Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

奨学金受賞者体験談

奨学金受賞者ビデオ

飯島 瑞枝 (Ms.Mizue Iijima) 

2011年エンデバーエグゼクティブ奨学金受賞
ホスト機関: オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO) 海洋大気研究部門

世界で活躍中!オーストラリア留学経験者海洋研究を支える

岩村 拓哉 (Dr.Takuya Iwamura)

2007年エンデバーアジア奨学金受賞
ホスト機関:クイーンズランド大学

世界で活躍中!オーストラリア留学経験者〜海外の大学で 教壇に立つ

 

 

奨学金受賞者体験談

日本人体験談

長谷川瞬(Mr.Shun Hasegawa, PhD)

   2015年エンデバー研究フェローシップ受賞

野間野 史明(Dr.Fumiaki Nomano)

   2015年エンデバー研究フェローシップ受賞

東智美(Dr.Satomi Higashi)

   2014年エンデバー研究フェローシップ受賞

川瀬 彩耶(Ms.Saya Kawase)

   2014年エンデバー大学院豪州首相アジア対象奨学金受賞

飯島 瑞枝 (Ms.Mizue Iijima)

   2011年エンデバーエグゼクティブ奨学金受賞

近藤 篤史 (Mr.Atsushi Kondo)

   2008年エンデバー大学院プログラム受賞

武井 紀子 (Ms.Noriko Takei)

   2008年度エンデバー研究フェローシップ受賞

内山 淳平 (Dr.Jumpei Uchiyama)

   2008年度エンデバー研究フェローシップ受賞

立川 靖子 (Ms.Yasuko Tachikawa)

   2006年度エンデバー日本奨学金受賞

 

オーストラリア人体験談

ジェニファー・ウォン(Ms.Jennifer Wong)

   2014年エンデバー研究フェローシップ受賞

アシュラフ・ガーネム(Associate Professor Ashraf Ghanem)

   2014年エンデバー研究フェローシップ受賞 / 2010年エンデバー研究フェローシップ受賞

 

長谷川瞬(Mr.Shun Hasegawa, PhD)

2015年エンデバー研究フェローシップ受賞
ホスト大学:ウェスタンシドニー大学

・オーストラリア留学に至った経緯

私はエンデバー奨学金プログラムに参加する以前は、イギリスの大学にて博士課程に所属しており、その際、共同研究という形で博士課程の大部分をオーストラリアのウェスタンシドニー大学で過ごしました。当時のウェスタンシドニー大学での指導教官に勧められ、エンデバー奨学金プログラムに応募しました。

・留学先での研究・勉強内容

気候・環境変動が植物‐土壌間の相互作用に与える影響を調査しました。産業革命以来、二酸化炭素(CO?)を含む大気中の温室効果ガスの濃度は急激に上昇し、その影響により、地球の気候・環境は大きく変化しています。私は、CO?の増加、及び降水パターンの変化により引き起こされる乾燥に着目し、これらの環境変化が、植物による土壌からの栄養獲得に与える影響に関する研究を行いました。

・そのほか留学先での体験

オーストラリアは文化的にも地理的にも非常にユニークな国でした。特にそこに住む野生動物には驚かされ、北半球で生まれ育った人間からすると日常が動物園のようでした。朝はけたたましい声で呼び散らす巨大なオウムの集団に叩き起こされ、生ゴミを荒らすのは赤・緑の非常に美しい翼を持ったインコ達、ランニングに行けばカワセミに大声で笑われ、夕方になれば1mほどもある巨大コウモリが空を覆い尽くし、フィールドワークのため森林に入れば30‐40頭のカンガルーの一団からの熱視線を一身に受け、藪の中からは体長1mはゆうに超えるオオトカゲが飛び出してきます。さらには悪名高いセアカゴケグモや猛毒のブラウンスネークといった出来れば出会いたくないものから、非常に可愛らしいポッサムの親子やペリカンといった人気者までいます。彼らはここでは決して珍しくありません。本当にその辺にみんないます。現地で生まれ育った方からみれば当たり前の光景かもしれませんが、外からきた私にとっては毎日が非常に刺激的で楽しい日々でした。

・留学後の心境の変化、お仕事の概要

上記の野生動物にはじまり、日本から外に出て経験することはどれも新しく、とても新鮮でした。それと同時に、日本という国が、いかにユニークかということを認識しました。東京で育った私には東京が基準であり、それが“普通”でした。しかし外に出ることによって初めて、日本という国、東京という都市は全く普通ではなく、非常に独特で、魅力的な場所だということに気付きました。海外の方に日本の話をした際に、目を丸くして感心してくださっているのを見ると、日本で生まれ育ったことをとても誇らしく感じます。

私は現在、スウェーデンのスウェーデン農業科学大学(Swedish University of Agricultural Sciences)にて研究員をしており、窒素肥料の土壌添加が針葉樹林における炭素循環に与える影響を調査しております。

・エンデバー奨学金がどのように役に立ったか、またこれから応募する人へのアドバイスなど

私は、エンデバー奨学金を通して本当に多種多様なバックグラウンドを持つ方と出会い、自分のネットワークを大きく広げることができました。これからは、それらのネットワークを生かし、日本、オーストラリアを含む、複数の国を跨いだ共同研究の場を広げ、さらに、他の方のネットワークを広げる手助けをしていきたいと思います。

奨学金応募に関する具体的なアドバイスは、私が実際に応募したエンデバー研究フェローシップに関することしか出来ませんが、積極的に色々な人と連絡をとることです。受け入れ先を見つけることは、知り合いがオーストラリアにいない場合は難しいと感じるかもしれません。しかし、大学での指導教官や、学会で少し会った人でも、エンデバー奨学金に興味があってオーストラリアにいる研究者を探しているんだと、まずは聞いてみてください。知り合いを紹介してくれるかもしれません。それがうまくいかなくても、今の時代は研究者の情報はインターネットで多くの場合簡単に手に入ります。もし自分の興味がある研究をしている方を見つけたら、まずは連絡をとってみてください。その際、一人一人返事を待って、次に行くのではなく複数の人にどんどん連絡をとり、自分はこういった研究をしてみたいと提案してみましょう。受け入れは難しいと断られてしまうこともあるでしょう。しかし、ほかの方を紹介してくれるかもしれません。まずは行動をおこしてみてください。

