Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

スコット・モリソン首相 2019年ローウィ―研究所特別講演

 

2019年10月3日

 

オーストラリアの国益

ガディガル族の皆様、現役及び退役軍人である皆様、

マーガレット・ビーズリー ニュー・サウス・ウェールズ州総督、並びにデニス・ウィルソン様、

ジョン・ハワード第25代オーストラリア首相、

ローウィ—研究所会長のフランク・ローウィー卿、

マイケル・フリラブ同研究所エグゼクティブ・ディレクター、

同僚、友人である皆様、ご列席の皆様

 

はじめに

偉大なるオーストラリア国民である、フランク・ローウィ—卿の姓を冠する本講演でお話できることを光栄に思います。

ローウィ—卿のお名前は、オーストラリアでいかなることが可能であるのかを思い起こさせます。

ローウィ—卿は何もないところから、海の遥か彼方まで及ぶオーストラリアの帝国を築き上げました。

つまるところ、ローウィ—卿のお名前と彼の人生は、私たちの内部に絶えず品格として存在するものこそ、引き継がれるべき最も大切な宝である点を教えてくれます。

今宵、私たちがこうした品格を有するのは、あなたのお父様のおかげです。

お父様は(ナチスの強制収容所があった)ビルケナウで、ユダヤ教の肩衣とテフィリン(ヘブライ語聖書の文言を入れた小箱)を手放さなかったため、苦しみの中、命を落とされました。

何という品格であり、信念でありましょうか。こうした例がある故に、ご子息はわが国にとって大切な存在となられたのです。

ローウィ—卿の少年時代は、ホロコーストのため暗いものでしたが、その眼差しは常に、未来の希望に向け毅然と輝いていました。

ローウィ—卿は昨年、本講演において「私たちの恵みのリストは、長く続く。」「世界的な出来事に影響をもたらし、そこから恩恵を受ける上で、オーストラリアはかつてない程より良い立場にある。」と発言されました。

私も同感です。

今夜、ローウィ—卿の姓を冠したこの講演会で、首相としてお話できることは大変な名誉です。

 

新たな時代の始まり

私の政治家としての本能や情熱は、絶えず国内に向けられてきました。

昨年の活動を別にすれば、私は首脳会談や国際的な場を自ずから指向する方ではありません。しかし首相というものは常に、国益に導かれなくてはなりません。

歴代の首相の時代と同様、オーストラリアの未来の多くは現在、国境の向こうの出来事や関係により形作られています。

私たちの暮らしや安全、主権に影響を及ぼすこうした出来事に対し、オーストラリアは無関心な傍観者でいられません。

これまでと同様、私たちは敢えて国益を守り、促進するために、自らの影響力を育み、結集させ、これを提示しなくてはなりません。

今夜はオーストラリアが直面する新しい、課題に満ちた世界についてご説明します。またこうした課題に対して、現在の政府がどう対応しているのかをお伝えします。

 

移行期の世界

ご来場の皆様、私たちは今、米国のヘンリー・ポールソン元財務長官が「いつになく微妙な時代」と形容するような、移行期の世界に暮らしています。

新しい経済的、政治的秩序は、まだ形を整えている段階です。

私たちは戦略的競争の新時代に突入しています。これは現代のより多極化が進んだ世界、グローバル化した経済において国家の力関係が変化している中での、自然な成り行きと言えます。

また破壊的技術の時代であり、歓迎すべき点と、腹立たしい、恐るべき点が混在しています。

さらに、かつてない規模で世界のサプライチェーンの統合が進む時代であり、米国や中国、日本、ヨーロッパなどの主要経済を含め、より多くの国がこれまで以上に世界貿易に頼るようになっています。

自動化や人工知能(AI)は有望であると共に、脅威でもあります。

私自身は誇張だと感じますが、技術による分断、つまり経済において、ある種の鉄のカーテンによる分断への恐怖が存在します。

同時に、テロやイスラム過激派、反ユダヤ主義、白人至上主義、地域・世界規模の悪による安全保障上の脅威が、引き続き存在する時代でもあります。

主権国家の協力を基盤とした国際社会による具体的な関与は、国家政策を導くための国家の権威よりも、国際的な枠組みを重視しようとする新種のグローバリズムから、挑戦を受けています。

