Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

オーストラリア先住民映画祭 2024

2024年2月3日(土)に、ユーロスペース(東京・渋谷)にて「オーストラリア先住民映画祭 2024が開催されます。

 

 

本映画祭では、すべて日本初上映となるオーストラリアの先住民の監督による5作品を上映します。是非会場で先住民の映画を大画面で観ませんか?

「家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説」の監督・主演リア・パーセルさん、プロデューサーのベイン・スチュアートさんの来日が決定し、トークイベントも開催予定!

一部のプログラムはオンライン配信で、全国からお楽しみいただけます。

 

映画祭パンフレット(PDF)はこちら: 表紙中面裏表紙

 

最新情報はオーストラリア大使館公式SNSで!

 

 

 

上映スケジュール 

Aプログラム

13:30-

開会のあいさ

トークイベント「オーストラリア先住民映画の魅力」佐和田敬司(早稲田大学教授

映画「フィンク 悠久の大地を駆ける」(92分)上映

短編映画「グリーン・ブッシュ」(27

短編映画「マイベッド、ユアベッド」(17分

短編映画「ヌラヌラ」(6分)上映       

                        ※途中休憩有

16:50 終了予

 

Bプログラム

17:35− 

映画「家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説」(109分)

トークイベント(逐次通訳あり)

登壇:リア・パーセル[監督]、ベイン・スチュワート[プロデューサー]、佐和田敬司[早稲田大学教授、聞き手]

20:05頃 終了予

 

*一部上映作品には、一部ヌード、暴力的な表現が含まれているものもございます。

 

会場+オンライン配信のハイブリッド形式で開催!

会場チケット情

会場:ユーロスペース(http://www.eurospace.co.jp/
Aプログラム、Bプログラム:各500円(均一) ≪各回入替制・全席指定席≫

 

会場チケット購入はこちら:ユーロスペースオンラインチケット購入ページ

 

※各種割引は適用外
※1/27(土)0:00amより劇場HPより座席指定券を購入可能。劇場窓口では1/27(土)開場時から発売開始。
※ゲスト・イベント内容は予告なく変更となる場合がございます。ご了承ください。

 

オンライン配信チケット情

本映画祭の上映作品はオンライン配信でもお楽しみ頂けます。

※無料・日本在住者のみ
※一部ご覧いただけないプログラムもございます。ご了承ください。

※1月12日(金)より、Peatixにて先着順にて受付
詳細は申し込みページにてご確認ください。
オンライン視聴申込ページ:https://peatix.com/event/3778545/

 

尚、映画のコピーやダウンロード、無断使用等、配信されるコンテンツに係る権利を侵害する行為は固くお断りさせて頂きます。

 

オーストラリア先住民映画祭

オーストラリアの先住民の監督の作品が一挙に上映される貴重な1日

ここでしか観られない、ドキュメンタリー映画から短編作品まで珠玉の5作品をラインナップ

オーストラリアの先住民(アボリジナルの人々とトレス海峡島嶼民)は6万年以上前からオーストラリアに住み、世界でも最古に属する文化の伝統を守ってきました。

18世紀に始まったヨーロッパ人の入植は彼らの生活に大きな衝撃を与えました。それでも彼らの文化は生きながらえ、今も彼らはその精神性、土地との繋がりを様々な芸術を通じて表現しています。

1960-1970年代にかけてテレビが家庭に普及する中、先住民の権利回復運動の高まりと相まって、この口承に基づく文化から、新たな表現手段としての映画が先住民自身により作られるようになりました。

1990年代には、オーストラリアの映画機関の振興策により、新しい先住民の映画製作者たちが相次いで登場し、彼らはこの新たな表現手段を自らのものとして、作家性を追求するようになりました。現在、ウォリック・ソーントン、レイチェル・パーキンズ、リア・パーセルなど先住民の監督は世界で活躍をしています。