受け入れ先が上手く決まり、申請書類を記入する段階になったとき、日本とはシステムが全く異なる為、戸惑うことが必ずあるかと思います。一人で何日も迷わず、受け入れ先の方、過去の奨学金受賞者の方、エンデバー奨学金担当者の方に積極的に相談してみましょう。驚くほど簡単に解決できるかもしれません。

オーストラリアの研究・教育機関で働く方々は本当に多国籍です。そこで働く人々にとって、他の国・文化の人を受け入れることは非常に自然なことです。多くの場合、あなたの疑問にとても親切に対応してくれるかと思います。

 

野間野 史明(Dr.Fumiaki Nomano)

2015年エンデバー研究フェローシップ受賞
ホスト機関:マッコーリー大学

Dr Fumiaki Nomano

北海道大学でのポスドクを経て、シドニーにいらしてからまだ1ヶ月も経っていませんが、研究生活はいかがです か?

実を言うと以前、現在所属しているマッコーリー大学の研究室に4ヶ月間ほど来ていたことがあります。その時は、北海道 大学での博士研究のためにデータを集めるのが目的でした。当時の受け入れ研究者の勧めでエンデバー奨学金に応募し、 このたび6ヶ月間シドニーに滞在することになりました。まだ来たばかりですが、研究室の仲間の協力を得て、仕事は順調に進 んでいます。

データというのは何のデータを集めていらしたのですか?野間野さんの研究分野についても教えてください。

私は行動生態学と進化生態学を専門としていて、特に動物の社会進化に興味があります。博士研究のテーマは、共 同繁殖する鳥類の社会行動でした。共同繁殖というのは、群れの中で、子供を産まない個体がヘルパーとして育児を助ける 繁殖システムのことです。オーストラリアでは、全鳥類の30%が共同繁殖をすると言われています。またインコ、オウム、フィンチ など、オーストラリアの代表的な鳥類の多くが群れを作って生活します。なぜこのような群れ行動、社会行動が生じたのかを 明らかにしていくことが目標です。

博士研究では、ニューサウスウェールズ州ブロークン・ヒル近辺の調査地で、共同繁殖をする鳥類の繁殖行動データを収 集していました。

今回は、私が博士研究で使った解析手法を用いて、データの解析を行っています。このデータは、受け入れ研究者が野 外及び飼育下で集めたキンカチョウの社会行動に関するものです。非常に新規的な研究テーマで、やりがいを感じていま す。

オーストラリアは、野間野さんのご専門である生態学分野では進んでいるのでしょうか?

オーストラリアの自然科学研究は、全般的に高いレベルにあると思います。ユニークかつ多様な自然があり、野生動物研 究者にとっては魅力的な国です。また、その研究レベルも非常に高いので、研究資金を巡る競争も激しいようです。それでも 、以前博士研究のときにシドニーで出会った同僚たちが、研究、キャリアにおいて成功していると聞きます。自分の仕事を進め る上で良い刺激になります。

今回の6ヶ月の研究期間を通して、今後その経験をどのように活かしていきたいとお考えですか?

私の主要なテーマである鳥類の社会行動研究では、比較的規模の大きな野外調査を伴うことが珍しくありません。チー ムでデータを取る必要があるため、共同研究が重要になります。特に私の分野では、日本でも優れた研究はたくさんあっても 、研究者が少ないため、共同研究のためには幅広い海外研究者とのネットワークも重要になります。

オーストラリア滞在中は、もちろん研究を遂行し、結果を出すことが第一です。しかし、様々な研究者に会って、研究上 の議論を交わし、ネットワークを築くことも目標のひとつです。受け入れ研究者はこの分野では著名な人物で、私と近い研究 テーマに取り組んでいる優秀な研究者を紹介してくれるので、大変助かっています。

これからエンデバー奨学金に応募する方々に何かアドバイスはありますか?

申請の段階から、研究計画についてできるだけ具体的に、受け入れ研究者、またはホスト機関と議論をしておくことが大 切だと思います。私の場合は、もともと現在の受け入れ研究者をよく知っていたことが助けになりました。

取材・構成:クレイトン川崎舎裕子

 

東智美(Dr.Satomi Higashi)

2014年エンデバー研究フェローシップ受賞
ホスト機関:シドニー大学メコン研究グループ

私は2014年にエンデバー・リサーチ・フェローとして、シドニー大学のメコン研究グループ(Mekong Research Group: AMRC)で、半年間の研究生活を送りました。東南アジアのラオスやタイをフィールドに、資源管理政策が小規模農民の土地利用や食糧安全保障に与える影響を研究している私にとって、メコン地域の自然資源管理や環境ポリティクスに関する研究の第一人者、Philip Hirsch教授の下で、彼や彼の学生と議論しながら研究を行うことができ、またオーストラリア内外の研究者とのネットワークを広げる機会を得られたことは非常に幸せなことでした。

オーストラリア留学に至った経緯は、私にとっては運命的なものでした。留学前、ラオスに駐在し、環境NGOのスタッフとしてラオスの水源林保全事業に従事しながら、一橋大学大学院社会学研究科の大学院生として研究に取り組んでいた私は、AMRCの研究者の論文を読んだり、シドニー大学に留学した友人から話を聞いたりしていましたが、日々の仕事や研究に追われ、具体的な留学計画を立てられずにいました。ある時、タイのチュラロンコーン大学に勤める友人から、同大学が主催する国際会議で報告しないかと誘いを受け、ラオスの資源管理政策について発表したところ、そのセッションのディスカッサントがHirsch教授でした。発表内容についてコメントをいただいたものの、緊張のあまり、留学について具体的な相談をできなかったことを後悔しながら、ラオスに帰国したのですが、ふとお昼に街中の小さな食堂に立ち寄ると、そこでHirsch教授が一人で食事をしていたのです。これは運命に違いない、と覚悟を決め、研究計画や留学の希望を話したところ、フェローシップを獲得できれば、AMRCで受け入れると快諾して下さいました。