さらに、社会の亀裂や異なる社会間における、新たな二極化の問題からも挑戦を受けています。

またエリート層の意見や態度が度々、社会の主流をなす人々と接点を失う結果、怒りや失望が顕在化しやすい時代ともいえます。

部内者と部外者の時代、社会的結束が脅かされ、不満や不信感が引き起こされる時代です。

直接であれ間接であれ、こうした変化はオーストラリアに影響を及ぼします。

仕事に関して、私たちの収入や生活水準、暮らしに欠かせないサービスは、しっかりした予算や強力な経済に依存しています。

環境に関して、海洋や海岸、放牧・牧草地、水資源、土は、私たちの具体的な保全への営みにかかっています。

身辺の安全については、同盟関係や防衛・外交・情報力、法の支配の遵守や法の執行力に支えられた国家の安全に頼っています。

また自由については、国家主権の重視や強靭な制度、外国の干渉からの防御に負うところが大きくなっています。

 

重要な文脈と捉え方

不確実性への対処は、新しいものではありません。

子供たちが世界的緊張や破壊の時代の中、大人になっていくのは、これが最初ではありません。世界的課題に関する現代の議論において、私があまりにも抜け落ちていると危惧するのは、こうした文脈や捉え方です。

私の世代は、核によるハルマゲドンの脅威の下で育ち、スティングの言葉を借りれば「ロシア人も自分たちの子供を愛してほしい」と望みました。

両親の世代は、ホロコーストや当時オーストラリアの領土だったニューギニアへの侵略、ダーウィンの爆撃、シドニー湾での日本の潜航艇による艦船の撃破など、世界史上最大の戦いのさなかに育ちました。

祖父母の世代は、あらゆる戦争を止めようという戦いの中で育ちました。5百万人に満たない人口のうち、6万人のオーストラリア国民が殺されため、あらゆる隣人がその対価を理解していたのです。さらに中東や太平洋での自由を守る戦いを支援する前は、世界恐慌に耐えねばなりませんでした。

様々な世代の人々がその時代の課題を認め、今日一部に見られるような道徳的混乱や危機感を煽る不安ではなく、現実的な粘り強さや楽観主義、決意をもって対応にあたっていました。

オーストラリアはいかなる局面においても、見方や価値を共有する相手と協力して、世のためとなる役割を果たしてきました。

発展の鍵を握っていたのは、啓発された利己心を持って行動する、志を同じくする個々の主権国家でした。

マーシャルプランが良い例です。

日本の復興もそうです。

コロンボ計画もこれに該当します。

協力的で、お互いを尊重する国際主義です。

こうした努力は時に、国際的な枠組みを通じて培われました。このような枠組みを作った国々に仕えるために、設立されたのです。

また時には、より緩やかなパートナー連合による取り組みが図られました。

多くは米国の主導でしたが、いかなる場合でも、複数の国家による原則に基づいた行動こそが、西洋の民主主義国家を団結させていました。

さらにいずれの場合の行動を見ても、こうした社会の基盤となる共通の価値観によって支えられていました。

最近、国連総会でもお伝えしましたが、こうした価値観の共有こそが、平和や安定、繁栄をもたらし、人の精神が育つ上で欠かせない自由を拡大させるべく、空白を埋めてきました。

こうした功績が永久に続くものと自惚れたり、安心するようではいけません。限りなく、警戒を続けていく必要があります。

不確実な現代世界でこれらの遺産を保つには、前の世代と同様の楽観主義や自信、決意を持って、また私たちを絶えず導いてくれた価値観や信念へのコミットメントを通じて、将来に向き合わなくてはなりません。

 

国益における戦略

こうした課題に取り組む上での、オーストラリア政府の手法は明快です。

自分たちが何者で、何を標榜するのかを理解し、これに従って、国際的な枠組みを含めた国際協力への建設的な関与や、何を期待すべきかを決めていきます。そして国益を最優先させます。

