Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

マルコム・ターンブル首相 習志野演習場での挨拶

マルコム・ターンブル首相

 

2018年01月18日

陸上自衛隊・習志野演習場

 

トピック:自由貿易とTPP、共同運用及び訓練を円滑化するための協定、レックス・ティラソン米国国務長官発言、南シナ海

 

首相:何という美しい一日であり、何という見事な日本・陸上自衛隊による装備力の披露でしょうか。これは安全と繁栄がいかに密接に関係し合い、補強し合うのかを見事に示すものです。ここにオーストラリアの技術の優れた見本である、輸送防護車ブッシュマスターがあります。オーストラリア国防産業からここ日本に、またもちろん、他の多くの国々にも輸出されています。

これらの輸送防護車ブッシュマスターは当然、イラクやアフガニスタンに一千両以上配備されました。タレス・オーストラリアの代表によれば、100両が簡易爆弾(IED)による攻撃に巻き込まれたのに、死者は出ていないそうです。命を救う防護車であり、オーストラリアの技術、オーストラリアの専門技能です。これらが調達され、現在ここ日本で、陸上自衛隊により使用されているのは素晴らしいことです。

私たちはもちろん、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)発射システムをここで視察しました。このように2種類の防衛装備品が続けて披露されると、私たちの地域の安定と安全への、ふたつの大きな脅威を思い起こさない訳にはいきません。ひとつはテロ行為であり、もう一方は言わずもがな、北朝鮮のならず者政権です。これは、日本による弾道ミサイル攻撃から身を守るための行動からも明白です。

無論、私たちは開かれた市場や自由貿易がもたらす繁栄に焦点を当てています。この地域のルールを基盤とした秩序に基づく、開かれた市場や自由貿易に、安倍首相と私はコミットしています。これは言うまでもなく、安全に支えられています。

さて、私たちは環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に取り組んでいます。米国が政権交代後に脱退した際、私たちは明らかに失望しました。そして現在はもちろん米国抜きで、3月までのTPP署名に向けて取り組んでいます。自由貿易や開かれた市場が重要なのは明白です。ブッシュマスターは良い例です。オーストラリアの専門技能や技術、あるいは無論、日本を始め、この地域への主力輸出品であり続けるエネルギーや資源、一次産品も同様です。オーストラリアは言うまでもなく、日本のエネルギー需要における最大の供給国となっています。

ここで認めておきたいもうひとつの重要な点は、私たちがより緊密な協力を行うことで、地域の安全はより高まり、こうしたすべてが私たちの繁栄の基盤であるということです。この点から安倍首相に、また優れた特別作戦能力をこうした見事な形で見せて下さり、ご歓迎下さった小野寺防衛大臣、防衛政務官、自衛隊将官の方々に感謝申し上げます。こうした能力は、オーストラリア特殊部隊との共同訓練・演習により培われたと、皆様は語って下さいました。このような協力が将来深まり、継続されていくよう期待しています。

より国内に関する話題ですが、皆様ご承知のように、また常々申し上げているように、自由貿易や開かれた市場、輸出は雇用を生み出します。本日発表された雇用の数は、素晴らしいものです! 12月の新規雇用数は3.47万人、昨年全体では、新たに40.3万人の雇用が創出されました。

これはこれまでで最長、1978年以降における月間の雇用者数増加連続記録として、過去最高に並ぶものです。

労働参加率はこの7年間で最も高く、消費者景況感は2013年11月以降、すでに最も高い水準にあります。

つまり2016年のスローガンであった雇用と成長において、今年大きな成果が生まれています。

 

記者:本日の演習場視察や、首相が日本との署名を望む新しい防衛協定は、どのような点を示唆するとお考えですか? 北朝鮮に対しては、どのようなメッセージとなりますか?

 

首相:北朝鮮に対しては、強力な経済制裁を今後も課していく上で、オーストラリアと日本、米国、中国、さらにこれ以外の国際社会は、明らかに結束している点を伝えるものです。こうした制裁は維持されなくてはなりません。これこそが、この無謀なならず者政権を正気に立ち返らせる唯一の方法です。この点に関し、安倍首相と私は全く同じ考えです。

 

記者:日本が北朝鮮の攻撃にさらされた場合、オーストラリアは援護しますか?

 

首相:今のは明らかに仮定に基づく質問であり、これに答えることはできません。

米国との間にはANZUS条約があり、太平洋地域で攻撃を受けた場合、お互いが相手国を援護することになっています。しかしお分かりのように、オーストラリアと日本、米国は非常に緊密な協力を行っており、共に行動することは大切になります。

 

記者:首相、北朝鮮が非核化の交渉の席につかない限り、軍事行動を取るというレックス・ティラソン米国国務長官の評価に同意しますか?

 

首相:今のが、ティラソン国務長官が言った通りの内容とは思えません。彼が言っていたのは、これは私も同意しますが、軍事オプションを俎上に引き続き載せておくべきだということです。長官はまた、制裁による経済的圧力は維持されるべきであり、北朝鮮によるある種の小康状態を、彼らがふるまいを変える兆しと受け止めるべきではないと発言しています。

目指すべきは、朝鮮半島の非核化です。このことは明らかに、南北朝鮮の人々を筆頭に、地域のあらゆる人々のためになります。これが目標であるべきで、現在の体制がこうした方向に真に動いた時、交渉が本格的に始まるのだと思います。こうした点においては、ティラソン長官の発言に賛成します。

 

記者:(聞き取り不能)

 

首相:待って下さい、まずこちらの方、次はそちらの方でお願いします。

 

記者:その点に関して、南北朝鮮が平昌五輪で合同行進を行う決定をどう思われますか? 正しい方向だと思われますか?