そこから具体的な留学準備を進め、エンデバー研究フェローシップを獲得し、シドニー大学に留学するに至りました。シドニーでの留学生活が始まってすぐ、エンデバー奨学金の受賞者が集まるイベントが開催されました。ここで知り合った留学生の数名とは、今も友人関係が続いています。留学開始直後に他のエンデバーの留学生とネットワークを築くことができたことは、留学生活のスムーズなスタートにつながりました。こうした機会が用意されていることも、エンデバー奨学金の魅力の一つだと思います。また、エンデバーの留学生には、ケース・マネージャーが割り当てられていて、手続き上困ったことがあれば、メールできめ細やかに相談に乗ってくださいました。慣れない環境で安心して留学生活を送ることができたのは、こうしたエンデバーの支援体制があったことも大きかったと思います。

留学中には、シドニー大学がホストとなって開催された国際タイ学会の研究大会に向けて、タイ人留学生とともに準備に加わり、研究大会ではこれまで論文や著作を読んできた著名な研究者の発表を直接聴く機会を得ただけではなく、彼らと食事やピクニックを楽しむこともできました。また、同大学の東南アジアセンターでは、毎月のように開催されるオーストラリア内外の研究者による魅力的なセミナーにも参加することができました。

大学での文献調査や議論に加え、ラオス北部でのフィールド調査や、タイのチェンマイで開催された国際連合食糧農業機関(FAO)等が主催する焼畑農業と食糧安全保障に関するワークショップでの研究発表を行いました。この時の成果は、それまでの研究と合わせ、後に”Shifting cultivation, livelihood and food security: New and old challenges for indigenous peoples in Asia” (Erni, C. ed. 2015)の一章や、ブックレット『ラオス焼畑民の暮らしと土地政策:「森」と「農地地」は分けられるのか』(東智美、2016)として出版することができました。

研究以外でのシドニーでの暮らしの中の楽しみは、大学で出会った友人たちと行くbush walkやcoastal walkでした。雄大な景色で有名なBlue Mountainsはもちろん、週末には気軽にシドニー近郊での散策を楽しみました。なかでも一番のお気に入りは、Spit BridgeからManlyまで海岸沿いを歩くコースで、アボリジニの岩絵や美しい海岸の景色を楽しむことができます。次にシドニーを訪れる時には、ぜひまたこのコースを辿ってみたいと思っています。

当初の予定では、フェローシップの終了後は、すぐにそれまで暮らしていたラオスに戻る予定でしたが、AMRCが受託した”Mekong Region Land Governance Project”の調査事業に研究員として参加できることになり、滞在を5カ月延長することになりました。この事業のなかでは、カンボジア、ベトナム、ミャンマー、ラオスの政府機関、研究機関、NGOなどを訪問し、各国の土地政策や土地問題について聞き取りを行いました。この時得られた知見やネットワークは、その後の研究活動の大きな支えとなっています。

オーストラリアからの帰国後、出産・育児休業を経て、現在は、日本学術振興会の特別研究員(Restart Postdoctoral Fellow: RPD)として、法政大学で東南アジアの資源管理に関する研究を続けています。ラオス、タイ、フィリピンなどに出張する際には、オーストラリア留学中に出会った友人たちと落ち合い、近況を報告し合っています。学術的なキャリア形成という点でも、素晴らしい研究仲間や友人を得られたという点でも、貴重な機会を与えてくださったオーストラリア政府には、心より感謝を申し上げます。また、オーストラリア留学を検討されている方は、ぜひ迷わずこの素晴らしいプログラムに応募してみることをお勧めします。

 

川瀬 彩耶(Ms.Saya Kawase)

2014年エンデバー大学院豪州首相アジア対象奨学金受賞
ホスト機関:マークス研究所(西シドニー大学)

Ms Saya Kawase

現在、シドニーで3年間の博士課程を履修していらっしゃいますが、留学生活はいかがですか?とても楽しんでいらっしゃるようですね。

はい、オーストラリアでの生活は2年目に入りましたが、海や山といった自然が豊かで大変過ごしやすいです。週末にはブッシュウォークをしたり、ビーチへ行ったりもしています。また、国籍や年齢を問わず交遊の輪が広がり、多くの素晴らしい友人に恵まれています。忙しい日々ですが、とても楽しんでいます。

オーストラリアでの研究についてはいかがですか?

オーストラリアの研究環境は、非常に恵まれているという印象を受けています。博士研究員でも、研究所から十分な資金をいただけます。そのため、色々な研究にチャレンジできる環境にあると言えます。私自身もその資金を使って、今年の夏に はドイツとイギリスの学会で発表することを予定しています。

現在の博士研究では、第二言語の発話時における、話者の口の動きを見るという視覚と、耳で聞くという聴覚の情報処理に関する研究を行っています。母語を話すときは、その視覚と聴覚の情報が一致します。ところが、外国語のアクセントがある場合には、そこに不一致が生まれる可能性があることが、最近の研究でわかりました。私は、このような外国語訛り言語情報の知覚理解と、知覚順応ということについての研究をしています。オーストラリアでは、このような言語処理の研究が非常に盛んです。

川瀬さんはカナダの大学院で修士課程を終了してから、日本の高校で英語を教えていらっしゃった時期があるようですが、現在の研究は日本での英語教育に応用できるのでしょうか?