強力で開かれた、世界の繁栄につながった国内経済を構築します。これにより、国益の保護と追求を図ります。

自分たちが暮らし、働くのがいかなる場所であるのかを理解します。地域の覇権に基づく脅威の可能性に国として対抗する手段として、主権や独立といった共有の利益を強く支持することで、地域における安定や繁栄、関与を推進するためです。

最も大切な同盟国である米国、包括的な戦略パートナーである中国との独自の関係を正しく維持します。このために両国の戦略的競争といった二極化された物語を拒み、その代わりに密接なつながりという平和的なメリットを重んじると共に育みます。

 

自己の理解による安全の確保

自分たちが何者で、何を強く支持しているのかを理解することは、これまでと同様、今日でも正しい行為です。

今後も明白な目的と持続的な価値観を持って、国際的関与を行います。

思想と表現の自由、精神と信仰の自由、奪うことのできない人権等、人間らしさへの自由。

交流の自由、自由で開かれた市場、資本や発想の自由な流れ、

抑圧や強制からの自由、選択自由、

これらほど重要なものはありません。

しかしこうした要素は、対立する世界観という直接の課題だけでなく、自由や繁栄を自由民主主義的な価値に負っている、西洋社会の慢心さによって脅かされています。

オーストラリアは世界的課題に対処する上で、責任ある参加型の国際機関を絶えず求めています。また、そうでなくてはなりません。これは、前向きで現実的なグローバリズムです。オーストラリアの国益を、孤立主義や保護主義で叶えることはできません。

 

国際機関が世界的課題に対処するための独立した協力でなく、調和を求めるようなら、わが国の国益とはなりません

 

独立した国家の個性や独自性が、お互いへの敬意という枠組みの中で維持される時、国際社会は最も機能します。これには、各国の選挙民が議会に与える権限も含まれます。

国境のない、時に不明瞭な国際社会からのマンデートを、無理に強いるような否定的なグローバリズムに反応することは、これがいかなるものであれ避けるべきです。さらにもっと悪いのは、説明責任のない国際的な官僚主義です。

グローバリズムは管理や権力の集中でなく、促進や整合、関与のためのものでなければなりません。前者のようなやり方は、国際的な協調行動に対する支援をむしばみます。

中央政府、特に選挙で選ばれた、法の支配に基づく説明責任を果たす政府だけが、国益を定めることができます。オーストラリア国民より高い権威に対して、答えることは不可能です。

私の指揮下において、オーストラリアの国際的関与は、まさに国益を下に決定されるでしょう。

ジョン・ハワード元首相の主張に沿って言うならば、私たちはオーストラリア国民として、“国益やそれを追求する環境を決めていくのです”。

これは世界の平和や安定を支持したり、公正で透明なルールを下に、開かれた市場を促進するような国際的努力だけに止まりません。商業や投資、交流を支える他のグローバル・スタンダードにも該当します。

グローバル・スタンダードの設定という点で、私たちは可能な限りの関与を行ってきたわけではありません。

世界経済を形作るこうしたスタンダードの確立を、他国に任せるわけにはいきません。

オーストラリアを世界標準の確立に、より積極的に関わらせたいと強く思います。

外務貿易省には、わが国に最も重要な国際的枠組みやルール決定のプロセスについて、包括的な調査を行い、その結果を報告するよう命じました。

今夜ここで、私たちは努力の一環として、オーストラリアの専門知識の活用を考えていくことをご報告したいと思います。

 

経済力による安全の確保

ご来場の皆様、オーストラリアにとって、活発で信頼できる国際的関与の基盤は強力な国内経済です。

強い経済なくして、国民の生活水準を守ることはできません。

強い経済なくして、国民の安全を守り、環境を保護・保全することはできません。国民が頼りにする基本的なサービスを保証したり、国防や国際秩序に対して投資したりすることは不可能です。