先住民の監督による作品を上映する今回の「オーストラリア先住民映画祭」。映画という光の芸術により、紡ぎ続けられている彼ら自身の文化の物語に触れて頂ければ幸いです。

 

上映作品 ラインアッ

初開催となる「オーストラリア先住民映画祭2024」では、先住民の監督たちによる多彩なラインナップを会場とオンライン配信のハイブリッド形式にてお届けいたします。

“砂漠の王者”の称号獲得に人生をかけるライダーたちを追ったドキュメンタリー映画『フィンク 悠久の大地を駆ける』、オーストラリアの女優リア・パーセルが1893年のオーストラリア奥地を舞台に人種差別と女性蔑視を取り上げたスリリングな『家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説』

短編作品では、ヴェネツィア国際映画祭やベルリン国際映画祭でも評価の高いウォリック・ソーントン監督が先住民コミュニティ向けラジオ局のある一夜を描いた『グリーン・ブッシュ』、古いしきたりによって許嫁となった見ず知らずのふたりをみずみずしいタッチで描いたラブコメディ『マイベッド、ユアベッド』、ヌラヌラ(こん棒)を振り回すおばあちゃんたちに立ち向かう白人の若手警官を描いた『ヌラヌラ』は、西部劇の雰囲気を感じさる軽妙なコメディです。

オーストラリアの先住民映画のいまを是非お楽しみください。

 

「フィンク 悠久の大地を駆ける」

2018年/92分/オーストラリア

原題:Finke: There and Back

監督:ディラン・リバー(Dylan River)

出演:デイヴィッド・ウォルシュ、アイザック・エリオット、デイモン・ストーキー、ガレス(スクラッフ)・ハミル、ルーク・ヘイズ 

ナレーション:エリック・バナ

◆オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(AACTA)賞2019ドキュメンタリー撮影賞ノミネート

◆スクリーン・プロデューサーズ・オーストラリア賞長編ドキュメンタリー最優秀作品賞ノミネート

「砂漠の王者」の称号獲得に人生をかける、ライダーたちの情熱を映し出す娯楽ドキュメンタリー。

フィンク砂漠レースは、ライダー、観客、アリススプリングスの町にとって、バイク競技以上の意味を持っている。レース完走を目指す下半身不随のレーサー、バイクでいっぱいの車庫に住みながらフィンクレース参加を夢見る者…。参加者が命をかけて砂漠を駆け抜けようとするのは、なぜなのか。競技に駆り立てる情熱は、どこからくるのか…。

人生に一度の大舞台のために砂漠へと向かう彼らの「砂漠の王」の称号をめぐる、プライドをかけた闘いが今、幕を開ける。

 

「グリーン・ブッシュ」

Photo Credit: David Page as Kenny

2005年/27分/オーストラリア

原題:Green Bush

監督:ウォリック・ソーントン(Warwick Thornton)

出演:デイビッド・ペイジ、テッド・イーガン・ジャンガラ、オドリー・ナパナンガ・マーチン、レオ・ウェイン・ジャムピジンガ

◆ベルリン国際映画祭2005パノラマ部門最優秀短編映画賞

◆AFI映画祭2005最優秀短編賞

深夜の先住民コミュニティ向けラジオ局を舞台に、DJと老人たちの絆を描く感動作。

先住民コミュニティ向けラジオ局のDJケニーの元には、刑務所の中にいるリスナーに贈りたい曲のリクエストがひっきりなしに届く。ケニーの番組「グリーン・ブッシュ」がはじまると、ラジオ局には地元の老人たちが集まりだす。コミュニティラジオ局が地域で担う社会的な役割を、一夜の出来事を通して描いていく。

ヴェネツィア国際映画祭審査員特別賞『スウィート・カントリー』(17)等で、国際的に知られるウォリック・ソーントン監督作品。本作はベルリン国際映画祭パノラマ部門最優秀短編映画賞を受賞した。

 