はい、私はこの研究を通じて、将来日本の英語教育に貢献していきたいと考えています。具体的には、研究所を開き、日本人英語学習者を対象とした研究とその応用、例えば教材開発などに取り組んでいきたいです。外国語の音声学習方法は、学習者の母語によって異なります。そのため、日本人の外国語学習は日本人でなければわからない部分があります。 私は日本人のための、科学的根拠のある英語教育を提供していきたいと思っています。

川瀬さんにとって、オーストラリアに留学したことの意義は何ですか?

オーストラリアではこの分野の研究が進んでいるだけでなく、研究のためのプログラミングや機材なども充実しています。このような環境で研究できるのは、大変恵まれたことです。

また、私の研究内容は、オーストラリア人の日本語学習にも応用できます。私はこちらで、言語学習に苦労するオーストラリア人も多く見ています。将来的には、日豪の共同研究もしていきたいと考えています。

最後にエンデバー奨学金についての感想をいただけますか?

エンデバー奨学金については、アメリカの学会で出会った現在のラボの先生から初めて話を聞きました。実際の申請手続きは全てオンラインでできたので、難しいことはありませんでした。

エンデバー奨学金を通じて、オーストラリア政府からこのようなご支援をいただき、心から感謝しています。ここで得られた知識と経験を活かして、今後、効果的な外国語コミュニケーションの発展、そして日豪研究協力の推進に貢献していければと考えています。

取材・構成:クレイトン川崎舎裕子

 

飯島 瑞枝 (Ms.Mizue Iijima)

2011年エンデバーエグゼクティブ奨学金受賞
ホスト機関: オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO) 海洋大気研究部門

Ms Mizue Iijima

オーストラリア政府エンデバーエグゼクティブ奨学金は、研究以外の専門能力開発を目的とした数少ない奨学金プログラムの一つです。私は、海洋に関する科学研究及び技術開発を実施している独立行政法人で研究支援業務に従事してまいりましたが、この度、同プログラムの下、4ヶ月間豪連邦科学産業研究機構(CSIRO)海洋大気研究部門に派遣され、 CSIROが参加する多機関プロジェクトの支援に携わりながらプロジェクト・マネジメントを学び、事務職としての自身の専門性を向上させる貴重な機会を与えて頂きました。日本と同じく海洋国家であるオーストラリアの、海洋科学研究における産学官の積極的な連携、機関間の壁を超えた、地域単位、国家単位、更に国際的な取り組みからは、日本としても多々学ぶことがあると実感しています。

オーストラリアで生活してみて最も感銘を受けたのは、人々の温かさと寛容でした。仕事を通じて知り合った人達が皆、役職や年齢に関係なく私の事を一人の友人として扱ってくれただけでなく、更にその友人や家族に紹介してくれ、私が現地 の生活に溶け込んで充実した滞在期間を送れるよう細やかに気遣ってくれたのです。これにより、海洋科学研究の分野を超 えて、交友の輪、人脈が格段に広がり、更には多様な価値観、忌憚の無い率直な意見に触れることで、自分の視野を大いに広げることが出来ました。

Ms Mizue Iijima

実は、今回のエンデバー奨学金受賞決定は、東日本大震災発生の前でした。国難とも言うべき非常事態に直面し、渡豪するべきかどうか迷いも生じましたが、エンデバー奨学金事務局に加えて在京オーストラリア大使館、派遣先であるCSIROから揃って温かい励ましときめ細かいサポートを頂き、所属機関、家族、友人の支えにも後押しされる形で、今回の派遣を実現することが可能となりました。関係者の皆様にこの場を借りて心より御礼申し上げます。今後は、このプログラムのおかげで獲得することが出来た知識・経験、人脈を活かして、海洋科学の分野における日豪の研究協力の一層の推進に、微力ながら貢献し続けなければと考えております。

最後に、エンデバー奨学金日本枠及び教育交流支援プログラムを通じた、教育分野におけるオーストラリア政府の日本復興支援に改めて感謝申し上げますと共に、ぜひ一人でも多くの日本人がこのプログラムの存在を知り、参加の意欲を持って欲しいと心より願う次第です。

 

近藤 篤史 (Mr.Atsushi Kondo)

2008年エンデバー大学院プログラム受賞
留学先・専攻: UNSW国際法国際関係学修士

Mr Atsushi Kondo

現在の仕事の概要

現在イタリアの首都ローマにて、国連機関のひとつ世界食糧計画 (World Food Programme略称: WFP)で勤務し ています。WFPは、世界最大の人道支援機関であり、食料や機材その他生活必需品を、紛争や自然災害などの被害によって支援を必要としている人たちに届けています。2011年3月11日に発生した東日本大震災でも、直ちに現地入りし、支 援物資を運びました。私自身も、当時勤務していたスーダンから派遣され、岩手県の遠野市を拠点とし、南は宮城県の気仙沼市から北は岩手県の宮古市までの支援物資の物流を担当しました。

ここWFPの本部ローマにおいては、物流部門の航空局で航空会社との契約業務を担当しています。食料を運んだり、人が移動するにあたって、道路ではいけない所を飛行機を活用することにより、適切な支援を困っている人に届くための調整業 務をしています。アフリカ諸国や中東の食料状況やアジアの自然災害状況を常にモニターし、サプライチェーンを切らさないように空の足を確保するのが私の役割です。この地に転勤してから、書類仕事が格段に増しましたが、さまざまな国籍の職員と 世界中の事務所と連絡を取り合いながら仕事を進めています。

Mr Atsushi Kondo

オーストラリアでの研究・勉強内容

大学院修士課程では、法学部から国際法の授業を取り、政治学部からは国際政治を学びました。古来からある政治思想を学ぶのと同時に、現在世界が直面しているさまざまな問題を研究し、授業では世界各国から来ている学生と討論を繰り返しました。オーストラリアは、アジアから比較的近い英語圏の国ということもあり、授業をともにした学生は、アジア各国の政府から派遣されてくる官僚や、ビジネスマンたちが比較的多く来ていたのを覚えています。