このような理由から、予算の赤字解消やその維持は非常に大切です。

強力な予算はオーストラリアにとり、不確実な世界における主権の礎です。

わが国は全ての主要格付け機関から、トリプルA格付けを付与されている10か国のひとつです。

同時に、わが国は歴史上、最も野心的な貿易戦略を追求しています。オーストラリアにおける雇用の5つにひとつが、今や貿易に依存しています。

わが国は主要貿易相手国20か国のうち、17カ国との間で貿易協定をまとめているか、あるいは現在交渉中です。

私たちは、欧州連合とも協定に向けた歩みを進めています。

英国の準備が整えばすぐにも、貿易協定の締結へと迅速に動く用意があります。英国は欧州連合の離脱後、重要なパートナーになると共に、ルールに基づく貿易制度や自由で開かれた貿易の効用を強く訴えるでしょう。

オーストラリアはこの6年間で、わが国の輸出業者が、新たに17憶人の消費者に無税あるいは特恵関税で産品を提供できるよう、取り計らってきました。

わが国の往復貿易の70パーセントは現在、貿易協定の下で取引されています。この割合は、連立内閣が発足した2013年、26パーセントに過ぎませんでした。

今日の貿易データによると、月間の貿易収支は、この45年間で再び最長の連続黒字を達成しています。また、1975年以来初の経常黒字が実現されています。

オーストラリアは、世界貿易制度の再活性化と近代化に努めています。電子商取引の変化のスピードに追いつくと共に、デジタル経済の機会を活用できるようにするためです。

国内では税率を引き下げ、過度の規制による負担を取り除く一方、経済が拡大する中、求められる技能の変化に合わせて、遅れていた職業訓練部門の構造改革に立ち上がっています。私たちは経済の成長に欠かせない輸送やエネルギー、水関連のインフラ整備に取り組んでいます。

これらはすべて、経済を強化するために実施している総合的な全国経済計画の一環です。

 

パートナーシップや同盟による安全の確保

ご来場の皆様、私たちの世界への取り組みは言うまでもなく、私たちが暮らす地域を基盤としています。

オーストラリアはインド太平洋国家です。

私たちは独立や主権、強靭性を有する国家で構成される、安全で繁栄した、包摂的なインド太平洋地域の構築に一役買っています。

わが国は、太平洋ステップ・アップの取り組みに着手しました。

わが国と太平洋諸国の国家安全保障は、密接に絡み合っています。

これは経済の安定や繁栄を支え、安全や弾力性を高める現実的なパートナーシップです。

一方地域の他の国々との関係も、非常に良い状態にあります。

インドネシアとは画期的な経済連携協定を締結しており、施行のための法案の来週提出を目指しています。

今月末、再選を果たしたウィドド大統領の就任式出席を楽しみにしています。

8月には、地域において真に重要な国である、ベトナムとの関係をさらに強化しました。

昨年、共通の戦略的利益やさらなる協力拡大の決意の表れとして、両国の関係を戦略的パートナーシップへと格上げしました。

ASEANは私たちのインド太平洋地域の構想において、中枢に位置します。

オーストラリアとASEAN、他の域内諸国は来月、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の締結を目指します。この協定は16カ国の経済を網羅するもので、全体で人口は35億人、GDPは257億米ドルに達します。

本協定が特別に重要なのは、インド太平洋地域の経済に、インドをより実質的に取り込む効果があるためです。

インドはこの地域における、優れた成功の物語です。持続的な制度や共通の価値観を有する国です。

オーストラリアにとり、自ずとパートナーになる存在です。

この点から、友人であるモディ首相による、ライシナ・ダイアローグでの開会演説を含む、1月のインド訪問の招待をお受けすることを名誉に思います。

この訪問には、ビジネス使節団が同行します。アショク・ジェイコブ豪印協議会委員長には、この使節団の代表をお願いしました。私たちのインド経済戦略を追求すべく、この代表団には政府とビジネス界が共に加わります。この戦略はインドのパートナーの関心を集めており、今や実現されるべきです。

