議論を巻き起こしている Tissue Culture and Art Project (SymbioticA) の作品が紹介されました。
http://www.mori.art.museum/contents/medicine/

