Australian Embassy Tokyo
在日オーストラリア大使館

アルバニージー首相:鉱物週間夕食会における演説

国会議事堂

キャンベラ

2023年9月4日

*** 演説用原稿 ***

最初に、本日の会場がある土地の伝統的管理者を称え、過去、現在、未来における長老のみなさまに敬意を表します。

私が首相を務める政権の下で、「先住民の議会への声」の設置を問う国民投票が10月14日に実施されることを誇りに思っています。どのオーストラリア国民にとっても、先住民の地位確立、意見尊重、状況改善を実現するために、肯定票を投じる機会となっています。

豪州鉱物資源評議会と、今晩ご出席いただいた数多くの企業のみなさまに対し、今日まで国民的議論に前向きかつ建設的な役割を果たしてくださったことについて、御礼を申し上げたく存じます。

同僚の国会議員のみなさまも、ようこそ。ご参加くださいまして、ありがとうございます。

鉱物週間は、オーストラリアという国の豊かさを実現する上で、本会場に集まった企業の経営者と労働者が果たしている貢献を記念するための貴重な機会です。

我が国のGDPの14%以上が鉱物産業に由来します。

オーストラリアの輸出価値の3分の2以上が鉱物産業によるものです。

そして、鉱物産業は100万を超える雇用を生み出しています。

オーストラリア政府は、鉱物産業との協力を今後も継続します。そうすることで、鉱物産業が良質で安定的な雇用を創出する中で、頼りになる生産的な熟練労働力が供給され続けるように努めます。

労使関係改革、また、長年の懸案だった移民制度と技能向上の変更に関して、我々は生産的な対話を行いましたが、先ほど申し上げた点が、その焦点となりました。

あらゆる問題の全側面について、政府と業界の意見が常に一致するわけではありませんが、全体的な目標、つまり、我が国の生産性と豊かさの向上については、誰もが賛成しています。

鉱物産業がオーストラリアに果たしている重要な役割について、私は常々、尊敬の念を強く抱いてきました。

そして、首相就任後、我々の地域に鉱物産業が果たしている重大な役割について、さらに深く理解することができました。

なぜなら、私たちが生きている間に起こった最大の変化はおそらく、北アジアの経済転換だったからです。

そして、この未曽有の成長にオーストラリアの資源産業が重要な貢献をし続けていると称える声を、私はいたるところで聞いております。

我が地域にある各国の経済は、人類史上最速のペースで成長を遂げていますが、この原動力と基盤となり、また、その近代化に寄与したのは、本会場にお集りのみなさまと、みなさまが雇用されているオーストラリア国民の努力です。

我が国政府は、みなさまのこうした貢献に感謝しており、その恩恵に与った国々も同様でしょう。

日本と韓国は、鉄鉱石、ガス、石炭など、オーストラリアの資源が両国の経済開発に果たした貢献を、理解しています。

同じくらい重要な点ですが、世界が排出量削減に向けた行動を起こすのに応じて、私たちの輸出品目が変わる中でも、オーストラリアの貿易相手国は、エネルギー、金属、鉱物の輸出国として、オーストラリアが今後も信頼できる国であると理解しています。

また、豪中関係の安定化のために、我が政府が政権発足当初から講じてきた取り組みについても、ご認識いただいていることでしょう。

オーストラリアの資源がもつ価値と品質が、対中外交を進める上で強力な基盤となった点について、疑いの余地はありません。

豪中貿易の阻害要因を排除することが、両国の利益に常に合致するという点を、説得力をもって証明する実例となっています。

しかし、最も重要な点は、豪州鉱物資源評議会の取り組みと同じように、鉱物週間が未来を見据える機会であることです。

というのも、経済変化の次の大波がすでに到来しているからです。

今週この後、私はASEAN首脳会議と東アジア首脳会議のためにジャカルタへ、その後、G20首脳会議のためにニューデリーへと向かいます。

これら首脳会議に出席するリーダーたちの本当に多くが、鉱物産業の未来について会話をしたいと思っている点は、間違いないでしょう。

過去数十年間において、産業化を進める国々は例外なく、オーストラリアの鉱物資源を欲してきました。

そして今、脱炭素化を進める国にとって、オーストラリアの鉱物資源が例外なく、重要になっています。

インドネシアやインドといった国にとっては、オーストラリアの鉱物資源は二重の意味で重要です。というのも、こうした国々は経済成長、生活水準向上、排出量削減を実現するため、産業化と脱炭素化を同時並行で進めているからです。

長年にわたり、産業化と脱炭素化という目標は、両立不可能な優先事項として表現されてきました。

経済成長か気候変動対策か、雇用創出か環境保護か、という捉え方は、どちらも間違った二者択一です。

鉱物業界のみなさまの取り組みが、こうした2つの目標が互いに相反しない点を証明しています。事実、世界で最も高い経済成長率を遂げる国々がネットゼロ目標を達成するためには、この2つの目標が相互にプラスに働かなければならないのです。

2年前、豪州鉱物資源評議会はネットゼロを誓約しました。それよりもかなり前から、鉱物業界の多くの企業がネットゼロを約束してきました。

労働政権発足直後から、オーストラリア政府は、こうしたネットゼロ目標の実現を可能にする枠組みの構築に向けて、努力してきました。

それが、セーフガードメカニズムの趣旨です。排出量削減のために新たな技術の活用を動機づけ、企業のみなさまが未来の計画を策定できるように、確実性と安定性をもたらします。