習慣や文化の違いを乗り越え、また言語の壁も乗り越えての討論は、難しくもあり苦労した点も多々ありますが、皆が助け合い国際色豊かな授業を楽しむことができました。気候の良いオーストラリアは、授業以外のアクティビティも多く、勉学だけでなく生活全般を充実させることができる点が良いところです。

多国籍な環境で、世界の諸問題を議論した私の留学期間は、現在の私の仕事に大いに役立っています。国連は、多様なバックグランドを持つ職員と、議論を重ねながら、解決策を見つけ実行していく機関であるため、学生時の苦労は今の私の基礎となっています。

 

武井 紀子 (Ms.Noriko Takei)

2008年度エンデバー研究フェローシップ受賞者 / 大阪大学
留学先: マッコーリー大学(Macquarie University)
専攻: 言語学

「オーストラリア」を研究テーマに選んだ理由

近年、国際化と情報技術、交通の発達により海外はより身近なものとなり、短期、長期、永住といったさまざまな形態で海外に在住する日本人が増加しています。外務省の統計によるとオーストラリアは、アメリカ、中国、英国に次いで4番目に邦人数が多いと報告されており、ワーキングホリデーや移住先として若年層から中高年齢層まで人気の高い国です。渡豪する日本人の方々のバックグランドは異なりますが、日本では多数派に属する人々が、オーストラリアのような多民族社会の中で少数派の一民族として日々の生活においてどのような言語生活を送っているのか、彼らの母語である日本語に対する意識を明らかにし、ことばとアイデンティティがどう関わっているのかを知りたいと思いました。

日本にいれば日常生活で「自分が何者か」などあまり考えることはありませんが、多民族社会に身をおくと考えざるを得ない状況になるのではないかと思うのです。オーストラリアは、距離的にも地理的にも日本から比較的往来しやすく幅広い年齢層に人気があること、そして中学時代に知り合ったオーストラリア人のペンパルを通して始めて外国の空気に触れ、オーストラリアの人々と交流するようになったことが契機となりオーストラリアは私にとって最も親しみを感じる国になりました。このような理由からオーストラリアを研究のフィールドとして選びました。

オーストラリア政府奨学金「エンデバー奨学金」との出会い

研究テーマが見つかり、現地に赴いてフィールドワークを行ないたいという一心から、オーストラリアの奨学金関係をインターネッ トで調べ、「エンデバー奨学金」を知りました。難関は承知でしたが「エンデバー研究フェローシップ」に応募しました。留学先のマッコーリー大学ではフィールドワークを行いましたが、エンデバー奨学生ということが信頼につながり、多くの人にご協力いただきました。人との絆を築くことが研究の第一歩であり、主幹でもあります。「エンデバー奨学金」によってその門戸が開かれました。

留学先で学んだこと

マッコリー大学では先生方の学生に対する指導が非常に熱心で、学生も自分の意見をしっかり持って先生と話し合いな がら研究を進めていく姿が印象的でした。私はほとんどフィールドワークに徹していましたが、それについて先生方や他の学生から意見をいただき大変参考になりました。また自ら主張すべきことは主張し行動を起こさない限り、手を差し伸べてくれることはないことも学びました。疑問に思うことは、納得するまで訊く姿勢が大切です。

留学先での体験

半年の間にオーストラリア人、日本人の方々を含めて実に多くの方々にお世話になりました。この短期間に体験したことはこの体験談では書ききれないくらいあります。オーストラリア人の家庭に滞在しながら、日本人家庭やオーストラリア人、韓国人とご結婚されたご夫婦の家庭にホームステイをさせていただいたことで生活習慣やライフスタイルの違いなど、日本人だけでなく現地の人と生活することによってさまざまな世界に触れられたことはオーストラリア社会を客観的に捉える上で大変有意義な体験でした。さらに研究において最も大切なことを自分の身をもって知ることができたことをありがたく思います。それは調査に協力してくださる方々に対して真摯な姿勢と感謝の気持ちを忘れないことです。

私が出会った人々は皆初対面でしたが大変親切に接してくださり、いろいろと教えてくださいました。最初の数ヶ月はなかなか調査が軌道に乗らず半ば落ち込む日もありましたが、少しずつネットワークが広がりアンケートやインタビューに予想以上の人々が協力してくださいました。その方々との出会いを通じて日本人コミュニティを自分の目で観察し、感じ取ることができたことはこの上ない私の財産です。特に印象的であったのは日本人移住者のパイオニアである戦争花嫁の方々が50年以上現 地で生活しオーストラリアの生活に溶け込んでいらっしゃるにもかかわらず日本人であることを誇りに思い、生まれ育った価値感や文化を大切になさっていることでした。

ある方は日本人であれば親しい人でも苗字で呼ぶということを徹底されていましたし、日本からやって来た一人の学生にしか過ぎない私に、すし、天婦羅、煮物などの料理、またはオーストラリアの料理を作って迎えてくださいました。実際に現地に赴いて自分の足で歩き、自分の目で確かめること、そして人との出会いを大切にすることなど半年の滞在で多くのことを学びました。

オーストラリア留学を将来に生かしていきたい

日本もこれから一層多文化社会、多言語社会になると考えられますが、日本の言語政策や異文化理解教育において オーストラリアに学ぶべきものが多いにあります。将来は日本国内に在住する外国人コミュニティの言葉や教育の問題に取り組むような活動に関わることができれば幸いです。

 

内山 淳平 (Dr.Jumpei Uchiyama)

2008年度エンデバー研究フェローシップ受賞者 / 高知大学医学部 助教授
留学先: ボンド大学 (Faculty of Health Sciences & Medicine, Bond University)
専攻: Ph.D (Medicine)