 

首相:合同行進は以前にもありました。スポーツの分野で人々がひとつになるのは、もちろんいつでも歓迎します。しかしこの点については、しっかりと見定めなくてはなりません。これは私たちによる理論化ではありませんが、歴史が教えるのは、北朝鮮についての非常に苦い経験です。彼らは長いこと、軍事化を進めた後はしばらく休んで、北朝鮮が態度を変えると期待する人々を納得させようとし、その一方で何も変更せず、再び軍事化にひた走るといったことを行ってきました。

私たちは、こうした強い経済制裁の圧力を維持する必要があります。こうした制裁は無論、中国を含めた国際社会により支持され、実施されています。

 

記者:それでは首相、五輪のような件で北朝鮮に譲歩することが、非核化の交渉につながるといった考え方は甘いでしょうか?

 

首相:北朝鮮の冬季五輪参加が、朝鮮半島の非核化につながると考える人はいないと思います。

 

記者:(聞き取り不能)

 

首相:待って下さい、こちらの方、次がそちらの方で質問をお受けします。

 

記者:訪問部隊地位協定(VFA)についてですが…

 

首相:共同運用及び訓練を円滑化するための協定ですね。

 

記者:これが日豪間で将来、安全保障同盟につながる可能性はありますか?

 

首相:この件についても、理論化するつもりはありません。両国には緊密な交流があり、明らかに共同運用及び訓練を円滑化する協定の合意を目指しています。これは複雑な事項で、両国の事務方が現在取り組んでいます。本日語られた、また私たちが本日説明の一環として見せてもらった内容の共同訓練を促すことは大切で、この協定はそのためのものです。もちろん、日本の自衛隊とオーストラリア国防軍は共同訓練を通じて、お互いから学び、両国民の安全を保つ任務をより良く行うことができます。

 

記者:こうしたより緊密なつながりが北朝鮮に送るメッセージについて、首相は言及されましたが、日豪関係が中国、特に南シナ海での中国の進出に対して送るメッセージはどうですか?

 

首相:南シナ海における私たちの立場は無論中国を含め、地域の皆によく知られ、理解されています。端的に言えば、関係国は南シナ海において、軍事拠点化のための措置を講じるべきではないというものです。紛争は国際法にのっとり、交渉により解決されるべきです。

 

この点に関しては、真の進展がいくつかあったのをお伝えしたいと思います。最近の東アジア首脳会議で、南シナ海での行動規範の完成に向けた、さらなる前向きの進展がありました。このためこうした課題の解決には、数年前より楽観的になっています。あとひとつ質問をお受けします。

記者:首相、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定についてはどうですか?

 

首相:はい。

 

記者:3月までにTPPをとのことですが、これはつまりカナダが交渉に復帰する一方、メキシコが神経質になる事態はないということですか? 3月までに実現の見込みであると自信をお持ちの点について、詳しく教えて下さい。

 

首相:3月にチリで貿易大臣会合が開かれる予定であり、それまでのTPP合意と締結を目指しています。もちろんご承知のように、貿易交渉には常に時間がかかります。最終地点に着くまでは、山あり谷ありです。しかし、安倍首相と私はこの点に強くコミットしています。限りある中で、私たちは合意に至るべくあらゆる説得術を駆使しています。

これは明らかに、オーストラリアと日本の国益になります。率直に申し上げて、私の使命はオーストラリア国民のために優れた仕事、より良い仕事、より給与の高い仕事、及び国民が事業を始めたり、成長させたりできるようなより良い機会、より多くの機会を確保することです。

雇用と成長は首相の責務であり、貿易はその主要な部分を占めます。

オーストラリアの雇用情勢が良い理由のひとつに、地域において大きな機会が開かれている点が挙げられます。日本は巨大な市場です。日豪EPAは発効から3年が経過し、日本とオーストラリアの両方に大きな成果をもたらしています。オーストラリア国民にとって優れた結果となるため、こうした点をさらに行いたいと思います。

会見を終える前に、あとひとつ質問をお受けします。

 

記者:首相、日本とオーストラリアは、米国が太平洋やアジア地域に強く関与するよう求めています。トランプ政権の誕生から一年が経った今、首相と米国との関係、またオーストラリアと米国との関係をどのように表現されますか? 首相や安倍首相は、米国のこの地域に対するコミットメントに満足されていますか?

 

首相:米国による地域へのコミットメントは、これまでと同様に強力なものです。これは石のように堅固です。昨年末にトランプ大統領が行った、アジアへの長い歴訪からも明白です。私自身も無論、ベトナムとマニラで大統領にお会いしました。

こうした事実は米国による地域への大変強いコミットメントを、非常に具体的に示すものでした。このコミットメントは40年かそれ以上にわたり、地域におけるこの繁栄のすべてを可能にしてきた基盤、安全保障における基盤において重要な位置を占めています。

私たちは世界のこの地域が目覚ましい成長を遂げ、何億もの人々が貧困から脱出するのを見てきました。これは、米国の強力なプレゼンスに支えられた、この地域の相対的な平和や安定なしに実現しなかったでしょう。

こうした関与が将来も続くことを確信していますし、地域へのコミットメントに関して、トランプ大統領は揺るぎない立場を取っています。

 

皆さん、本当にどうも有難うございました。