今回の訪問は、オーストラリアのパートナーシップにおいて、インドとの関係を最前列に位置させるひとつのステップとなるでしょう。

先週こうした試みの一環として、日米豪印閣僚級協議出席のため、4か国の外務大臣がニューヨークに集いました。

外務大臣レベルで本会合が開催されたのは、これが初めてでした。

オーストラリア政府は、ラッド政権が日米豪印協議と距離を保つ政策を取って以来、信頼の回復に辛抱強く取り組んできました。

このオーストラリアや地域にとって重要な協議を、立て直せたことを嬉しく思います。

本協議は海洋やテロ、サイバー関連で実務的な協力を前進させるなど、地域が直面する課題について意見を交換する上で、大切なフォーラムです。

同時に、ASEANやASEAN主導の枠組みの役割を補完するものです。

この取り組みは、かつてない程広さと奥行きを増している、日本との固い友情や支援を下に実現しました。

日本はわが国にとり、特別な戦略的パートナーであり、世界第2位の貿易相手国であると共に、同じ米国の同盟国です。

安倍首相はオーストラリアの偉大な友人であるだけでなく、地域で長く君臨する、最も優れた政治家のひとりです。

こうした理由により、来年初頭に日本を訪れるという安倍首相の招待をお受けしています。また貿易やエネルギー、インフラにおける強いつながりを軸に、韓国との関係により力を入れたいと考えています。

最近文大統領と再会し、両国の関係は水素や重要な鉱物資源、安全保障などの分野で、さらなる大きな可能性を秘めている点で意見が一致しました。

日本と韓国が最近の緊張関係を克服できれば、インド太平洋地域はさらに強力になるでしょう。

 

大国の時代における安全の確保

ご来場の皆様、ごく最近、トランプ大統領夫妻のご親切な招待により米国を訪問し、米豪関係が力強い状態にあることを確認した点をご報告します。

米国との同盟関係は、オーストラリアの過去、現在であり、未来です。

わが国の安全保障における根幹です。

わが国は平和時最大の国防軍予算再編を行い、国防費を対GDP比2パーセントにまで高めることで、こうした同盟関係に貢献しています。

米国によるインド太平洋地域への深い関与は、安定と繁栄を維持する上で欠かせません。

しかし大国の競争時代においてもなお、オーストラリアは米国か中国のどちらかを選ぶ必要はありません。

中国はわが国にとり、包括的な戦略パートナーです。

中豪関係の戦略的重要性は明らかです。

中国はとてつもない経済的成功を経て、軍事力に大規模な投資を行う世界の大国となっています。

世界で最も資源を買い集めている国です。

現在、地域の勢力関係に深い影響を及ぼしています。

また、今や世界第2位の経済大国で、2018年には世界のGDPの16パーセントを占めています。

2009年以降、世界最大の財の輸出国であり、2013年以降は世界最大の貿易国となっています。

中国はまた、世界最大の製造業を誇ります。

銀行部門も世界最大であり、株式、債券市場の規模ではそれぞれ世界第2位、世界第3位です。

外貨準備高でも、世界トップとなっています。

中国がわが国の質の高いエネルギーや資源、農産品の信頼のおける供給、最近ではサービス業からも恩恵を得ているように、オーストラリアも、中国の経済的台頭から多くを得ています。

中国は多くの面で世界を変えたのであり、その関与の条件も変化すると思われます。

こうした理由により、世界経済の将来のルールについての交渉については、例えば中国の義務には、その大国としての地位が反映されるものと思われます。

これは批判ではなく、賛辞です。

これこそ中国を新興先進経済国として語る際、私が言わんとするところです。

世界の協力を支えるルールや枠組みは、現代の世界を投影しなくてはなりません。作った後、すぐに放置されるようではいけないのです。

 

おわりに

最後に簡潔に申し上げます。私たちは今後も、オーストラリアのためであり続けます。わが国の評判を守ります。国益や雇用、生活水準、環境、社会の結束と寛容性、子供たちの将来の機会を守っていきます。

オーストラリアのすべての国民への約束を守るよう、私たちは努めていきます。

それは、若き日のフランク・ローウィ—卿になされた、すべての夢を将来実現できるような社会を作るという約束です。

この約束は今、わが国への貢献を奪うのでなく、こうした貢献を果たそうとやって来る、さらなる何百万ものオーストラリア国民、わが国の法や独自のライフスタイル、自由を尊重するこうした人々に対して守られています。彼らはまた、現在の国民と共に、引き続きオーストラリアを世界が羨む存在にしてくれます。

フランク・ローウィ—卿、オーストラリアはなんと良い国でありましょうか。また、そうであり続けますように。

ご傾聴有難うございました。