留学先としてのオーストラリアの魅力

オーストラリアは、雄大な自然、そして非常に人気のある観光地を数多く有しています。世界有数の多民族国家であるため、英語を第二外国語とする人々も多く、我々日本人に対しても比較的寛容に接してくれます。また、オーストラリア人の穏やかな気質、銃規制による治安の良さ、学業以外のアクティビティーが盛んな点など、魅力ある点が数多くあり、他のどんな留学先よりも勝っていると思います。特に、大学・大学院留学においては、世界1・2位を争う高いレベルの大学教育の提供、他の国々に比べ安価な授業料、また、その素晴らしい生活環境に魅了され、世界中から多くの学生が留学しています 。それゆえ、オーストラリアは、非常に素晴らしい留学先の一つでもあります。

私は、オーストラリア大学留学を通じて科学研究者を目指すことを決意し、高知大学大学院博士課程に進学しました。幸運にも、博士課程在学中に、「2008年度エンデバー研究フェローシップ」を受賞し、6ヶ月という短い期間ですが、幸運にもオーストラリアへ研究留学の夢を叶え、高知大学とボンド大学という小さい規模ではありますが、非常に良い科学研究交流を行うことができました。

オーストラリアの科学研究

オーストラリアの研究は、独自に発展した多文化・特有の芸術をはじめ、固有の自然、豊富な資源を有するため、非常 に創造的かつ独創的です。科学研究分野では、ノーベル賞受賞者マーシャル博士によるピロリ菌発見や抗インフルエンザ薬 の創薬(i.e., リレンザ)など、オーストラリア科学研究のレベルの高さには目を見張るものがあります。

オーストラリアの研究スタイルは、日本のように長時間ラボ働くことを美徳とせず、短時間に効率よく仕事をするのが普通です。夕方6時には、ラボは閑散とします。日中は、学部学生、大学院生、ポスドク、教員達の出入りが激しく、様々な人間たちの研究に対する思想や生き方も見ることができます。一律一様の我々日本人にとっては、非常に刺激的な体験となると思います。また、教授であろうと、学生であろうと、非常に身近に話しができることは、日本の研究室にはない醍醐味です。また、日頃から高いレベルのプレゼテーション能力や文書作成能力を要求されるため、研究者としてのトレーニングを積むことが出来ます。さらに、主体性を非常に重んじるため、比較的自由に自立して研究を遂行することもできます(ただし、ボスによりますが…)。それゆえ、国際的な研究者になるべく最高のトレーニングを受けることが出来ます。

オーストラリア留学に至った経緯

私は、オーストラリアでの大学生時代に受けた教育のおかげで、博士課程2年目には学位論文を仕上げることができました。当時、博士号取得者余剰による博士号取得者のワーキングプアに不安を抱いていました。それゆえ、自分の研究者としての資質を試せないか、また、何か自分が行なった形跡は残せないかと考えていました。そんな折、以前から知り合いであったボンド大学医学部人間生理学講座Russ Chess-Williams教授や指導教官であった高知大学医学部小児思春期医 学講座の脇口宏教授に相談し、高知大学大学院在籍中にも関わらずRuss先生の下で研究をすることが許されました。親日家でもあるRuss先生は、過活動膀胱という病態に関して大変注目を集める研究者です。そんな一流の親日的な研究者の下で研究できることは大変光栄なことでした。エンデバー奨学金は、Russ先生にご相談し、何とか申請をするに至り、非常に幸運なことに受理をして頂きました。行なった研究は、高知大学大学院で習得した技術を膀胱生理学研究に生かすというものでした。

留学で学んだこと

私の場合、オーストラリアの研究活動で学んだものを一言で言うと、「心の余裕」です。日本では、多くの人が仕事の成果を追い求めるゆえに、心のゆとり無き精励恪勤に陥る傾向にあると思います。オーストラリアの研究スタイルや生活環境を通じて、ゆとりある気持ちや研究に対する姿勢を学びました。ゆとりを持って仕事をすることで、生活・仕事すべてが効率よく 回転することを身をもって体験することができました。

エンデバー奨学金での留学期間が6ヶ月という時間制限がある中、異文化・異分野で仕事をすることは非常に不安でした。しかし、この「心の余裕」を持ってやることで、何とか仕事を形にすることが出来ました。また、諸問題が生じ、窮地に立たされた状況でも、「今何ができ、何が大切か?」を柔軟に考えることで、解決策は必然的に見つかることも学びました。これは、「人生を楽しみ、人間らしく生きる」というオーストラリア人の生き方より学ぶことができました。
課外活動では、ブラジリアン柔術を通じて、健康に対する意識やレジャーの重要性も認識することができました。当たり前のことですが、楽しみながら運動すれば、ストレス軽減・健康な体を作ることができ、健全な生活を手に入れ、至っては仕事の効率化を図ります。また、課外活動を通じ、多くの人たちと出会い、世界観を広げることが出来ました。プロスポーツ、ビジネス、建設業、IT、救急医療、院内感染症、文学、法律と本当に多様な分野の人々と出会い、普段聞けないような話を聞く機会にも恵まれました。

これからオーストラリアへ留学する人へ

皆さん様々な目的で留学すると思います。忘れないで欲しいことは、多くの失敗はありますが、一生懸命前向きに生活、勉強、仕事、レジャーを頑張ることです。それを通じ、多くの出会いや新たな発見があると思います。私の体験談は、ほんの一例です。自分なりのオーストラリアを見つけ、この素晴らしい国を「第二の故郷」と胸を張って言ってください。

最後に

エンデバー奨学金でお世話になりました駐日オーストラリア大使館、オーストラリア政府教育雇用職場関係省、高知大 学医学部事務室の方々、並びに、研究でお世話になりました高知大学医学部微生物学教室の大畑雅典教授、松崎茂展准教授、小児思春期医学教室の脇口宏教授、ボンド大学医学部のRuss Chess-Williams教授、また、現地での生活をサポートして下さいました親友でもあるAxis 柔術アカデミー ゴールドコースト代表Jason Roebig氏にこの場を借りて厚くお礼を申し上げます。