「マイベッド、ユアベッド」

1998年/17分/オーストラリア

原題:My Bed Your Bed

監督:エリカ・グリン(Erica Glynn)

出演:アースラ・ヨビッチ、トレバー・ジェイミソン 

◆シドニー映画祭1998デンディー短編最優秀作品賞受賞

◆コーク映画祭

 

見ず知らずの2人が許婚となる豪先住民の古いしきたりを、みずみずしいタッチで描いた軽快なラブコメディ。

人里離れた集落で伝統的な結婚のしきたりに沿って、許婚となったデリアとアルビン。ついにふたりが一緒に暮らし始める日がやってきた。しかし、どうも思ったように物事が進まなくて…。

中央オーストラリア奥地に暮らすアボリジナルピープルが伝統と現代の営みの両方から影響を受けて、価値観を形成していく姿を検証することで、アボリジナルピープルとしてのアイデンティティという概念を模索する姿を現代的なタッチで描いていく。 

 

「ヌラヌラ」

2014年/6分/オーストラリア

原題:Nulla Nulla

監督:ディラン・リバー(Dylan River)

出演:ウェイン・ブレアー、カーン・チッテンデン、オドリー・マーチン、パメラ・サンプソン 

◆ベルリン国際映画祭2015ジェネレーション14プラス部門最優秀短編映画賞ノミネート

◆オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(AACTA)賞2015最優秀短編フィクション映画賞

ヌラヌラ(こん棒)を振り回すおばあちゃんたちに立ち向かう白人の若手警官。西部劇の雰囲気を感じさる軽妙なコメディ。

警察学校を卒業したばかりの若い白人警官が、先住民系の先輩警官にうながされ、おばあちゃんたちの喧嘩の仲裁に入る。しかしアボリジナルピープルの地域社会と初めて接する若手警官は、教科書通りの接し方しかできず、おばあちゃんたちに叩きのめされてしまう。先住民コミュニティの暮らしの複雑さに直面し、自分の未熟さを痛感することになる若手警官の姿を軽妙なタッチで描いた一作。

ベルリン国際映画祭ジェネレーション14プラス部門最優秀短編映画賞にノミネートされた。

 

「家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説」 
監督&プロデューサー来日決定!トーク有!!

2021年/109分/オーストラリア

原題:The Drover's Wife: The Legend of Molly Johnson

監督・脚本: リア・パーセル(Leah Purcell)

プロデューサー:ベイン・スチュワート、デイヴィッド・ジャウジー、アンジェラ・リトルジョン、グリアー・シンプキン、リア・パーセル 

出演:リア・パーセル、ロブ・コリンズ、サム・リード、ジェシカ・デガウ、ベネディクト・ハーディー

◆アジア太平洋映画賞2021審査員特別賞

◆オーストラリア監督組合賞2022新人長編映画監督賞

人里離れた奥地に暮らすモリーの元に、先住民の脱走犯が現れる。ふたりは予期せぬ絆を結ぶことになり…。

1893年、オーストラリア奥地。モリーは夫の帰りを待ちながら、女手一つで農場を守っている。そこに首枷をはめられた先住民脱走犯ヤダカが現れる。ふたりの間に思いがけない絆が生まれ始め、それまで秘密にされてきた、モリーの生い立ちの真実が明らかになっていく…。

人種差別と女性蔑視を取り上げたスリリングな本作は、オーストラリアの作家ヘンリー・ローソンが 1896年に発表した同名短編をもとに、オーストラリアの女優リア・パーセルが製作・監督・主演で映画化した。

 

 

オーストラリア先住民につい

アボリジナルの人々とトレス海峡島嶼民は、オーストラリアの先住民にあたります。アボリジナルの人々は、現存する世界最古の文化を受け継ぐ存在です。オーストラリア大陸には様々な異なる先住民の人々が暮らしており、それぞれが独自の文化や慣習、言語、ルールを有しています。アボリジナルの人々は6万年以上にわたり、オーストラリアの大地と調和して暮らしてきました。一方、メラネシア系先住民にあたるトレス海峡島嶼民は、クイーンズランド州の最北端とパプアニューギニアの間、大陸の北に位置するトレス海峡の島々に、数千年前に定住し始めました。