長期的な時間軸で取り組まれ、10年から20年といった期間のプロジェクトに投資されていることでしょうから、政府の政策もこうした取り組みを阻害するのではなく、可能にするものであるべきです。

これは、我が政権のエネルギー施策と同じアプローチです。エネルギー面では例えば、先週、西オーストラリア州でロジャー・クック同州首相とともに、200億ドルの国家送電網再整備計画の次段階について発表を行いました。

最大30億ドルが、西オーストラリア州の送電網の改善のために、支出されることになります。

パースや南西部だけでなく、オンズローから、ポートヘッドランド、カラサ、ニューマンまで、さまざまな地域で大きなプロジェクトが始まり、新たな雇用とインフラが創出されることになるでしょう。

また、再生可能エネルギー由来の電力を安定的に、手頃な価格で利用して、操業できるようになります。

そして、それだけではありません。

事実、鉱物産業が排出量削減において果たせる最大の貢献は、オーストラリア国内に限定されないのです。

時折、「オーストラリアが世界の排出量に占める割合はたったの1%程度。気候変動に対する我々の寄与分は小さすぎて、世界の方向性に影響を与えることはない」という声を聞くことがあります。

ロス・ガーノー教授が明確に指摘しているように、オーストラリアが再生可能エネルギー大国になれば、世界の排出量を最大7%、追加で削減できる可能性があります。

それほどのチャンスがオーストラリアにはあるのです。

自国の気候変動目標を達成するだけでなく、他の国々の目標達成も支援できるのです。

ネットゼロの追及が、今後20年間の世界経済を大きく牽引する力となるでしょう。

リチウム、コバルト、希少鉱物、重要鉱物といった資源が、クリーンエネルギー経済を構築する柱となります。

これらは、世界中の蓄電池、電気自動車、風力タービン、太陽光パネルにとって、不可欠な資源です。

そして、こうした資源のどれもがオーストラリア国内に存在します。

過去に例のない世界的な需要、そして、オーストラリアの豊富な供給量という、すばらしい好条件が重なっています。

オーストラリアがこのチャンスを得られるのは、一度きりです。

ですから、我が政府は、今この瞬間の機会を活用して、何十年もの繁栄を築けるように、鉱物業界のみなさまと力を合わせたいと決意しています。

これまで、技術と需要の急速な変化を受けて、重要鉱物リストを改定できるように、キング大臣がみなさまと相談の機会を設けてきたと理解しております。

オーストラリア大陸の80%以上が現在でも「探査不足」だと考えられており、こうした場所でオーストラリア地質調査所が新たな鉱脈を発見できるように我々は支援しています。

また、国家再建基金を設立し、オーストラリアがもつ資源に付加価値をつける投資を行えるように、独立した理事会を任命しました。

オーストラリア輸出金融公社(EFA)の重要鉱物ファシリティという重要な取り組みを土台にして、ここ豪州国内で安定したサプライチェーンを構築しています。

国際的なバリューチェーンの中でオーストラリアがさらに上流へと移行できるように、また、貿易関係を拡大できるように、取り組んでいます。

貿易品目と貿易相手国の両面で、多角化を図っています。

インドとは、重要鉱物とグリーン水素の2つについて、新たなパートナーシップを締結しました。

欧州連合とは、新しい重要鉱物パートナーシップを結ぶために、議論を始めています。

日本とは、クリーンエネルギー分野における新たな提携を構築しつつあります。

アメリカ合衆国とは、この5月に、バイデン大統領と私の間で、「気候・重要鉱物・クリーンエネルギー転換の豪米コンパクト」に署名しました。

ですから、オーストラリアのプロジェクトは、重要鉱物とクリーンエネルギーの分野で投資される、何十〜何千億米ドルもの資金の恩恵を受けられるのです。

そしてもちろん、グリーン水素など、新たな地平線が開けてきています。グリーン水素は、2030年・2040年のオーストラリアが域内においてのクリーンエネルギー輸出国としてだけでなく、エネルギー集約的な財の輸出国としても、地位を築く上でカギとなります。

グリーン鉄鋼、グリーンアルミニウム、グリーンアンモニアといったテクノロジーを安全かつ効率的に活用するための世界的な競争が起っています。

我が政府の20億ドル規模の水素ヘッドスタートプログラムも、オーストラリアの技術開発者が競争に参加し、勝利できるようにすることを目的としています。

未来によって自分たちの運命が決まるのを単に待つのではなく、自分たちで未来を形作るのです。

そのために、我が政権は努力しています。

オーストラリアの労働者と企業が、現在世界で進行している経済の一大変化のあり方を決定できる、そして、この変化から利益を得られるという、信念があります。

生産性、賃金、生活水準を同時に改善でき、オーストラリア国民全員がその恩恵を分かち合える経済を構築するのです。

このビジョンを実現するためには、鉱物業界の産業、技術革新、技能と技術への継続的な投資のすべてが、決定的に重要です。

鉱物産業界の役割は、今後のオーストラリアの繁栄、安全保障、持続可能性にとって不可欠です。

さらに優れたオーストラリアの未来を築くために、今後も手を携えて、取り組んでいきましょう。