 

立川 靖子 (Ms.Yasuko Tachikawa)

2006年度エンデバー日本奨学金受賞者 / 柏市立柏高等学校教諭
留学先: ウーロンゴン大学(University of Wollongong)
専攻: Master of Education

「オーストラリア」を研究テーマに選んだ理由

仕事の傍ら学んでいたTESOL(英語教授法)のクラスで、オーストラリアの語学教育の話を聞き、そのユニークな方法に興味をひかれたのが、オーストラリア留学を決意したいちばんの理由です。オーストラリアは海外からの移住者も多く、英語を母国語としない人たちの英語教育が盛んに行われていますが、そのような教育現場やそれを支えるHallidayの理論を学びた いということでエンデバー奨学金を申し込ませていただきました。

留学先で学んだこと

ウーロンゴン大学では教育学部でTESOLを専攻し、英語教授法の基本的な理論はもとよりオーストラリアにおける英語教育の最前線についても学ぶことができました。クラスメートはオーストラリアで教鞭を取る現役の先生たちやアジア各国からやって来た留学生など様々なバックグラウンドを持っていて、お互いのアイデアや意見をぶつけ合いながら、私自身も日本の英 語教育を改善していく余地がまだまだたくさんあることに気づかされました。また、教授や知り合った方々を通じて、小・中・高校での英語教育の現場に触れる機会もいただき、学んだ理論がどのように実践されているかを体感させていただきました。

留学先での出会い

研究と同じくらい、私にとって貴重な体験となったのは様々な人たちとの出会いです。言語の指導者としてだけではなく一学習者としてもこの留学でたくさんのことを吸収したいと考えておりましたので、人との出会いを大切にし、オーストラリアのことをもっと知りたい、という気持ちで毎日を過ごしました。大学で出会った教授、クラスメート、学校職員のみなさん。励まし合って頑張った寮の仲間たち。私たち留学生に親身に声をかけてくれたボランティアの方々。マラソンやラグビーのチームメイト。地元の絵画教室で知り合ったアーティストのみなさん。旅先で出会った方々。たくさんの人たちとの交流を通して言語を学ぶ意義や理由などといったものが次第に見えてくるような気がしました。

留学経験を生かして

帰国後、オーストラリアで経験したことをもとに留学前に通っていた大学院での卒業論文を仕上げました。日本の英語教育はこの数年間のうちに大きな転換期を迎え、より学習者の期待に応える内容に改善されていくことと思います。そのような中で、私も、オーストラリアで学んだことを多くの方々と共有しながら、改革の一助を担っていくことができればと考えております。そして、将来世界の人々と心のこもったコミュニケーションができるような生徒を育てていきたいです。もうひとつ、留学中、勉強 で追われる中、私の心をなごましてくれたのが、オーストラリアの自然でした。日常生活においても、鳥たちのさえずり、ユーカリの木々の香り、ジャカランダやボトルブラッシュの花、美しい水平線から昇る朝日など、数えきれないほどです。キンバリーをキャンプして周ったときに見た宝石箱のような星空は一生忘れません。将来、オーストラリアの自然を旅しながら美化活動などといった形でぜひお礼をしたいです。

留学を目指す方たちへ

最後になりますが、オーストラリア留学を目指しているみなさんへ。当たり前のことですが、前向きに頑張る人をオーストラリアの人たちは温かく見守り、応援してくれます。様々な出会いを大切に、また、いろいろなことにチャレンジして、みなさんの留学生活がすばらしいものになるよう、心より祈っています。

 

ジェニファー・ウォン(Ms.Jennifer Wong)

2014年エンデバー研究フェローシップ受賞
ホスト機関:名古屋市立大学

Ms Jennifer Wong

シドニー大学で博士課程履修中に、薬学研究者として名古屋市立大学に6ヶ月間在籍されました。日本の研究室での経験はいかがでしたか?

全てが想像していた通りで、まさに夢が叶ったという感じでした。異文化について学んだだけでなく、研究においても異なるやり方を経験することができました。学生たちと出会い、知識を交換することができたことも良かったです。多くの学生たちは、私の考え方や、異なるやり方にも敬意を示してくれました。

日本での指導教官も非常に協力的で、素晴らしい学習環境でした。例えば、日本の噴霧乾燥の会社を見学したいと話を持ちかけたところ、指導教官の伝手で、施設への訪問が実現されました。大規模な生産行程を見学することができ、驚くべきことばかりの興味深い経験となりました。オーストラリアには大規模な薬学部門がないため、貴重な機会でした。

日本での研究生活におけるハイライトは何でしたか?

今年3月に、日本国内最大の薬学会である日本薬学会第135年会で口頭発表を行い、それが(日本での)6ヶ月の努力を発表する集大成の場となりました。

発表は大好評でした。人々の関心は強く、多くの質問を受けました。そして、全く期待をしていなかった優秀発表賞まで いただき、嬉しいおまけ付きでした!

日本ではかなりの成果があったようですね。ウォンさんの研究と日本での研究成果について教えてください。

私の研究の目的は、ぜんそくなどの薬の肺への送達を改善することです。現在の方法はとても非効率的です。私たちは この研究を通して、吸入治療を簡素化し、その効果を向上させることを目指しています。

日本では、ナノ粒子を作り出す新しい方法を見つけるための研究に焦点を当てていました。日本へ行ったのは、ある指導 教官のもとで勉強をするためです。その指導教官は、特殊ノズル技術の専門家であり、また先駆者でもあります。彼は多様な、複数の流路を有するノズルを開発し、その特許権も取っています。私たちは、ワンステップで薬物ナノ粒子を作り出すため にそのノズルを用い、初めてそれに成功しました。ようやく暗号が解けたことが、非常に嬉しかったです!

もうすぐ博士号を取得され、また将来の可能性が広がりますね。エンデバー奨学金を通しての経験が、将来の展望にどのような影響を与えましたか?