こうした先住民文化は多彩で力強さにあふれ、オーストラリアの国民性を語る上で欠かせない存在となっています。

 

 

映画監督紹介・メッセージ

『フィンク 悠久の大地を駆ける』監督■ディラン・リバー(Dylan River)

アボリジナルピープルの映画作家。中央オーストラリアのアリススプリングス出身。アーティストと映画作家を多く輩出したクリエイティブな家族のもとに生まれたが、幼少時には映画制作は退屈で自分向きではないと考えていたが、その考えは完全に間違っていたようだ。

2013年、初監督作品『Buckskin』がシドニー映画祭ドキュメンタリー作品賞(フォックステル賞)を受賞。その後、同作品は公共放送ABCで放映された。2015年に、初の短編映画作品『ヌラヌラ』がベルリン国際映画祭、トロント国際映画祭の上映作品に選ばれた。同作品は、オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(AACTA)より、2015年の最優秀短編映画賞を受賞している。

それ以降に制作した短編は、シドニー、メルボルン、アデレードの映画祭で上映されている。個人プロジェクトやテレビ番組の実績も多い。撮影監督としての業務が仕事の大半を占める。個人的な体験と仕事を一体化させ、故郷に関連したストーリーを伝えることに意欲をもっている。直近では、『スウィート・カントリー』と『We Don’t Need a Map』の共同撮影監督を務めた。

 

≪監督メッセージ≫

2014年のフィンク砂漠レースを終えて、私は苛立ちと戸惑いを感じ、「なぜレースに参加しているのか」と自問していました。これは、映画制作者にも身の覚えがある感覚でしょうし、オートバイ競技にもその点で違いはありません。16歳から毎年、浮き沈みがありつつも、フィンクの大会に参加してきました。ただし、練習にかける情熱と出費額は、どの年も変わりませんでしたが。リスクから悲痛感まで、オーストラリア最大のオフロードレースにつきものの修羅場には慣れっこでした。

なぜレースに毎年取り組むのか自問しました。そして見つかったのが、何らかの功績を残し、ストーリーを語ることだ、という答えです。そして、今伝えたいストーリーが、私自身のレースではなく、他の人のレースだと、私は気づいたのです。フィンクにのめりこんでしまう、この中毒について、理解する必要がありました。映画監督として、バイク競技者として、このストーリーがもつ魅力を描き切った前例がないと思われました。

そこで、オフロードレースの玄人ではない層に向けて、フィンクレースの映像を撮りたいと考えました。ドラマチックなシーン、個性が際立つ登場人物、洞察・理解、過去を振り返る瞬間で映画をいっぱいにしつつ、ほっと息をつく時間も入れることが私の目標でした。レースには、大事なことがあります。

この映画は、短いカットのアクション場面が多い作品でありながらも、登場人物の横顔をしっかりと描いています。非常に大きなリスクと労力を伴う、フィンク砂漠レース。その見返りには、疑問の余地があります。それでも、このレースに人生をかける人たちの心理を理解しようと、カメラがライダーたちの姿を追います。このドキュメンタリーの出演者と私は近しい関係で、信頼関係があります。また、フィンクレースと参加者の歴史は、私の頭の中に焼き付いています。その世界にどっぷりとつかっていたからです。この点が、映像にも反映されていればと思います。

本作品では、綿密に計画されたシークエンスと、自由な観察スタイルの両方を混ぜています。スクリーン上でも輝きを失わない、抜群の登場人物を映像に収め、フィンクレースの長い歴史の記録も映像アーカイブを通じて、活用できました。「フィンク 悠久の大地を駆ける」によって、正真正銘のフィンク砂漠レースを映像作品とし、恩返ししたいと思いました。本作品を観客のみなさまにお届けできて、嬉しく思います。映画による砂漠レース伴走を、きっとお楽しみいただけることかと存じます。

 

『グリーン・ブッシュ』監督■ウォリック・ソーントン(Warwick Thornton)


著名な脚本家、監督、撮影監督。カイテチェ族の出身で、ストーリーテラーとなる運命のもとに、アリススプリングスで生まれ育った。

1990年にCAAMAのカメラマンとしてキャリアを開始。その後1997年に、豪映画テレビラジオ学校(AFTRS)より、撮影の学士号を取得。撮影を初めて担当した長編作品は、同年の『Radiance』。翌年、姉のエリカ・グリンが監督で、賞を受賞した『マイベッド、ユアベッド』の撮影を担当。また、ミッチ・トレスの『Promise』の撮影も行った。これ以外にも、撮影監督として、50分の映画作品『Queen of Hearts』、ドキュメンタリーの『Buried Country』、『Plains Empty』、『Here I am』(ベック・コール監督)、『ソウルガールズ』(ウェイン・ブレアー監督)に携わった。

長編デビュー作『サムソンとデリラ』は2009年カンヌ国際映画祭カメラドールを受賞。2作目の『スウィート・カントリー』は、2017年のアジア太平洋映画祭賞を受賞。2023年の最新作『ザ・ニュー・ボーイ』は、シドニー映画祭でオープニング上映された。

中央オーストラリア・アボリジナル・メディア協会(CAAMA)でカメラマンとDJとして勤務し、数多くのドキュメンタリーを制作した。その後、『Mimi』『Nana』『Payback』『グリーン・ブッシュ』といった短編映画を多く作成した。ドキュメンタリー作品には、CAAMAの音楽史を取り上げた『The Good, The Bad and The Loud』がある。その他には、『Rosalie’s Journey』、『Willigens Fitzroy』、『We Don't Need a Map』など。監督作品の連作ドキュメンタリー『The Beach』では、自身を題材にしている。同作品は、息子のディラン・リバーが撮影した。

ここ数年では、テレビ番組の『Mystery Road Series 2』を監督し、「Firebite」シリーズを共同制作した。

 

≪監督メッセージ≫

『グリーン・ブッシュ』は、砂漠にある、豪先住民アボリジナルピープルのラジオ局を舞台にした映画です。深夜番組の時間帯に起こる、一連の出来事を描いています。

放送開始後、地元の老人たちがラジオ局に集まり始めます。寒さをしのぐために、それとも、暴力から逃れるために、やってきたのでしょうか?もしくは、情報をコントロールしたいからでしょうか?大切なことを見失い、あらゆる場面で緊張が高まって、ばらばらになりそうな地元社会を、このラジオ局は体現しています。つまり、ラジオ局は戦争の前線なのです。ただし、その闘いは目には見えません。

『グリーン・ブッシュ』は、変化をもたらそうと取り組む人々、また、地域コミュニティ組織で働く人々のための哀歌です。また、先住民メディアが長年果たしてきた役割を称える作品でもあります。

この作品では、アボリジナルピープルがラジオ局を一種の「安全基地」として使ってきた経験が、テーマのひとつとして取り上げられています。老人たちは、他に行く場所がないからラジオ局へと足を運ぶのです。 老人たちが求めているのが話し相手のこともあれば、暖かさや、夜の暴力を逃れる場所である場合もあります。

本作品では、答えがほとんど見当たらない、負の連鎖を抱えた世界を描いています。この映画が描写する、一夜のストーリーには、正解も不正解も存在しません。コミュニティの現地点を提示する、本作品。助けを求める、小さな声が聞こえるでしょうか?解決策がないことに、いらだちを覚えられるかもしれません。それでも、人生は続きます。

そして、ケニーは、連鎖の中での自分の立場を知るのです。

 