私はエンデバーの経験を通して、日本文化だけでなく、日本人とどのように仕事をしたら良いかということも学びました。異文化の人々とより良く接するための鍵は、お互いの文化を理解し合い、尊敬し合うことだと私は信じています。エンデバーの経験を通して学んだ順応性は、将来世界中の人々と協力していく上で助けになります。それは、研究、ビジネス、社交など全ての分野においてです。

私が積極的に培ってきた人脈は、将来に向けて継続されていくものです。私は日本でネットワークを広げることができました。そこで出会った人々、または再会した人々と、今後もつながり続けていきたいと願っています。

それを今後のキャリアにどう活かしていきたいですか?

今後は、製薬会社で科学者として仕事をしていきたいと考えています。私は世界のために貢献することが好きです。医学的疾患に立ち向かう人々を助けるための薬を開発していきたいと思っています。

取材・構成:クレイトン川崎舎裕子

 

アシュラフ・ガーネム(Associate Professor Ashraf Ghanem)

2014年エンデバー研究フェローシップ受賞
ホスト機関:国立研究開発法人 物質・材料研究機構

2010年エンデバー研究フェローシップ受賞
ホスト機関:京都工芸繊維大学

現在は有機化学者としてキャンベラ大学でキラリティー(掌性)研究をリードしていらっしゃいます。ガーネムさんの研究分野について教えてください。

60年代初頭、妊婦のつわり治療のための薬がドイツの会社によって開発されました。後に、その薬の有効成分であるサリドマイドの影響で、手足に奇形のある赤ん坊が産まれていたことがわかりました。そしてサリドマイドの分子がキラル(掌性)であり、左手型と右手型という二つの型で存在していることも発見されました。一方の型は強力な安定剤ですが、もう一方の型には胎児の発達を妨げ深刻な先天異常を引き起こす作用があったのです。私たちはキラリティー研究に基づき、望ましい型だけを使用できるよう二つの型を分離させるための環境に優しい方法を開発しました。

重要なのは、サリドマイドをどのように分離するかということです。そのために道具としての「カラム」が開発されました。日本の株式会社ダイセルによって開発されたカラムからアイデアを得て、私は、より環境に優しい方法で薬を分離する、髪の毛ほどに細いカラムの開発を思いつきました。ダイセルとの関わりはここから始まり、今では私たちの情報をダイセルに開示するという契約を結ぶに至りました。私たちの目的は、同様のカラムを開発し、それを商品化することです。

日本企業であるダイセルとの契約の他、ガーネムさんは二度にわたってエンデバー研究フェローシップを受賞して日本に滞在されています。なぜ日本だったのでしょうか?

科学分野において、オーストラリアと日本の間には強いつながりがあります。例えば、日本はオーストラリアから原材料を調達し、それを加工し、新しい技術の形でオーストラリアに還元しています。私たちは、最高技術を実践的に経験する必要があります。そのためにも、物質・材料科学分野における日本との協力関係をさらに強めていきたいと考えています。

私は、エンデバー奨学金と日本学術振興会の奨学金で、2010年から2012年の間に合わせて1年間、京都工芸繊維大学に在籍しました。二度目にエンデバー奨学金を受賞した2014年には、物質・材料研究機構で研究を行いました。京都工芸繊維大学は私の分野では非常によく知られています。物質・材料研究機構もまた、物質・材料科学分野において は世界でナンバーツーの機関です。

ガーネムさんの研究チームには、最近まで日本人学生が在籍していたようですね。それは、ガーネムさんのエンデバーフェローシップ受賞と関係があるのですか?

はい、彼は京都工芸繊維大学から来ていました。そして私の生徒の一人は、3ヶ月間京都へ行っていました。私が京都で築いた交流関係がきっかけとなり、学生の交換を始めるに至ったわけです。このような学生の交換は、新しいアイデアを共有するのにとても良い機会です。

現在は、私の学生の一人が物質・材料研究機構へインターンとして行っています。私たちの学生がそこで経験を積めることを、非常に嬉しく思っています。

私たちは、物質・材料研究機構の研究者もここキャンベラ大学の助教授として招き入れました。そのことで、私たちは物質・材料研究機構とさらに強い関係を築き上げることができました。

物質・材料研究機構からは他の研究者も招いて、キャンベラ大学で講義をしてもらったこともあります。講義はその研究者が開発した材料についてでしたが、それは(2011年の東日本大震災の後)福島の原子力発電所で放射能を吸収するのに使われました。

このようなことが実現できたのは、ガーネムさんが日本にいらした間に専門家同士のネットワークを築くことができたからでしょうか?

もちろんそうです。これはエンデバーフェローシップの非常に大きな成果です。また、東京のオーストラリア大使館教育部の皆様から大きなサポートがあったこともつけ加えておきたいと思います。物質・材料研究機構と関係を築く際に、非常によくしていただきました。

科学分野におけるオーストラリアと日本の今後の関係についてはどうお考えですか?

できれば今年末(2015年)にオーストラリアと日本の研究者を集めて、物質・材料科学分野の最高技術に関する共同シンポジウムを開催したいと考えています。実現すれば、両国の間に強いつながりを築く素晴らしい機会となります。

私たちは日本が持っている知識を持っておらず、日本は私たちが持っている知識を持っていません。ですから私たちは、両国の利益になるような新しいものを作り上げるために、お互いの知識を交換し合う必要があります。私はエンデバープログラムの素晴らしい成果をもとに、さらにそこから何かを築き上げていきたいと思っています。

将来のエンデバー奨学生に向けて、何かメッセージはありますか?

エンデバー奨学金の目的は、ただ他国を訪れることではありません。他の人と共有できる新しい知識を持ち帰らなければなりません。他の機関と協力し、学生や研究者を交換し、共同助成金や共同研究資金に申請してください。最大限にその 機会を利用してください!

取材・構成:クレイトン川崎舎裕子