『マイベッド、ユアベッド』監督■エリカ・グリン(Erica Glynn)


20年を超えるストーリーテリングのキャリアと、受賞歴を誇る脚本家・監督。ドラマ、ドキュメンタリー、テレビ作品を通じて、今日の観客にとって大切なストーリーを届けていることで知られる。

≪監督メッセージ≫

 『マイベッド、ユアベッド』制作にあたって、中央オーストラリアの辺境で、アボリジナルピープルが今、どう暮らしているかを映し出すストーリーを伝えたいと考えました。

オーストラリアの映画やテレビでは、人里離れた土地での生活が過剰に理想化されがちです。私が知っている先住民コミュニティでは、現代と伝統の両方の世界から価値観が形成されていました。本作では、現地では何千年も続いてきた伝統的な儀式を通じて、将来の結婚が決まった少女・少年が描かれています。ですが、一緒に暮らし始めるときがくると、2人は現代的な家に引っ越します。本作品に登場する2人は、どちらも現代の音楽に興味をもっており、特に男性にとっては、音楽がコミュニケーション手段となっています。

『マイベッド、ユアベッド』を制作する上で、私は気恥ずかしさ、そして、2人が互いを求める気持ちを表現することや結婚に伴う期待にこたえることの難しさを、考察したいと思いました。

 

『ヌラヌラ』監督■ディラン・リバー(Dylan River)

監督プロフィールは『フィンク 悠久の大地を駆ける』を参照ください。

≪監督メッセージ≫

『ヌラヌラ』は、アボリジナルピープルの地域社会と初めて接する若い白人警官の姿を描きます。善意から行動する警官ですが、おばあさん2人に対峙した際に、教科書的な接し方をしたことで、本人の未熟さが明らかになります。 

中央オーストラリア・アボリジナル・メディア協会(CAAMA)のアーカイブや、ベック・コール脚本・監督の『Lore of Love』をはじめとした、すばらしい映画製作者の手による数多くの映画に着想を得て、本作品の設定を構想しました。 

ヌラヌラ(こん棒)を手に持ったおばあさん2人が、男をめぐって喧嘩になっているという、単純明快な発想をもとに、脚本の執筆にとりかかりました。軽妙なコメディに仕上がった本作品ですが、西部劇の雰囲気も少し感じられるかもしれません。ただし、皮肉なことに、私は西部劇映画を見たことがありません。本作品の撮影現場に出て、腕利きの撮影監督エリック・マレー・ルイが「つくっているのは本当に、とことん西部劇ですね」と指摘した際に初めて、気づきました。 

「砂漠を舞台に、70歳の女性2人に喧嘩のシーンを振り付けて、車いすの年老いた男性、子どもをたくさん、犬、エキストラ30人と異言語を足そう」。撮影を振り返ると、「何という脚本を書いたもんだ」と自問したことを覚えています。 

 

『家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説』

監督■リア・パーセル(Leah Purcell)


豪クイーンズランド州出身。ゴア族、グンガリ族、ワカムリ族の血を引く、オーストラリアで最も尊敬・賞賛されているアーティストの1人。一般作品、先住民作品を問わず、多くの演劇、テレビ番組、映画作品で、俳優、脚本家、監督、プロデューサーとして活躍する。25年以上にわたるキャリアにおいて関わった作品に、『Box the Pony』、『The Story of the Miracles at Cookies Table』、『Don’t Take Your Love to Town』、『Police Rescue』、『Redfern Now』、『Wentworth』、『Jindabyne』、『Somersault』、『The Proposition』など。

直近の出演作品は、2023年サンダンス映画祭にて上映された『Shayda』などがある。また、Amazonのミニシリーズ『赤の大地と失われた花』では、シガニー・ウィーバーと共演した。Sony Pictures TV USAとFoxtel Australiaによるオーストラリアの新ドラマシリーズ『High Country』では主演を務めている。賞も獲得した小説「Is That You Ruthie?」の舞台化を脚本家・監督として進めており、同作品は2023年12月に、クイーンズランド舞台芸術センター(QPAC)で上演開始予定。

 

≪監督メッセージ≫

『家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説』は、肌が明るい色の先住民女性であり、地方の小さな町で育ち、現在は都市在住である私自身の体験をベースにしています。世代を越えて根づいた、語り聞かせの文化の中で、私は周囲の人から物語を聞いて、育ってきました。この文化の中で歴史は、白人中心の歪曲された書籍の記述とは異なり、先住民自身の体験として伝承されています。 

アボリジナルピープルの創作者として、現代世界において「黒人」(豪先住民)である意味を映画、テレビ、演劇といった作品を通じて表現していくことは、私にとって大きな意義をもちます。私たちは伝統を破壊され、言語を喪失するかもしれません。しかし、自分たちの体験は、他の誰のものでもありませんし、自ら語り継ぐことができるのです。私の作品は、「黒人」からの影響を受けていますし、私自身、そして私の先祖の体験が反映されています。「盗まれた世代」、布教団による迫害、小さな町における人種差別や先住民・白人双方の偏見心理といったものです。こうした体験が考慮されることは、滅多にありませんが、しっかりと注意を向けるべきです。私たちのストーリーを自分たちのために自ら語り、誰もが見られるようにすること、そして、つながりを生み出すことが、とても大切だと私は強く思っています。アボリジナルピープルの語り手として、先祖の体験を真実に即して語ることが私にできなければ、他の誰にそれが可能でしょうか? 

私は作品を通じて、豪アボリジナルピープルの真実に光を当てようと努めています。私の映画に登場するアボリジナルピープルは、いわゆる「伝統的」な見た目でも、ステレオタイプ的な人物設定でもありません。これは意図的な選択であり、我々コミュニティの内外に対して、コミュニティ構成者の外見・内面上の多様性を提示しようとしています。体験を語り継ぐ力を、私たちは失っていません。そして、映画という媒体を通じて、その力は今後も長く、あらゆる人々のために、発揮されていくことでしょう。 

本映画作品は現代版「ドリーミング」であり、数多の人々に共通の道のりが、すべてモリー・ジョンソンへとたどり着くのです。ドリーミングとは、アイデンティティのひとつの形態で、古代からの伝統の文化的な実践です。「家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説」を通じて、語り継ぐ文化の伝統を明白に感じ取っていただけると思います。そして、これは私が本作品全体を通じて、意図的に取り組んだことなのです。 

プロデューサー■ベイン・スチュワート(Bain Stewart)

ベイン・スチュワートは、オーストラリアを代表する先住民のインディペンデント映画のプロデューサー。ングリ族、ゲーンプル族、ヌーナカルムリ族の血を引く。豪クイーンズランド州南東部のノースストラドブローク島およびモートン島の出身。

『Box the Pony』、『Aunty Maggie』、『the Womba Wakgun』、『All My Friends Are Racist』、『Black Chicks Talking』、『家畜追いの妻 モリー・ジョンソンの伝説』など、携わった演劇作品、長編・短編映画、ウェブシリーズ、出版、ドキュメンタリーは多くの賞を受賞している。ミニシリーズ『I am Molly』、児童向けアクション映画『Koa Kid』、ドラマシリーズ『Netball』の企画中である。

ウンバラ・プロダクションを通じ、リア・パーセルとともにオリジナル作品を制作している。「ウンバラ」とは、パーセルの祖母が話したグンガリ語で、ユーカリの一種を意味する。

 

 

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主催:オーストラリア大使館

共催:ユーロスペース

アドバイザー:Pauline Clague、Penny Smallacombe、佐和田敬司、村山匡一郎、矢田部吉彦

協力:Jungle Music、Screen Australia

宣伝デザイン:100KG 宣伝:大福

映画祭チラシ(PDF, 表紙中面裏表紙)